炊飯ジャー市場全体は微減傾向
炊飯器市場全体は2015年から微減傾向にある。その中で象印は「メーカー別数量シェア27%を占めている」(象印資料より)。「業界が縮小する中、トップシェアメーカーとしてさらに業界を盛り上げる商品を世に送り出す」として、今回の炎舞炊きの発売に至ったという。
新製品を開発するにあたって、同社では「かまどの炎」に注目した。「かまどの炎は風などの影響を受けて揺らいでおり、一定ではない。ゆらぎに伴って、強い火力が動いて加熱するので、釜は部分的に集中して加熱される。これにより、釜の内部で温度差が生まれて複雑な対流が起こる」(同社の第一事業部長の山根博志氏)。
独立制御のコイルを3つ搭載
炎の再現のため、同社が採用したのが「ローテーションIH構造」だ。これは、独立制御できるIHコイルを3つ搭載する構造で、炎のように部分的な集中加熱が可能となり、かまどで炊いた時と同様に複雑な対流を引き起こすというもの。内釜は、羽釜の要素を取り入れて、釜のふちに厚みを持たせた。これにより釜側面の熱を蓄えて内釜の外へ放熱せずに効率よく加熱する。
独立した3つのIHコイルの採用は、火力のアップにもつながった。「かまどの炎を電力に換算すると約2750W。これを現代の炊飯器と比較するために単位面積あたりの火力に換算すると約6W/cm2になる。この火力は日本の電力事情では実現が不可能な数字だ。しかし3つのコイルを独立で制御することで、集中的に加熱できるので、単位当たり4倍以上の大火力で加熱することが可能となった」(山根氏)。
象印の代名詞 「南部鉄器」は収束へ
今回の炎舞炊きの発売に伴って同社では、極め羽釜の生産は収束させる考えだ。展示演出やTVCMでは「炎」を印象づける内容となっている。
「南部鉄器」の内釜は、いわば象印の代名詞とも言える特徴だった。鉄瓶などにも使われる素材なので、家電に詳しくないお客にも印象づけられ、さらに「伝統工芸品を使っているから10万円以上する価格」という”高単価”の理由をお客に説得しやすかった。「炎舞炊き」は、この高単価の理由をどうお客に納得させるかが鍵になりそうだ。
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