新連載 神原サリーの視点【第1回】エアコンの展示を工夫してみませんか?


店舗の中を見回すと、売り場づくりや接客の仕方など、お客様のニーズと開きが出てきているのに、「当たり前」と思って変えられずにいる場所やコトも多いのではないでしょうか。家電+ライフスタイルプロデューサーとして、テレビや雑誌で活躍中の神原(かみはら)サリーさんが、生活者の視点でそんな場所に切り込みます!

はじめまして。家電+ライフスタイルプロデューサーの神原サリーです。
国内外の家電メーカーへの取材を通し、さまざまなメディアで家電製品についての情報発信をするようになって15年弱になります。このたび、流通に携わる皆さまに向けて、家電のプロとして生活者の視点で「魅力的な売り場づくり」についてご提案する機会をいただきました。これからどうぞよろしくお願いいたします。

エアコン売り場に目的別のプラスアルファ展示

さて、第1回はエアコン売り場の展示方法について考えてみます。現状は壁面もしくは島を作っての畳数別の展示が一般的です。エアコンを買いに来たお客様は、設置するお部屋の広さのコーナーに足を運び、メーカーや価格、機能の○×などを考慮しながら、どの製品がいいかを考えます。

しかし、デザインやカラーに特徴のあるものは少なく、売り場のスタッフに相談して決めるお客様が多いはずです。機能表やPOPを見てもどんなふうに良いのかがイメージしにくい人もいることでしょう。

畳数別展示されたエアコン売り場。同じ畳数だけでもこれだけ並んでいると気後れしてしまいそうです

畳数別の展示のほかに、各メーカーの特徴的な機能をズラリと展示したコーナーを設けている店舗もあります。ただし、これはフラグシップモデルを説明するための展示で、使う場所といえば広めのリビングになりますよね。それぞれのメーカーの“すごい機能”はわかったとしても、それが自分たちの生活の中でどんなふうに便利なのかがいまひとつわかりにくかったりします。

そこで今の畳数別の展示に加え、お客様のニーズを汲み取る売り場として、お部屋の目的別のコーナーを作ってダブル展示してみるのはどうでしょう。

たとえば「寝室向けのエアコンを集めました」というコーナーを作り、快眠のためのプログラムを組み込んできるエアコンや、風の吹き分けが出来て夫婦で寝ていてもリモコンの取り合いになりにくいエアコンなどを、メーカー横断で集めて展示するのです。

各社のフラグシップの機能がわかるコーナーを用意する店舗はありますが、寝室や子ども部屋、シニア世帯向けといった切り口の展示は見かけません

上質な睡眠環境を切り口にエアコンの単価アップを図る

昨今、睡眠負債という言葉が注目されるようになり、良質な睡眠を求める人が増えています。メーカー側も単なるタイマー設定だけでない、快眠のための機能をエアコンに搭載し始めているものの、「寝室エアコン」のような表現はしていませんし、たくさんある機能の1つに組み込まれていてなかなか気づかれないのが実情です。結果として、リビング向けのエアコンには高機能なものを選ぶのに、子ども部屋や客間、寝室などの個室用は安価なモデルを選択しがちなのが残念なところです。

「みはっておやすみタイマー」を使うと切タイマーで運転停止した後でも室温の上昇や寝返りの頻度を見て、設定温度を抑えめにして自動で再運転を行う日立の「Xシリーズ」や、おやすみナビのアプリと連動したパナソニックのエアコンの中でもコンパクトな「EXシリーズ」。室内・屋外温度に応じて自動で最適な温度と運転モードにし、夏でも冬でも安心して眠れる快適自動モードのあるスタイリッシュなダイキン「risora」。高精度赤外線センサーが手先・足先の表面温度の変化を見て、夫婦それぞれに適した気流を届ける三菱の「Zシリーズ」など、細かく見ていくと寝室向けの機能が充実していて、寝室で使うのにぴったりな機種が多数見つかることに気づかれるに違いありません。

島展示をオープン特価商品で集めている例です。たとえば、こうした島に「寝室エアコン」などの、1つのコンセプトに沿った製品を集めて展示してみてはいかがでしょう

 大切なのは、ほかに素晴らしい機能を搭載していても、この売り場では快眠に特化した機能を明記し、睡眠時に抱えるお悩みを解決できる機種なのだとアピールすることです。これによって、リビング以外は普及モデルでいいと思っていたお客様の単価アップが図れ、「買ってよかった!」という満足度の向上にも貢献し、そのお店のファンが増えることでしょう。

そのほかお手入れが簡単でリモコン操作がしやすい機種や、みまもり機能を備えた機種を集めた「シニア世帯向け」コーナーなども需要がありそうです。
エアコンの売上が目標に届かない店舗などは特に、今の売上にプラスアルファするために売り場にひと工夫してみてはいかがでしょう。

■関連リンク
神原サリー Officialブログ
Sallyの家電アトリエ