2017年度の家電量販店の販売実績でキャニスターの台数構成比は44%
スティックタイプの伸長が著しいクリーナー市場。GfKジャパンによると、家電量販店における2017年度のクリーナーの販売台数に占めるスティックタイプの構成比は39%にも達している。従来のメインタイプであったキャニスターの構成比は44%。その差はわずか5%で、2018年度は構成比の逆転も考えられる状況にある。
スティックタイプが伸長している理由としては、取り回しの容易さや軽量化という使い勝手の良さに加えて、従来は欠点とされていたバッテリーの改良による作動時間が長くなったことにある。これまではちょっとした掃除の際のサブ機として使用されていたスティックタイプが、今やメインのクリーナーとして使われるようになっているのだ。キャニスタータイプにとっては、厳しい市場環境にある。
このような状況下で、日立アプライアンスはキャニスタータイプのサイクロンクリーナー「パワーブーストサイクロン」CV-SF900を7月21日から発売すると発表。新製品は2017年モデルのCV-SE900を改良し、さらに使いやすくした後継モデルだ。
軽量化とコンパクト化で肩や腕への負担を軽減
同社ではキャニスタータイプを購入したお客にアンケートを実施。購入時の重視点として上位に挙げられたのが、「吸引力の強さ」「本体の重さ(軽さ)」「お手入れのしやすさ」「ヘッドの動かしやすさ」などであった。そこで同社は、これらの重視ポイントに合致した機能や操作性を新製品に搭載した。
CV-SF900の主な特長は3つ。①ホースとヘッドの軽量化とパイプの細径化で、腕や肩への負担を軽減、②吸込仕事率410Wの強い吸引力と業界最小運転音、③独自のヘッド構造でしっかりとゴミを吸引し、壁ぎわのゴミも軽い操作で吸い取る、というものだ。
CV-SF900はホースの外径が約35mm。2017年モデルのSE900と比べると約6mm細くなり、これを「ラクかるホース」として訴求する。ホース自体の重さは約650gで、従来よりも約80g軽くなっている。また、ホースの外側は軟質樹脂と潤滑剤配合の硬質樹脂との組み合わせで、しなやかな感触とともに家具や衣類への引っかかりも軽減する。
さらにヘッド部の奥行きも従来の90mmから75mmに小さくして、約35gの軽量化を実現。ヘッドを接続するパイプ部も先端の幅を従来の約46mmから7mm細くした約39mmにしたことで、軽量化とともに家具のすき間などの掃除がしやすくなっている。
小物は吸わず、ゴミだけを吸う「ほうきブラシ」を付属
CV-SF900では、付属ツールとして新たに「ほうきブラシ」を採用した。これはブラシの先端に複数のストロー状の小さい吸込口を付けたもの。ブラシの吸込口の中央部にストロー状の吸込み口が付いているので、例えば引き出しの中のクリップや画鋲などは吸わずにホコリやゴミだけを吸うことができる。
吸引力については、「小型・軽量ハイパワーモーター」と同社独自の「パワーブーストサイクロン」構造により、吸込仕事率410Wの吸引力を実現。ゴミと空気を遠心分離するため、吸引力が99%持続し、運転音は54dBで業界最小運転音となっている。2017年モデルのSE900と比べて吸込仕事率は30Wダウンしているが、これは前述のとおり、SF900がパイプを細径化したことによるものと同社では説明する。他社のサイクロンキャニスターの吸込仕事率が200W程度なので、単純比較でも吸込仕事率は他社の倍の数値だ。
シングルフラップからダブルフラップへ進化した「パワフルスマートヘッド」
2017年モデルのSE900で採用された自走式の「パワフルスマートヘッド」は、SF900でさらに進化。前モデルはヘッドの前側にフラップを配置し、ヘッドの押し引きでフラップが開閉してヘッド内の圧力を調整していた。これにより、軽い力で押し引きができて、しかもゴミをしっかりと吸引するというものだ。
SF900では、このフラップを前後に配置した「ダブルシンクロフラップ」を新たに採用。ヘッドを押した時は前側のフラップが開いて後ろ側が閉じる。これによって床面との気密性が向上。ヘッドを引いた時は後ろ側のフラップが開いて前側が閉じることで、ヘッド後方の微細なゴミをしっかり吸引する仕組みだ。
壁にヘッド部を付けた時、ヘッド部の上から底面に向かって空気が流れる構造により、壁際のゴミが吸い取りやすい「きわぴた構造」、暗いところのゴミが見える「LEDライト」、ゴミ捨てボタンでふたが開いて簡単にごみ捨てができる「ごみダッシュ」など、前機種で搭載されていた機能も継続採用した。
SF900の発売と同時に、SE300の後継モデルであるSF300と紙パック式「かるパック」シリーズのCV-PF300も同時発売される。
ポイントを抑えた商品説明と体感でお客の納得を引き出そう
クリーナーは、売り場の床をカーペット貼りにしてお客に実機の体感機会を提供するという提案手法がスタンダードになっている。お客が自由に触って、自分の感覚で実機を試してみることは重要だ。しかし、使い勝手の改善や構造の改良などは、お客に伝えなければ分からない。製品の特長や改良点をしっかりと伝えたうえで、体感をしてもらうような取り組みが肝要。説明+体感の提案で、納得から購入につながるような流れに持っていこう。
前述で記述したように、クリーナー市場はスティックタイプ、特にコードレススティックが急成長している。しかし、クリーナー本来の目的であるゴミの吸引ということでは、キャニスタータイプの優位性は揺るがないといえるだろう。日立アプライアンスの新製品は、その吸引力という点で非常に高い吸込仕事率を誇っており、さらにスティックタイプよりも劣るとされている重さと、重さからくる取り回しを改良したモデルだ。
スティックタイプは確かに軽く、取り回しが容易である。だが、ベッドの下や家具のすき間などを掃除する際、床面と接続パイプの角度が鋭角になればなるほど、コントロール部が手元近くにあるため、荷重が手首にかかる。キャニスタータイプであれば、このようなことはない。ホースとパイプ、そしてヘッド部の軽量化や細径化を実現した日立アプライアンスの新製品。その特長をしっかりとお客に伝えて、実際の操作性を体感してもらおう。