クラウドファンディングでマーケティング
新ジャンルの商品や本業と異なるジャンルの商品など、市場の反応が読みづらい商品を開発するにあたり、クラウドファンディングをマーケティングに活用する事例が増えている。多くの支援を集めた商品は、商品化したあとで流通との商談も比較的しやすくなる。ただし、それは決して定番入りが約束されるという意味ではない。
そんな中、現在支援を募集中で、既に100万円の目標額を達成し、さらに終了まで30日を残して、400万円以上の支援を集めているハリオの電動コーヒーグラインダーに注目したい。
ハリオは国内有数の耐熱ガラスメーカーであり、コーヒー器具のメーカーとしても知られる。定評のあるドリッパーやデカンタ、ミルに始まり、全自動コーヒーメーカーまで擁する。そのハリオが、今回新製品投入に際してクラウドファンディングを活用したのは、一般流通に出す前にマーケティングとプロモーションを実施したかったからであり、それはここまでのところ成功を収めたと言える。今回、製品を借りて試用できたので簡単なレビューを紹介しつつ、ハリオの取り組みの背景を考えたい。
ハリオによれば、今回の開発の経緯は、2008年に発売した手動式ミル「スリムハンドミル MSG-2」が切っ掛けとなっている。持ち運びに便利で、発売以来約150万個の販売実績があるが、時間がない時や量を多く作る時には適さず、充電式のリチウムイオン充電池を使って、電動で豆を挽けるようにしたいというニーズが根強かったという。
だが、同社ではリチウムイオン充電池を使った製品は、過去に採用実績がなく、技術面やコスト面でなかなか壁が超えられなかった。いつもと違うアプローチで、約5年の時間を掛けて開発した「コーヒーミル・スマートG」を、より多くのユーザーに知ってほしい。そこで目を付けたのがクラウドファンディングだったという訳だ。
結果は予想を上回る手応えとなった。
コーヒーミル・スマートGをレビュー、コンパクトながらパワフル!
コーヒーミル・スマートGの開発に当たっては、「シンプルな操作性」「コーヒー粉の粗さが調節可能」「パワーとコンパクト性の両立」の大きく3点にこだわっている。スリムハンドミル MSG-2のコンセプトが高い携帯性にあることもあって、コーヒーミル・スマートGもキャンプや登山といったアウトドアシーンに携帯できることを重視したのだ。
電動のグラインダーは手動よりも楽に、均一に豆が挽ける。だが、速く挽くと摩擦熱が出て、せっかくのコーヒーの風味を損ねる。そこでセラミックの臼を採用して、適切な速度でバラツキなく挽けるよう改良を重ねた。
挽き方の調整は臼の下部の調節ネジを締めたり緩めたりすることで行う。目盛りなどは特にないため、丁度よい粗さはユーザーが自分で探すことになる。基本的には好みの粗さが調整できたら、そのまま変更しないで使うことになるだろう。
豆を挽くまでの手順はシンプルだ。スリムハンドミル MSG-2にコーヒー豆を入れて、専用ホルダーを装着。その上からコーヒーミル・スマートGをセットして、電源ボタンを押すだけ。構造上、両手を使い、片方の手で上部のコーヒーミル・スマートGを持ちながら電源ボタンを押し、もう片方の手で下部のスリムハンドミル MSG-2を支えるのが安定感があって良い。
アウトドアでの利用シーンを想起させる展示に期待
電動グラインダーは手動よりもキメは整うが、雑味につながる微粉が出やすい傾向がある。その点、本製品は微粉を抑えられる手動の特長を電動で上手く活かせている。スリムハンドミル MSG-2の臼はセラミック製なので水洗いもできて手入れもしやすい。コーヒーミル・スマートGのほうは、USB経由で充電するだけでメンテナンスは特に不要だ。20gを約1分で挽くとして1回の充電で約25回挽ける。
Makuakeでのプロジェクトは8月下旬が締め切りとなる。一般流通は10月下旬頃からとなり、ハリオでは家電量販店でも積極的に展開していきたいと望んでいる。その際は、コーヒーメーカー売り場はもちろん、アウトドアグッズ売り場で展示できればと考えている。確かに大柄なコーヒーメーカーと並べるより、キャンプ用品やステンレスボトル、あるいはアクションカムなどの横に置いて、行楽のお供と称したほうが利用シーンを想像できて人気が出そうだ。
今後、クラウドファンディングを新製品のプロモーションやマーケティングに活用するメーカーは益々増えていくだろう。ハリオの取り組みが、店頭販売でも成功できるか、今後の展開に注目したい。