クラウドファンディングで記録的な支援を集める
Auraは一見すると、スタイリッシュなデザインの折りたたみ可能なLEDデスクスタンドだ。ワンタッチでスキャナーとして使えるので省スペース性に優れる。スキャン性能もこのクラスでは高い実用性を持っており、自動位置補正や湾曲面の平坦化補正はスキャン対象の本を傷めなくて済むメリットがある。
5月30日からクラウドファンディングサイト「Makuake」で、500,000円を目標にプロジェクトをスタートし、7月末に締め切るまでに60,015,960円の支援を集めた。同サイトの支援金ランキングでは9位に入り、特に達成率は12003%にも及び、ベスト100位の中で唯一となる1万%超えの記録を打ち立てた。
Auraは決して安くはない。一般販売予定価格は税込47,520円となっており、LEDデスクスタンドとしても、スキャナーとしてもこれだけの金額を出せばかなり良い製品が買える。それが目標の100倍を超える支援に繋がったのだから、「2つが1つになっていることの強みが生きている」と多くの人に認められたのだと言えよう。
厚みのある本やバインドされた書類は、フラットベッドタイプのスキャナでキレイに読み取ろうとすると、本や書類を分解しなくてはならない。スキャンしたら処分しても良い本ならともかく、稀少本などに余計な傷や折り目など1つとして付けることなく、ちゃんとスキャンするのは意外に大変なのだ。
その点、Auraは開いたページの湾曲を自動で平坦化でき、ページをめくると自動で撮影する機能も備えているので、裁断できない貴重な本や分厚い資料、図書館から借りてきた本、子供の描いた絵や日記なども、テンポよく素早くスキャンできる。
CHAM Japanでは、家庭だけでなく、研究室や図書館などを含む教育機関、医療関係、公的機関、ペーパーレスの進んでいない士業(弁護士、会計士、税理士等)といった法人の需要も見込む。
導入も操作も想像以上に簡単で、きれいにスキャンできる
まずはスキャンした画像の保存先となるパソコンに、専用アプリをインストールし、シリアルナンバーを入力する。
Aura本体を電源とPCにつなぎ、照明部を起こして電源On。付属のマットを敷く。パソコン上でアプリを起動したら、あとは取り込みたい本や書類をセットする。これで準備は完了だ。準備は想像以上に簡単だった。
取り込みはA3サイズまで対応し、イメージセンサーは1,400万画素。最大解像度は4,320×3,240pixel。取り込み速度は2.0秒/1枚または見開き2ページで、300ページの本も約20分でスキャンを完了する。ファイル名は自動命名可能だ。
なお、スキャン精度は文書の取り込みには十分だが、写真や絵を高解像度で取り込むのには向かない。一方、立体的なオブジェがスキャンできるので、カメラやスマートフォンでは撮影の難しい、両手で押さえるアイテムや、右手で持つアイテムの撮影には便利に使える。
スキャン対象はリアルタイムでパソコンの専用アプリの画面に映し出される。スキャンすることでページのたわみが補正される。もちろん、カラー原稿にも対応する。
スキャン画像はアプリ上で、回転や色補正、切り取りなどの調整を施してから、JPEG形式の画像として保存する。JPEG以外にも、PDFやサーチャブルPDF、TIFF形式での保存にも対応するほか、WordやExcelのファイルにOCRで書き出しも可能だ。
また、スマートフォンに専用アプリを導入することで、スマートフォンを照明のリモコンとして利用できる。電源のOn/Offや光量の調整が行える。
売り場にポンと置くだけではない、店舗ならではの体感が求められる
Auraは今後10月を目処に一般販売を予定する。どのような流通になるかは未定だが、CHAM JapanではWeb通販だけでなく、家電量販店を含めた様々なチャネルでの取り扱いを期待している。
従来の家電量販企業の考え方だと、Auraのような製品はニッチであり、家電量販店で取り扱うには在庫リスクが大きいと捉えられてきた。昨今、こうした風潮に変化が出てきている。たとえば、店舗をショールーミング化して自社通販サイトに誘導しようといった考え方だ。
この場合、Auraのような製品はうってつけの商材になる。2in1タイプの新しい製品は似たような製品が他にないため、現物を想像しづらく、気になる消費者はタッチポイントを求める。
Auraはネット上で既に一定の注目を集めた実績があり、しかも購入者が事前に確かめたくなる要素が多い。設定や操作は簡単か、取り込んだ時の画質は十分か、デスクスタンドとしての大きさや照明の明るさはどうかといった点は、人によって好みや重要性が異なるため、実際に自分で見てみないと善し悪しが判断しづらい。
もっともAuraの場合、既存の照明売り場やPC周辺機器売り場にポンと置いただけではなかなか売れないだろう。
都市部の大型店しか難しいかもしれないが、Auraのような購入前体感のニーズが高い製品を集めたコーナーが常設できれば、品揃えに新鮮さを出すと共に、ショールーミング目的での来店客を捕まえることも可能になる。その場で自社サイトでの購入に誘導でき、さらに何か「ついで買い」まで持っていけて、ようやく集客アイテムと認められる。
製品ジャンルを横断したニッチ商材のコーナーは設置が難しい。仕入れからメンテナンスまで、誰がどう担当するのか仕組みから考える必要がある。しかし、今後はそうしたタッチポイントの需要が益々高まっていく。Auraのような新しい商品を自店舗で扱うなら、どこに置いてどう売るか、常に考えていかなければならないはずだ。店頭には常に変化が求められる。Auraに触れてみて改めてそう実感した。
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