隣駅の大型ショッピングセンターへ移転
神奈川県横浜市のエディオン モザイクモール港北店が、このほど移転オープンした。旧店舗の港北センター南店は、横浜市営地下鉄のセンター南駅から徒歩数分にあるコーナン港北センター南モールのインショップ。新店舗は、センター南の隣のセンター北駅に隣接したモザイクモール港北のインショップとして出店し、新旧店舗ともショッピングセンター(以下、SC)内のインショップという形式は同じだ。
売り場面積は約595坪と、旧店舗の4割程度と縮小。売り場面積だけで新旧店舗を比較すると、移転後は減床という形になっているが、立地環境という観点で捉えると、異なる様相が見えてくる。
旧店舗はホームセンターのコーナンを核とした3フロアのSCで、スポーツ用品店や100円均一ショップ、子供用品店などがテナントして入っているが、SCとしての規模は小ぶりだ。
一方、新店舗が入るモザイクモール港北は阪急商業開発が2000年にオープンしたSCで、地下1階地上6階建。地下には都筑阪急やスーパーのそうてつローゼンなど、食料品を中心とした毎日の買い物に利用できるショップと地上階以上はファッションやライフスタイル、ベビー&キッズなど多種多様なショップがテナントとして入店。さらに5階には歯科や小児科、整形外科などのメディカルモールも併設。屋上には観覧車が設けられ、都筑区の観覧スポットともなっている。
また、旧店舗があったセンター南駅の近辺では現在、旧店舗があった北側よりも南側に様々な商業施設がオープンし、人の流れは南側に集中している。これに対して新店舗が入るモザイクモール港北は、センター北駅の斜め前に位置し、百数十のテナントが入っていることもあり、非常に集客力があるSCだ。つまり、新旧店舗の出店SC自体の規模や集客力が異なるため、売り場面積が旧店舗よりも小さくなっても集客の立地環境としては改善されることが期待できるのだ。
移転による一番の期待は集客力の向上
同店の佐藤雄一店長は旧店舗で4年間店長として勤務していたため、商圏は熟知している。佐藤店長によると、移転した新店舗での期待は、やはり「集客力」という。
「以前の店舗は駅から最寄りの出口に行くまでに長い階段やエスカレーターを使って下り、最寄り口から出ても店舗が見通せないような立地でした。実際に店舗が分かりにくいとお客様から言われたこともあります。でも、新店は駅のすぐ前で、どこにあるかが一目瞭然。しかも旧店舗の駐車場は約700台でしたが、新店の駐車台数は1,100台で、電車を利用されるお客様にも車で来店されるお客様にとっても利便性は確実によくなりました」と佐藤店長は話す。
売り場面積が縮小すると、当然、展示ボリュームも圧縮される。佐藤店長によると、おもちゃは季節的な販売要素があるため、取り扱いはやめたとのことだが、その他のカテゴリーについては特に大きく減らしたものはないという。
駅近で消耗品の販売活性化にも期待
新店舗で期待するカテゴリーは「調理家電」。SC内にスーパーや複数のファッション・アパレルのテナントが入店していることから、主婦やファミリー層が多く、「高単価の商品が売れています」(佐藤店長)。また、以前の店舗では電池や電球、インクなどの消耗品が弱かったが、「駅に近いということもあって、以前よりも消耗品は伸長するのではないかと考えています」と話す。
また、エディオンが積極的に展開しているリフォームについては旧店舗でも好調だったという。同店が立地する横浜市都筑区は港北ニュータンと称され、1980年台から開発がされてきたエリアである。特に地価が現在でも上昇し続けている都内から転出してきた住民が多く、いわゆる中古マンションを購入してリフォームをする需要が多いエリアでもある。このようなエリア特性もあり、佐藤店長は旧店舗以上にリフォームには期待をしていると語る。
エントランスでは季節に合わせた集合展示
同店はモザイクモール港北の3階で、同フロアの中では最も広い売り場面積のテナントだ。出入り口は2カ所と上下階へ通じるエレベーターが売り場の中央にある。店舗のすぐ横には駐車場への通路があり、出入りについては同フロアから、上下階から、駐車場から、と複数の動線で、お客にとっては入店しやすい店舗といえるだろう。
出入り口の一つでは、季節に合った商品を展示するスペース配置。今は夏に向けてかき氷機やスタイリッシュなコークシクルのタンブラー、ソーダ水生成器などを集合展示し、季節感を演出している。
エディオンオリジナル商品を差別化機能で訴求
売り場の特徴として目立つのは、オリジナル商品のアピールとエンドでの提案だ。オリジナル商品についてはクオルの名称でPB展開をしており、各売り場でクオルのプロパー商品に対する差別化ポイントをしっかりとアピールしている。
エンドはお客への商品訴求の場であると同時に、そのコーナーへ誘導するきっかけの場でもある。最近では新製品や話題の製品をピックアップして展示する店舗が多く、単独商品の見せ場となっている店舗も少なくない。エディオンは、従来からエンドだけにとどまらず、売り場の展示演出に関しては高い評価を得ていた。
展示演出の工夫で発見のある売り場づくり
見やすい、探しやすいは通常の展示陳列においての大原則だが、エディオンは特にお客の目に止まりやすいアイキャッチや、いわゆるコト軸提案の群展示、集合展示を売り場に導入し、発見のある売り場づくりを実践。モザイクモール港北店の売り場でも様々な提案が見られる。
商品の各コーナーでもついで買いを促す提案や独自のグルーピング、用途提案などの展示演出で販売促進に注力。これらの取り組みで目的の商品を購入しに来店したお客に対して気づきを与え、プラスワンの購入やランクアップ、あるいは次回購入候補の発見などが期待できる。
長く付き合っていける関係性の構築に注力
同店のオープンには約100人が並び、オープン記念品のエアコンはすぐに完売したという。また、テレビやパソコンも販売は好調で、移転オープンのスタートとしては、上々の出だしとなったようだ。
佐藤店長は「商圏内にはファミリー層が多いので、長くお付き合いできる関係を築いていきたいと考えています。各売り場でなるべく実演や体感などができるようにすることで、見て、触って、体感して、納得して購入していただけるように努めていきます」と抱負を述べた。
大型SCへの移転で集客力は向上するものと思われる。しかし、商圏内はヤマダ電機、ノジマ、コジマ✕ビックカメラなどの各店が出店している激戦区。この環境自体は旧店舗と同じだが、新店舗で体感や展示演出に注力し、他店との差別化に取り組む。移転でどのような効果が発揮されるか、注目していきたい。
■関連リンク
エディオン
モザイクモール港北店