シャープがAQUOS4Kの新ラインアップを発表 フラグ、ハイエンドともダブル4Kチューナーを搭載


パナソニックやソニー、東芝映像ソリューションに代表されるテレビメーカーだけでなく、ハイセンスやFUNAIなどのいわば新興勢力も有機ELテレビを市場投入。流通サイドでも有機ELテレビを最上位に位置づけて推奨している。このような中で、液晶テレビのさらなる進化に取り組むシャープが新ラインアップを発表。全モデルダブル4Kチューナーを搭載した。

ネット動画視聴に対するニーズは増加傾向

2018年12月1日から新4K衛星放送がスタートした。BS4K放送では有料放送も合わせて、現在は8チャンネルの視聴が可能。有料放送の110度CS8チャンネルと合わせて16チャンネルの番組が楽しめる。さらにBS4K放送では9月1日にBS日テレ、12月1日にWOWOWが開局予定で、本年12月からの新4K衛星放送は18チャンネル体制となる。

この流れに合わせて、テレビも4K8Kチューナー搭載モデルが増加しており、2018年度は4K8Kテレビ全体に占めるチューナー搭載機の割合は約20%だったが、シャープでは2019年度に約80%、2020年度には約90%に拡大すると予想している。

新衛星放送対応チューナー搭載モデルは2018年度の約20%から2019年度は約80%に拡大予想
新衛星放送対応チューナー搭載モデルは2018年度の約20%から2019年度は約80%に拡大予想

また、テレビは単に放送波による番組を視聴するだけでなく、ネット配信サービスの動画視聴という楽しみ方もある。同社が2019年6月下旬に実施したテレビの用途別利用時間の調査では、2017年の非Android TVモデルでアプリのサービスを利用した時間はテレビの利用時間全体の約9.6%。これが現在のAndroid TV対応モデルでは17.5%に増加している。

アプリサービスの利用時間は、約2倍に拡大している
アプリサービスの利用時間は、約2倍に拡大している

同社のスマートTVシステム事業本部 国内TV事業部 商品企画部の鈴木正幸部長補佐は、「今後、5Gや動画配信サービスの普及に伴い、放送だけでなくネット動画の視聴もテレビの大きな利用用途の一つになると考えています」と話す。

新4K8K衛星放送やネット動画に対するニーズは拡大すると話す同社の鈴木正幸部長補佐
新4K8K衛星放送やネット動画に対するニーズは拡大すると話す同社の鈴木正幸部長補佐

新ラインアップは3シリーズ8機種で画面サイズは40V~70V型

4K AQUOSの新ラインアップは、視聴可能チャンネルの増加とネット動画の普及拡大を背景に、Android TVの最新フォーマットを採用したダブル4Kチューナー搭載モデルの3シリーズ8機種。フラグシップのBN1シリーズの画面サイズは、45V、50V、60V、70Vの4タイプ。ハイエンドのBL1シリーズは45V、50V、55Vの3タイプで、40VはBL1のダウンサイズ版ながらBJ1として独立した型番とした。

全モデルとも4Kチューナー×2、地上/BS/CSチューナー×3を搭載。外付けUSB HDDを使えば、4K番組を視聴しながら同時に4Kの別番組と2K番組の録画ができる。もちろん、2K番組を視聴しながら4K番組の録画も可能だ。注意すべき点は、2Kの2チャンネル同時録画はできるが、4Kの2チャンネル同時録画はできないということ。現時点で、これは全メーカーのダブル4Kチューナー搭載テレビに共通しており、今後の機能強化に期待したいところだ。

4Kダブルチューナーと地上/BS/CSのトリプルチューナーで4Kと2Kの裏録も可能

最新のAndorid 9 pieを搭載し、TVerにも対応

Android TVとしては最新のプラットフォームであるAndroid 9 pieを搭載。動画配信サービスのアプリにはNETFLIXやhulu、YouTube、Abema TVなどの他にTVerも新たに追加され、ドラマの見逃しやご当地番組も楽しめるようになった。また、Googleアシスタント対応により、リモコンに内蔵されたマイクを利用して音声で番組検索や操作ができる。さらにgoogleアシスタントに対応した家電の操作も可能だ。

COCORO VIDEOやCOCORO VISION、カレンダーはダイレクトボタンで即アクセスが可能
COCORO VIDEOやCOCORO VISION、カレンダーはダイレクトボタンで即アクセスが可能

同社独自のクラウドサービスであるCOCORO VISIONも進化。よく観る番組や視聴時間帯などの視聴傾向をクラウドに収集し、視聴学習することでおすすめの番組を音声で知らせる機能が、新4K衛星放送の番組にも対応。地デジとBSデジタル、4K放送や動画配信サービスのCOCORO VIDEOの中から、家族の好みに合った番組を薦めてくれる。

COCORO VISIONはAIが視聴履歴を学習して、番組のおススメや情報を声で伝える

8Kの高画質技術を4Kにも応用した新エンジンを採用

高画質映像の再生に重要な役割を果たすのがエンジンだ。新ラインアップでは新たに開発された高画質エンジンの「AQUOS 4K Smart Engine PRO II」を搭載。これにより、①色彩表現力の進化、②明暗表現力の進化、③操作性の進化、を実現した。「当社の8Kテレビの設計思想を継承して、高画質と操作性を進化させました」と鈴木部長補佐は話す。

①色彩表現力の進化では、広色域技術であるリッチカラーテクノロジーの色彩表現力を向上。より鮮やかで、自然な映像を実現した。②明暗表現力の進化は、HLG階調復元回路を搭載。特に表現が難しい、明るい高階調の部分も滑らかで、元の階調がつぶれないように忠実に再現する。これにより、新4K衛星放送で採用されているHLG方式のHDR映像の美しさを最大限、引き出すことができるという。③操作性の進化では、「AQUOS 4K Smart Engine PRO II」に高速CPUを採用。リモコンの電源起動は2018年モデルのAN1シリーズと比較して、約20%高速化した。さらにアプリの起動やチャンネル切り替えなどの反応速度も速くなり、操作性が向上した。

フラグの大画面モデルは新開発パネルで明るさが20%アップ

液晶パネルはBL1シリーズとBJ1が低反射パネルを採用。BN1シリーズの45V型、50V型は低反射「N-Blackパネル」で、60V型と70V型は新たに開発された「新・高透過率4K液晶パネル」を採用。この新開発の液晶パネルでは、液晶を動かすためのドライバーを小さくし、配線の設計を見直すなどしたという。バックライト自体に変更を加えていないが、明るさは前モデルのAN1との比較で約20%向上し、さらに年間消費電力量も7%低減した。

BN1シリーズの70V型と60V型に採用された新・高透過率4K液晶パネルは、明るさの向上と消費電力の低減に貢献
BN1シリーズの70V型と60V型に採用された新・高透過率4K液晶パネルは、明るさの向上と消費電力の低減に貢献

新ラインアップでは機能や性能の向上とともに、使い勝手もさらに改善。以前から採用していた回転式のスイベルスタンドを継続するとともに、従来機種よりもスタンドの奥行きを短くして省スペース化を実現させた。BN1シリーズの70V型は、安定性を重視して採用はしていないが、その他の新ラインアップではすべてに新デザインの省スペース回転スタンドを採用。テレビを視聴する場所に合わせて、画面の角度を30度回転させることができるので、リビングの横にあるキッチンからも適切なポジションで視聴することが可能だ。

画面の首振りメリットは、これだけではない。テレビは画面が大きくなればなるほど、背面の掃除が大変になる。しかし、画面の角度を変えられるので、背面の掃除がやりやすくなり、ケーブルの接続なども簡単にできる。家族がそれぞれ自分専用の外付けHDDを所有していたり、USBメモリーで動画や画像、音楽などを視聴したりする場合も便利だ。安定感を担保しながらスタンドの奥行きも短くしたことで、BN1シリーズの60v型では奥行きが30cmのラックにも置けるようになった。

新しいスタンドは60V型で奥行きは290mmと省スペース設計
新しいスタンドは60V型で奥行きは290mmと省スペース設計

BN1シリーズとBL1シリーズ、BJ1は、同一シリーズで同じ仕様となっているが、細かい部分ではモデルによって違いがある。主な違いは下図を参照してほしいが、BN1の70V型とBJ1はバックライトが直下型で、その他はエッジ型となっている。この仕様について鈴木部長補佐は「70V型は大画面のフラグシップモデルなので、一定以上の輝度を確保することが必要と考え、直下型を採用しました」と解説。40V型については4Kチューナー搭載モデルでの業界最小画面モデルということもあり、小型からのランクアップを狙ったものと推測される。

新ラインアップの発売は、すべて7月27日。オープン価格だが、想定売価はBN1シリーズの70V型が税抜き33万円前後で、60V型が同25万円前後。bl1シリーズの55V型が同19万円前後と、かなりインパクトのある売価設定となっている。「60V型は1年前の4Kチューナー非搭載モデルと同等程度でのスタート」(同)という。親会社の鴻海との連携により、部材等の調達コストダウンが、この売価設定に貢献したようだ。

日常使用で液晶テレビの利点をアピール

多くの家電量販店では大画面や4Kチューナー搭載モデルを推奨し、単価アップのために有機ELテレビに誘導するパターンが多く見られる。しかし、有機ELテレビと液晶テレビの値差は大きい。“少しでも画面が大きい方が良い”“4K放送もネットのコンテンツも観たい”“もちろん画像はキレイな方が良い”“でも、予算は限られている”というのが、お客の共通項目ではないだろうか。シャープの新ラインアップは、これらの消費者ニーズを満足させることができるものだ。

有機ELテレビは自発光で残像感が少なく、暗部の階調もしっかりと出る。その画質は確かに高精細だ。しかし、一般的なリビングで視聴するには、部屋の照度を落とすのがベター。液晶テレビはバックライトで発光しているため、画面自体が明るく、通常の視聴ではリビングの照度を落とさなくてもよい。テレビで視聴するさまざまなコンテンツを考えると、特に映像に対する強いこだわりがなければ、液晶テレビの方が汎用性は高く、リビングで視聴した時に映像は鮮やかと感じるだろう。

Android TVによるアプリの使い勝手や検索、操作においての音声対応、COCORO VISIONやCOCORO CALENDARなどによる利便性も単なる番組視聴以外の新しいテレビの楽しみ方を伝えられるポイントだ。接客の際は、リモコンで実際に画面を表示して説明しよう。

また、スイベル式のスタンドは視聴ポジションに合わせた最適な角度調整もさることながら、今のテレビは接続端子が背面にまとめられているので、端子の抜き差し自体も楽になる。前述でも記述したとおり、テレビの背面部やテレビ台自体の掃除がしやすくなる点も忘れずに実演で確認してもらおう。

電子情報技術産業協会(JEITA)の出荷統計によると、2019年度4~6月の4K対応テレビの出荷台数は545万台。このうち、有機ELテレビは13.8%の75万台。出荷台数の85%以上が液晶テレビだ。高画質と操作性を向上させたシャープの新しい液晶テレビのラインアップを、価格ダウンが進む液晶テレビの単価アップ商材として活用しよう。接客の際には、4TBの大容量HDDを搭載したAQUOS専用USB HDD・4R-C40B1も合わせて提案したい。

■関連リンク
SHARP
AQUOS製品ページ