三菱の冷蔵庫は進化した「瞬冷凍」を訴求 CMでは「時短」をキーワードに展開


三菱電機は1月15日、真ん中野菜室タイプの冷蔵庫の新製品「置けるスマート大容量」のMXシリーズ3機種とMBシリーズ1機種の合計4機種を発表した。発売は2月21日からだ。

冷蔵庫の市場環境と見通し

三菱電機は冷蔵庫市場について、2017年度は約389万台で、2018年度は約400万台を見込むとしている。2019年度は消費税の増税実施により、買い換えが促されると想定し、408万台と予想している。

三菱電機静岡製作所・冷蔵庫営業統括部長の高山博夫氏は、10月に消費税が増税となった場合の反動減について「2年ほど影響があるのではないかとみています」と述べた。

「真ん中野菜室」の買い換え層を意識

三菱電機では野菜室真ん中タイプの冷蔵庫2タイプを市場に投入したところ、流通関係者などから同タイプの拡充についての要望が多かったという。その背景としては冷蔵庫の買い換えサイクルが関係しているようだ。

「現在、買い換え時期がきているお客様は10年から15年前に購入された方々です。その頃のトレンドは、野菜室真ん中タイプが主流でした。買い換えに際しては、これまでと同じ使い勝手ができるものを好まれる方が多いという傾向があります」(高山氏)。

大型冷蔵庫では真ん中冷凍室というレイアウトが主流だが、同社は「真ん中野菜室」「真ん中冷凍室」の両方のタイプを揃え、売り場で存在感を出し、お客のニーズに応える考えだ。

新製品の訴求ポイントと販促

冷蔵庫は、設置できるスペースの中で容量がより大きい製品が好まれる傾向にある。その設置スペースも幅と奥行のどちらかが広く、どちらかが狭いというケースがありうる。そこで同社では、450L台で新たに「真ん中野菜室」タイプを追加するとともに、奥行薄型(65cm)の6ドアタイプと幅スリム(60cm)のドアタイプの2機種を揃え、購入検討者の設置スペースに合わせて製品の選択の幅を広げている。これにより、店頭ではお客の設置スペースに合わせた提案がしやすくなったというわけだ。

真ん中野菜タイプに、2機種を新たに追加

「新製品のCMでは”時短”をキーワードに、切れちゃう瞬冷凍A.I.の機能をアピールしていく」と高山営業統括部長が話すように、同社は販促に関して「時短」「瞬冷凍」を中心に展開していく考えである。この「時短」の背景となっているのが、共働き世帯の増加だ。総務省統計局の「労働力調査結果」によると、2017年の専業主婦世帯は35%で、共働き世帯は65%で、この差は年々拡大基調にある。

共働き世帯が増加しているということは当然、家事にかける時間の短縮、つまり「時短」に対するニーズが増えていると考えられる。その家事の中でも調理・料理にかかる時間短縮ニーズの高さは、様々な調査からも裏付けられており、「瞬冷凍」の活用がソリューションにもつながるというわけである。

これまでも同社は「瞬冷凍を使えば解凍いらずで、すぐに使える」と訴求をしてきたが、従来品では「瞬冷凍」のボタン(タッチ表示)を操作して運転をスタートさせなければいけなかった。

しかし、新製品ではAIが生活パターンを予測して自動制御する「切れちゃう瞬冷凍A.I.」機能を搭載したため、操作が不要となった。冷蔵庫に任せればよいので、ユーザーの手間が省ける。

さらに、新製品では野菜も「瞬冷凍」で保存できるようになった。これにより「肉も魚も野菜もお惣菜もおいしく冷凍ができる。しかも使いやすい状態で保存ができる」との訴求が可能となった。

通常、野菜を冷凍すると、ひとかたまりになってカチカチに固まるため、使う時にかたまりすべてをほぐさないといけなかった。しかし、「切れちゃう瞬冷凍A.I.」機能を使えば、必要な分だけ簡単にほぐすことができるため、調理時間の短縮にも貢献する。

今後の課題は部屋の使いこなし提案

三菱の冷蔵庫は、今回の「切れちゃう瞬冷凍A.I.」以外に、氷点下で肉や魚を凍らせる「氷点下ストッカーD」という鮮度保持機能を搭載している。さらに冷凍室もあるため、お客からすれば、これらの部屋をどう使いこなせればよいのか、混乱しやすいという懸念がある。

都内量販店で現行機種について接客を受けた中で、顧客視点で分かりやすかったのが、次の説明だ。

「それぞれ保存期間が違います。買ってきた肉や魚はひとまず”氷点下ストッカーD”、買ってきた週のうちに使わないようなら”瞬冷凍室”へ移動するのがオススメ。冷凍食品など1カ月くらい保存するような時は大きな冷凍室に入れるといいですよ。買ってきたら“氷点下ストッカーD”。これだけ覚えておいてください」(ターミナル駅前店舗)

「買ってきたとき」「週末」「長期保存」というように、時系列で説明されたので、使用シーンがイメージしやすい。この時受けた接客では、瞬冷凍の仕組みなどの技術的な説明は全て省いて、とにかく使い方に注力した説明だったので印象深く、確かに覚えやすかった。

接客では「切れちゃう瞬冷凍A.I.」「氷点下ストッカーD」の機能を整理し、シーンや食材など、お客の生活スタイルに合わせて具体的に提案ができるように備えておこう。

肉、魚、つくりおき惣菜に加え、野菜も保存できるようになった「瞬冷凍室」
冷蔵室内にある「氷点下ストッカーD」は、買ってきた肉と魚を保存するのに便利。1週間以内に使い切るならこちらの使用を勧めたい
メインの冷蔵室は長期保存に最適。冷凍食品など大きなサイズの保存にもよい

三菱電機静岡製作所・大矢恵司冷蔵庫製造部長も「現在当社の冷蔵庫をお使いのお客様からも、瞬冷凍をどう使えばいいのか迷うという意見をいただくことがあります。そこが課題でもあるので、新製品では改めて、瞬冷凍にフォーカスし、そこらへんの使いこなしについてもお伝えしていきたいと考えています」と述べる。

今、家電販売に求められているのは、お客1人1人の課題に対するソリューション提案である。搭載機能の詳細な説明は確かに重要だ。しかし、そこから一歩進んで、その機能がいかにお客の生活を快適にするかという提案が寄り重要といえるのではないだろうか。

その意味において、同社のラインアップ拡充や「瞬冷凍」での時短ニーズへの対応は、ソリューション提案にうってつけの要素といえよう。冷蔵庫という日常使用の製品だからこそ、お客の生活改善が可能となる。接客では基本性能を押さえた商品説明とともに、お客の課題解決となる使い方の提案にも注力しよう。

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