グリルの汎用性を益々高めた日立のIHクッキングヒーター


日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立)は、10月1日から3口IHクッキングヒーター「火加減マイスター」のHT-M350T・M150Tなど8シリーズ24機種を発売する。8月1日に発表していたが、9月18日と19日にHT-M350T・M150Tのメディアセミナーを開催したのでその様子を紹介しよう。

まだまだ回復途上のIHクッキングヒーター市場

システムキッチン搭載加熱機器市場におけるIHクッキングヒーターの構成比は、よく知られるように東日本震災の影響で2011年度を境に一気にダウンした。近年じりじりと回復して約40%、台数ベースで80万台弱まで戻したが、まだ2010年度実績まで10万台以上の伸び代を残す。

IHクッキングヒーターの需要は、ゆっくりと回復してきているが、まだ2010年実績に及ばない

日立のユーザー調査によれば、同社のIHクッキングヒーターを購入した顧客の購入の決め手となったのは、3口すべてがIHであることが51.8%、深皿によりラク旨グリルの庫内が汚れないことが35.7%、ラク旨グリル&オーブンでの調理が27.7%となったという。同社では、安全性やお手入れの容易さ、美味しい料理が短時間で作れること、献立の悩みからの解放といった生活の中の課題解決が求められていると分析する。

これらを背景に、火加減マイスターシリーズの新製品ではトッププレートの段差をなくしてお手入れしやすいデザインの採用、従来からのワンタッチ火力ボタンと4色カラー液晶をブラッシュアップして、使用時に火力バーに合わせて光る色と面積が変わる仕様とした。電源をOFFにした時には、ブラックのラインだけがスッキリ見え、キッチンカウンターに映えるインテリアを意識している。

トッププレート幅が75cmの「HT-M350KTWF」。火力の強さによって光る色やバーの面積が変化し、より視覚的になった
メタリックグレーの「HT-M300HTWF」。上面奥までフラットなガラスになって おり、奥まですっと拭きやすくなっている
メタリックグレーの「HT-M300HTWF」。上面奥までフラットなガラスになっており、奥まですっと拭きやすくなっている

また、ラク旨グリルやオーブン調理のメニュー拡充を図った。付属品の波皿を使ったラク旨グリルでは、新たに冷凍のままの魚をそのまま美味しく焼けるようになり、付属品の平皿を使うラク旨オーブンでは肉じゃがなどの無水調理に対応した。グリルというと、通常は魚を焼くところというイメージが強い。食パン等を焼くトースターとして利用する人もいるだろう。日立ではグリルをより汎用性の高い調理器として使うべく提案している。

冷凍のサバの切り身をラク旨グリルでダイレクトに焼き上げたところ。試食してみるとしっかり火が通っており、サバの脂がとてもいい感じの仕上がり
ラク旨オーブンによる肉じゃがの無水調理。庫内では皿が少し手前側に傾く仕様のため、水分の出る玉ねぎを一番上に配置している。最後に全体を混ぜてなじませれば、じゃがいもが煮崩れることもなく美味しく完成

さらに国民生活センターからの要望を受け、グリルドアの調理時の表面温度上昇を抑制して安全性も向上。従来ドアの温度が100℃を超えていた調理でも、50~60℃前後に抑え、64℃以上にはならない安全設計を採用。幼児が不注意で触れて火傷しないよう配慮した。これにより、第13回キッズデザイン賞を受賞している。

スマホと連携するモデルは家電量販店のほうが売りやすい?

フラグシップモデルではスマートフォン連携機能を搭載したコネクテッド家電対応とした。フラグシップとなるのは、HT-M350Tの2機種と、HT-M150Tの2機種だ。HT-M350Tはダブルオールメタル対応で、HT-M150Tは鉄・ステンレス対応。それぞれ、トッププレート幅が75cmと60cmのモデルを用意する。HT-M350Tの事業者向け積算見積価格は、税別449,000円~469,000円。HT-M150Tは同じく税別380,000円~400,000円となっている。本体カラーはプレミアムブラックのみだ。

このほかはコネクテッド非対応家電となり、3口IHダブルオールメタル対応の「HT-M300T」、3口オールメタル対応「HT-M200T」、3口IH鉄・ステンレス対応の「HT-M100T」「HT-M9T」「HT-M8T」「HT-M8AT」がラインアップする。

スマホアプリ「日立IHクッキングヒーター」は、android6.0以上、iOS10.0以降に対応予定。IHクッキングヒーター本体とペアリングして利用する。クッキングガイドに掲載されている300レシピや、コネクテッド機種専用の30レシピから、ジャンルやレシピ名、使用食材などで柔軟に検索でき、献立に悩むときの強い味方になる。

HT-M350T/M150Tは、コネクテッド機種専用の30種類の適温調理サポートレシピを搭載

レシピを本体に送信して使用するコンロを選択し、本体の「切/スタートボタン」を押すことで、調理の経過状況などがスマホから確認でき、調理が終われば通知するのも便利だ。よく作るレシピはお気に入りに登録でき、取扱説明書や使い方動画も参照できる。動画は冊子の取扱説明書では利用できないため、スマホの特性を活かした機能と言える。店頭でもスマホでこれらが見られる点を伝えると魅力が増すだろう。

スマホアプリ「日立IHクッキングヒーター」で、レシピの作り方も細かく確認できる
レシピを本体に転送すると、選択したコンロに電波を受信しているマークが表示される
転送が完了したら本体の「切/スタート」ボタンを押す。これで自動調理が始まる

もっとも、ビルトインタイプのIHクッキングヒーターは住宅設備として、住宅メーカーや工務店、ホームセンター等が高い流通シェアを握る。家電量販店でも少しずつ伸びてきているが、展示スペースや販売スタッフの確保がなかなか難しい商材だ。

家電量販店が有利な点としては、スマホと連携する家電が増えていることもあり、コネクテッド家電について説明しやすい環境にあることが挙げられる。今後、コネクテッド家電がますます増えていくことを実感させられれば、フラグシップへの誘導も自然に行える。

火の立ち消えの心配がないことや、五徳よりも清掃が簡単なこと、揚げ物などの温度管理が容易なことなど、IHならではの魅力は多い。POPやパンフレット、動画再生などを上手く使い、リフォームなどの機会を捉えてしっかり提案していきたい。