「映像がキレイ」で推していく 8K AQUOSに8Kチューナー非搭載モデル


シャープは10月3日、8K解像度の表示に対応する液晶テレビ「8K AQUOS」にBW1ラインの2機種を追加すると発表した。8Kチューナーを搭載せず、ブラッシュアップした画像処理エンジン「Medalist Z1」を採用する。発売日は11月9日。市場想定価格は、70V型の「8T-C70BW1」が税別50万円前後、60V型の「8T-C60BW1」が税別35万円前後。

8Kと4Kをつなぐテレビ

BW1シリーズは、地上/BS/CSトリプルチューナー、4Kダブルチューナーを搭載。4K放送の視聴中に、別の4K放送と地上波放送の2番組同時裏録画に対応するモデルだ。BW1シリーズの投入により、シャープのAQUOSのラインアップは全24機種、そのうち8K対応は昨年末に発売したAX1シリーズの3機種と今回の2機種で併せて5機種。全体の2割を占めることになった。

AQUOSのラインアップにおける8K対応モデルは5機種となった
70型の「8T-C70BW1」
60型の「8T-C60BW1」

シャープは、AX1シリーズのユーザーを調査していて「地デジも綺麗に見られるのが嬉しい」という反応が、予想以上に多かったことを、BW1シリーズ投入の背景として挙げる。これはつまり、2Kや4Kの映像を8K超解像の映像にアップコンバートして出力する画像処理エンジンの能力が評価されていると言い換えられる。もっとも、エンドユーザーのほとんどは画像処理の理屈まで理解する気はないので、結果としての「映像が綺麗」という現象に満足しているとする理解が正しい。

8Kで観たい映像や番組についてのユーザーアンケートでは、最も多い32%が「新8K衛星放送」と回答したが、「新4K衛星放送」は20%、「地デジ」は15%、「YouTube」も9%いたそうだ。消費者は8K衛星放送がまだ特別な映像であることを理解しており、普段観る地デジや4Kの放送、あるいはYouTubeなどのネット配信が、より綺麗に見られることに価値を感じると分析できる。

BW1シリーズは、8Kチューナーを非搭載にすることで8K表示に対応しながら低価格化を実現したモデルという位置付けだ。AX1シリーズの廉価モデルと捉えてしまうと、8Kチューナー非搭載はいかにも残念に感じるが、4Kチューナー搭載テレビとして捉えると、ワンランク上の綺麗な映像が楽しめる競争力のあるテレビとなる。

BW1シリーズを廉価版の8K対応テレビと取るか、最上級の4Kテレビと取るかで付加価値の印象は大きく変わる

テレビ売り場では、本体が薄くて画面にメリハリのある有機ELテレビが、単価の高い高付加価値商品として良いスペースを占めるケースが多くなっている。そんな中、BW1シリーズは液晶での勝負にこだわるシャープの放つ変化球的な製品と言えそうだ。この秋冬のテレビ売り場で存在感を放つ切れ味の鋭いボールになるかどうか注目したい。

実物感、臨場感、機能性の3つのポイントで訴求

BW1シリーズの特長についてもう少し触れておく。

BW1シリーズでは、実物感、臨場感、機能性の3つのポイントで製品のブラッシュアップを図っており、消費者によりテレビ視聴が楽しめると訴求していく。

実物感は、映像のリアリティを高める能力であり、先述の「映像が綺麗」に直接繋がる機能だ。従来のASV液晶よりも透過率が高く明るい映像の再現が得意な「UV2A液晶」を採用。表示色を従来の最大1677万色から、最大10.7億色に拡大している。「高輝度LEDバックライトシステム」ではバックライトのエリア毎の輝度調整によって、夜景の明かりなどをよりメリハリのある輝きにする。

また、新・8K画像処理エンジンとして「Medalist Z1」を搭載した。8K画像へのアップコンバートに当たり、従来モデルからの「精細感の復元」、輪郭を滑らかにする「リアリティの復元」、映像信号を解析して動的なノイズを減らす「3Dノイズリダクション」といった機能が利用できるのに加え、新たに映像シーンの明暗レベルに応じたコントラストの自動調整で立体感を復元する「アクティブコントラスト プロ」も利用可能になっている。

実物感を増す新・8K画像処理エンジン「Medalist Z1」
従来の4K映像と、それを8K映像にアップコンバートして比較した例。BT-C70BW1での8K変換画面は撮影時にやや白飛びしてしまったが、画面はより明るくなり、岩肌の精細感や水飛沫のディティールが向上している

臨場感については、今後益々ニーズの高まるスポーツ観戦が臨場感豊かに楽しめる映像モード「8Kスポーツビュー」の新搭載が挙げられる。

リフレッシュレート120Hzの倍速技術で被写体の動きを予測して、中間映像を補間して動きの滑らかな映像にするほか、黒フレーム挿入で動きの残像を低減する。黒フレーム挿入は画面の輝度が低下する側面を持つが、HDR駆動によって消灯時の余剰電力を点灯部分に充当することで映像エリア毎のピーク輝度を高め、映像全体の明るさを確保するという。

さらに実際にスタジアムにいるかのような臨場感のある音が楽しめる、サラウンドモードを搭載。こちらはスピーカーのハードウェア的な変更ではなく、ソフトウェアのチューニングで実現している。

8Kスポーツビューを新搭載する

機能性は、AIがユーザーの視聴傾向を学習しておすすめの番組をお知らせする「COCORO VISION」への対応や、Android TVのプラットフォーム「Android 9 Pie」の採用、Googleアシスタントへの対応などが挙げられる。また、CPUや内部メモリーのパフォーマンスを向上し、リモコンでの電源起動を従来機「8T-C60AW1」と比較して約20%高速化。OSのバックグラウンドでのアップデートにも対応している。

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シャープ株式会社
8K AQUOS