マッサージチェアはハイエンドが売れている
11月28日に行われた新製品発表会ではフジ医療器代表取締役社長の大槻利幸氏が登壇。同社が2019年4月に創業65周年を迎えたことを報告するとともに、「平成から令和に変わり、AIやIoTなどの技術が浸透してきています。さまざまなユーザー・エクスペリエンスが劇的に変化する年であるともいえます。フジ医療器としても新たなマッサージ体験を提供したいという思いから、これまで培ってきた技術と最新の革新的技術を統合して、弊社独自の画期的な音声機能を搭載した最新機種を発表いたします」と述べた。
マッサージチェアを売価30万円未満のスタンダードと30万円以上のハイエンドに分けて販売金額での構成比を見ると、ここ数年間はハイエンドの方が高くなっているという。この理由について同社では、身体の悩みや多様な悩みに応えられるという点で、ハイエンドの方が売れているのではないかと分析をする。
同社が約3,300人の男女に対して行ったアンケート調査によると、疲れを感じていると自覚しているのは30~50代の働き盛り世代が多かった。その疲れを解消するために欲しいと思うグッズでは、マッサージチェアが1位に挙げられている。その理由としては家族で使える、全身のケアができる、との声が多かったという。
働き盛り世代の特徴に合わせた機能を搭載
新製品のサイバーリラックス マッサージチェア AS-880のキーコンセプトは、『音声操作で全身マッサージ、ボイスOSがマッサージ体験を変える』。働き盛り世代には、3つの特徴がある。それは、①効率重視、②自分らしさ、③新しい文化への好奇心、の3つで、AS-880は、これらの特徴を満たす機能を搭載したと同社では説明する。
①の効率では、より効率的なマッサージに注力。背中、臀部、脚の3カ所には、それぞれが独立して動くメカを搭載し、全身同時マッサージを実現した。従来型の一般的なマッサージチェアは背中のメカがメインとして動作し、その他の各部位はエアーでマッサージを行う。このエアーによるマッサージは同時に行えず、一つの部位が動作しているときは、他の部位は動作しない。そのため、全身をマッサージするのに約5分かかっていた。
AS-880は前述の3カ所が同時に動作するため、メカではマッサージできない肩、腕、腿横はエアーで1カ所ずつの動作となるが、全身をマッサージするのに要する時間は約3分。つまり、一般的なマッサージチェアよりも短時間で全身のマッサージが可能で、時間の有効活用が図れるということである。
新たに開発したつかみほぐしメカ カスタム
背中から腰の部分では、新開発の『つかみほぐしメカ カスタム』を搭載。人の手で肩をつかんでマッサージをする動きを再現した。また、マッサージの強弱を肩7段階、背中3段階、腰7段階に選択でき、部位ごとに細かい調節が可能となる機能も新たに搭載した。
臀部のメカは『座面ほぐしメカ』で、8つ玉のもみメカが臀部から太もも裏まで広範囲に揉みほぐす。脚には『脚つかみほぐしメカ カスタム』を搭載。独自開発のもみ板と足裏ローラー、振動機能の3つを組み合わせてパワフルに揉みほぐす。ふくらはぎに関しては強弱2段階の調節が可能だ。
自動コースは8種類。高効率で7分間のクイックコースの他、全身が4コース、部位が3コースある。また、もみ、たたき、さざなみ、背筋伸ばしの基本もみ技4種類と部位に特化した部位専門技12種類のメニューにより、その日の疲れに合わせてメニューを選択できる。
自分に合ったポジショニングで、カラーも3色展開
②の自分らしさは自分に合ったという意味で、チャコールブラックとアンバーに加えて、受注生産でベージュ×グレイッシュブラウンを限定色として加えた。カラーだけでなく、自分の身体に合うという観点で、本体を身体にフィットするストレスフリー設計とした。座面は35cm幅のワイド設計で、ゆったりと座れる。体格に合わせて肩幅の調整も可能で、身長に合わせて脚部も約17cm伸縮させることができる構造になっている。
23種類の操作が、発話で指示できるボイスOS
③の新しい文化への好奇心に該当するのは、新機能として搭載した音声操作。リモコンを一切使わず、マッサージの開始から終了まで、すべて音声で操作ができる。操作する音声コマンドは23種類。自動コースの開始はもちろん、強弱の調節やヒーター機能、リクライニングの調整などの基本機能が、発話によって動作する。肘掛けの先端部にある音声入力ボタンを押して決められたコマンドを発話すると、頭部の横側にある音声入力マイクがそのコマンドをキャッチするという仕組みだ。
音声操作では安全性の面から、人の声以外には反応せず、2人が同時に発話した場合も反応しない。マイクの指向性ではチェアにもたれた状態で一番反応するような設計という。また、発話とひとことで言っても地域によってイントネーションは異なる。これに対しては、地域を問わずイントネーションが大きく異ならない言葉をコマンドにしたという。
フジ医療器のマッサージチェアでは今年の1月に発売されたAS-2000が最上位という位置づけで、売価からすると、AS/880はこの下に当たるポジションだ。スマートスピーカーもスマホも使わずに発話で操作できるが、カラー液晶を採用したリモコンも付属しており、どちらでも操作が可能。さらに背中の温浴背ヒーターと足先の足裏ヒーターで、よりマッサージ効果を高めるヒーター機能も搭載している。
メインチャネルの家電量販店での課題
「販売台数と販売金額で、マッサージチェアのメインチャネルは家電量販店です」と大槻氏はいう。その他のチャネルではメディアを使った通販チャネルがあり、伸びてはきているが、家電量販店の販売シェアを脅かすほどにはなっていないとのこと。しかし、実際のところ、売り場で展示はしているものの、人の配置やアプローチという面では、他の商品と比べると力が入っているとは言い難い。
前述のとおり、疲労感を自覚しているのはシニア層よりも30~50代の働き盛り世代の方が多い。この層をターゲットとすると、マッサージチェアの潜在需要は大きいといえよう。だが、売り場においてアプローチ、あるいは提案という形で、この働き盛り世代にリーチできているかというと、そうではないようにみえる。はじめからターゲットはシニア層と捉えているような印象もある。
例えば、売り場に「30代が最も疲れを感じています」「30~50代は疲れを感じている自覚世代」「働き盛り世代の疲労感解消にこの1台」などのPOPを提示したり、サイドテーブルを置いてスタイリッシュな雰囲気にすることで、シニア層以外のお客を売り場に誘導しよう。プリントアウトやカタログで、カラバリがあることもしっかりと伝えたい。
接客の際には最短7分で全身をマッサージするクイックコースを例に挙げて説明することで、全身同時マッサージの説明も兼ねることができる。なぜ、短い時間で効率的なマッサージが可能かということを説明すれば、自然に3カ所のメカが同時に動作する機能も説明できるからだ。
接客時に音声入力によるマッサージを体感させよう
音声操作は、ぜひとも体感してもらいたい機能だ。だが、店舗によっては他の売り場からの音で認識されにくい場合もあるかもしれないので、正しく動作するかの事前確認が必要。その場合は販売スタッフがマイクの近くで音声コマンドの「命令見本」を発話。すると、本体が音声コマンドを読み上げてくれる。売り場がざわついていても、どのようなコマンドがあるか、スピーカーで確認できる。お客によっては売り場での発話を恥ずかしがる向きもあるかもしれないので、リモコンでの操作方法も提示したい。
「新開発のボイスOSはユーザー・エクスペリエンスを高める一つの方法です。引き続きこれからもマッサージチェアの完成度を高める方向で開発に取り組んでいきたい」と大槻氏は話す。音声操作はAS-880の大きな特徴であり、他社差別化となる訴求ポイントだが、マッサージチェアの本質である疲労回復目的の機能もさらに進化させている。より多くのお客に体感してもらい、需要拡大に取り組みたい。