「Panasonic Beauty SALON」に手ごたえアリ 体験者の意見等、情報をフィードバック
美容家電市場と売り場の現状
家電量販店の店頭において、美容家電は相変わらず好調な売れ行きだという。
パナソニックはグローバル規模での取り扱い製品を、①「収益改善事業」、②「安定成長事業」、③「高成長事業」の3つの事業区分に区分けしている。
①にはテレビやデジカメ等のAVC製品、②には冷蔵庫や洗濯機等の生活家電で、同社が重点投資する③にはエアコン等の製品に加え、美容家電も含まれている。
家電は買い替えが中心で恒常的な成長が難しい。しかし、美容家電は製品ラインナップ、ユーザーの認知ともに発展途上の市場。つまり、今後の伸長が大いに期待できるのだ。
80年もの長きにわたって美容製品を開発してきた同社は、創業100周年を迎える2018年の国内での美容家電の売り上げを、10年前の2008年と比較して、約1.5倍に拡大すると見込んでいる。
このような成長過程の美容家電市場において、店頭に誘導する役目も果たすメーカーのプロモーション戦略はどうだろうか。
パナソニックは、テレビCMや一般誌、WEB、トレインチャンネル等、様々な媒体を駆使した広告プロモーションを行っている。
また、同社は購入や来店の前にネットで口コミや製品情報について調べるお客が7~8割にも上ることも踏まえ、ネットでの情報提供にも積極的に取り組んでいる。
パナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 スモールアプライアンス商品部 ビューティ・ヘルスケア商品課 ビューティ商品担当課長の久保清英氏によると、「従来ですと、日本最大級のコスメ・美容の総合サイト「@cosme(アットコスメ)」等の美容情報サイトで口コミを調べてくるお客様が多くいらっしゃいました。いまはそれに加えて、Twitterやインスタグラム等のSNSで口コミを調べる人も多いです」。
しかし、理美容・健康家電は、ユーザーの肌や体に直接触れる機器のために使用感や効果の点で個人差が大きく、また、口コミの真偽を判断することも難しい。そこで各メーカーは公式情報として、広告記事ではないユーザーの“生の声”を届けることに注力している。メーカー発信のため、薬事法や景表法にもしっかりと配慮し、使用効果に対する過大な評価や誇張はない。
さらに、広告の世界観(ビジュアルやデザイン)を店頭展示でも統一し、興味を持って店頭に訪れたお客を売り場に誘導する取り組みを行っている。
「Panasonic Beauty SALON」開設の狙いと反響
美容家電を高成長事業と位置づけるパナソニックは新たな取り組みを開始している。去る9月15日に東京・銀座にオープンした、美容家電の体験型サロン「Panasonic Beauty SALON 銀座」だ。
久保氏によると、4フロアすべてを美容家電に特化した同サロン開設の狙いは、主に下記の二つ。
・女性の美の悩みに寄り添った美容家電の提案
・新しい美の情報発信地としての拠点
「女性のライフスタイルが多様化するとともに、美への悩みも多様化しています。さらに、その悩みに合わせて開発をした美容家電のラインナップも多岐に渡っています。当サロンでは、1~3階部で個々のお客様の悩みに合わせた美容家電を体験でき、美容のプロのスタッフがご提案をしています。また、4階には多目的スペースを設け、芸能人やインフルエンサーの方々とのイベント等を通して、新たな美の情報発信をしていきます(久保氏)」。
4フロアで展開する同サロンでは、各フロアに専門スタッフを配置。「スタッフは、実際に美容の現場で働いていたプロの美容部員。美容に関する深い知識と経験に美容家電についての十分な知識がプラスされた、美容・美容家電のプロです」と芝野さんは、同サロンのスタッフが確かな知識やスキルを持ったプロであることを説明する。
1階は、最新美容家電のクイック体験と、スノービューティミラーという肌分析機を使った肌診断・カウンセリング(10分)が受けられる。ファサードはガラス張りで店内の見通しもよく、気軽に立ち寄れる場だ。
2階はヘアケア家電とフェイスケア家電を試せるカウンターが各4席あり、30分程度の体験が可能。専門スタッフから機器の説明や使い方の説明も受けられる。
洗面台、スキンケア、メイクアップ用品も完備しており、人前で試しにくかったり、メイクしたままだと試せない美容家電をじっくり体験できるようになっている。
3階は完全予約制フロア。カウンセリングをして販売することを前提としている美容家電「Panasonic Beauty PREMIUMシリーズ」を使ったプレミアムエステ(4コース、各コース約60分)の無料体験が受けられる。各席はカーテンで仕切られているので、個室空間でカウンセリングとレクチャーを受けながらぜいたくな時間を過ごすことができる。
4階は先述の通り、美の情報を発信するイベント等を開催する多目的スペースだ。
取材時は同サロンがオープンしてから約1カ月半が経過したところ。来訪者からの反響はどうだったのだろうか。
・来訪者数は1日平均200人弱。200~300人を目標としており、オープンしたばかりとしては想定以上(久保氏)。
・来訪者層は30~40代の日本人女性で想定どおり。仕事帰りや昼休憩の“ちょこっと立ち寄り”ではなく、休日等の時間的余裕がある中での来訪者が多いという。
・人気のフロアは2階の体験スペース。来訪者の実に7割程度が2階に上がり、体験をしているとのこと。完全予約制の3階も、常時2週間先の予約まで埋まっているほどの盛況ぶりという。
・体験希望者が多い美容家電はRF美容器、イオンエフェクター、スチーマー。
これらの人気については同社も想定していたようだが、意外な反響として、「毛穴洗浄 角栓クリア」の体験希望者が多かったという。同サロンのオープン時は残暑が厳しく、時季的に毛穴洗浄に関心を持つ希望者が多かったという要因とともに、同サロン内には洗面所が設置されているので、毛穴洗浄 角栓クリアのように水を使う製品の体験に適しているという要因もあるようだ。
同サロンでは、専門スタッフ(メーカー)と来訪者(ユーザー)が直接対話をするため、そこで得た情報は、メーカーの製品づくりや、販売施策へと直結する。同社は今後、収集した情報をまとめ、家電量販店での美容家電の接客に活かせる情報としてフィードバックするという。
家電量販店頭における美容家電訴求のヒント
家電量販店頭には、各メーカーの美容家電が数多く展示されている。来店前に製品情報等を調べ、目的の商品を決めているお客であっても、実際に来店すると展示されている他メーカーの製品のことも知りたくなる。
そのため各法人とも、設置が可能な店舗には、体験スペースを積極的に設けるなどの取り組みを強化している
今後さらに注力することが肝要な美容家電。店頭で注力すべきことは何だろうか。
「「Panasonic Beauty SALON」でスタッフが対応している中では、使い方の説明が大変ご好評を頂いております」。久保氏は、これがサロンオープン1か月半で感じた大きな発見と強調する。つまり、正しい使い方や効果のある使い方を知らないお客が多いということである。このことから店頭では、カタログやネット等ではいまひとつピンとこない使い方の詳しい説明に対して、改めて注力することが肝要だ。
美容家電コーナーには、美に関心の高いお客が訪れる。「当サロンのスタッフには、薬事法等の知識徹底はもちろんのこと、身だしなみにも常に気を遣うように教育をしています。社会人として当たり前のことですが、改めて見直すようにしています」と芝野さんは話すが、これはお客と向き合う量販店の販売員にもいえることだ。
店頭での接客について、一例を図にまとめた。既知の情報であったとしても、今一度おさらいしてみてはいかがだろうか。
来店客にいきなり肌の悩みを聞くのはどうかと躊躇するという販売員もいるが、悩みがあって来店しているお客が多いので、臆せず率直に聞くことも試したい。もしくは、同サロンで活用している「スキンケア カウンセリングシート」のようなフォーマットを用意すると、悩みの特定とオススメ商品の選定がスムーズに進む。
ビックカメラ 名古屋JRゲートタワー店では、下のような、美容家電と美容本、化粧水等のケア化粧品を群展示する演出を行っている。メンテナンスは大変だが、今後さらなる伸長が期待される美容家電だけに、今一度、展示方法の見直しをしてみてはいかがだろうか。