連載 神原サリーの視点【第3回】家電売り場の編集力を高める


日経MJに掲載の家電量販店の利用に関する調査(10~70代の男女)によると、利用頻度が半年に1回以下との回答が54%と過半数を超えたそうです。家電の購入場所は依然として量販店の店頭が最も多いとしていますが、年に一回未満は由々しき事態。そこで今回は、「お客様が足繁く通いたくなる売り場づくり」を考えてみます。

家電のテーマパークを作る

ロフトや東急ハンズのような雑貨を多く扱う売り場ではここ数年で「編集型」の売り場が当たり前になってきました。それまでは文房具や化粧品、バラエティ雑貨などをカテゴリーごとに分けた機能別の陳列をしていましたが、売り場の一部で季節やテーマに応じた陳列をすることで、楽しみ方や思いがけない使い方の提案となって人気です。

これを参考に家電売り場でも取り入れてみたいのが、小規模なスペースでも、キャッチ―なテーマで展開してお客様に共感や気づきを楽しんでもらえるようなコーナーづくり。名付けて「家電のテーマパーク提案」。いかがですか?

たとえば、「小さくても役立つ手のひらサイズの家電」なら、大規模にコーナーづくりをせずとも実現できそうです。

ソニーをはじめとする超小型の短焦点プロジェクターや、キヤノンのスマホ専用のミニフォトプリンター「iNSPiC」、MANGOSLABのふせんプリンター「nemonic」、Googleの「Google Nest Mini」やAmazonのプラグイン式のスマートスピーカー「Echo Flex」なども良いかもしれません。

MANGOSLABのふせんプリンターnemonic」は、12×D112×H90mm

女性の目も引くようにシャープの「超音波ウォッシャー」やパナソニックのLEDランタン(球ランタン)なども各色そろえてはどうでしょう。手のひらサイズと呼べるギリギリな大きさで、コイズミの「ライスクッカーミニ」も面白いかもしれません。

バイヤーの調整は必要そうですが、あえて白物も黒物も混ぜて並べ、来店客に「へー、こんなのあったんだー」と思わせれば作戦勝ちです。

コイズミの「ライスクッカーミニ KSC-1513」は、W175×D200×H190mm

意外性のあるテーマを探そう

新生活や母の日・父の日、敬老の日といった季節や行事にまつわる提案は、すでにチラシはもちろんのこと、売り場でも展開していることと思います。今回の「家電のテーマパーク提案」では、もっと意外性のあるものが望ましいでしょう。つまり企画力が求められるわけですね。

私が企画監修したムック本「素敵な人のシングルライフ」(宝島社発行)では、『一人暮らしが劇的に楽しくなる家電』を集めてご紹介しました。ターゲットは60代、70代、80代の“もう一度シングルライフを迎える”人たちです。

テーマに即した家電を集めて紹介した例。「素敵な人のシングルライフ」(宝島社発行)

「今さら買い替えなくても古いのがまだ使える」「よく分からないから買い替えは不安」と考えて及び腰になりがちな、この世代の人たちに向けて、誰かが来たときのためではなく、自分の毎日の食卓にテーブル調理を提案。出来立てほやほやの料理を楽しめるおしゃれでミニサイズのホットプレートや、セパレートプレート付きの電気鍋、プレスサンドメーカーを紹介しました。

また手が届くところに置いて使ってほしい電気ほうきや、リビングに置いてお友達にセルフサービスで入れてもらうための小さなコーヒーメーカー、快眠のためのLEDライトやエアコン、寝室向けの冷蔵庫なども紹介しています。

薬やメガネなどの小物も入れられるベッドサイド冷蔵庫「HR-D282BR」(ツインバード工業)

新しい家電がやってくることで、暮らしが変わるということをシーン別に伝えたのです。これをムック本ではなく売り場でも再現していただけたらどんなに素敵でしょう。

売り場では「お役立ちの提案を」と大上段に構えなくても、雑誌の特集のようなユニークな切り口の方が親しみが湧くと思います。

しゃべる家電、左手で使える家電、映画やドラマに登場した家電、パステルカラーの家電、首からぶら下げる家電…などなど。テーマに即した製品を集めた展示で目を引けば、それでもう十分です!

「今度はどんなコーナーになっているかな」と楽しみにしてもらい、それが来店の頻度を上げるきっかけになればうれしいですよね。新しい家電の世界を切り開いて購入に結び付けましょう。

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