ショップ兼ショールームONKYO BASEの業績が好調に推移 体験と販売、イベントの相乗効果で集客力がアップ


メーカーが自らリアル店舗を出店し、自社製品のPRと販売に乗り出すケースが増加している。ショップ内に競合商品がなく、さらにメーカーが最適と考えられる形でお客に提案できるというメリットがあるためだ。ONKYOは東京・秋葉原で「ONKYO BASE」を運営。非常に好調な業績で推移しているという。

購入客数・売上が前年の2倍以上に拡大

ONKYOが運営する「ONKYO BASE」は、東京・秋葉原の旧万世橋駅跡地に立つ商業施設「mAAch ecute KANDA MANSEIBASHI」の中にある。2018年4月27日にプレオープンし、7月5日にグランドオープン。プレオープンから約2年が経過した。

このほど、同社では「ONKYO BASE」の2019年の実績について、購入客数は2018年比226%、売上が同255%と発表した。いずれも前年の倍以上となる実績で、非常に好調な形で推移しているようだ。

ONKYO BASE」は旧万世橋駅跡地の商業施設にインショップとして出店
ONKYO BASE」は旧万世橋駅跡地の商業施設にインショップとして出店
ONKYO BASEのグランドオープン時
ONKYO BASEのグランドオープン時

「ONKYO BASE」のキーコンセプトは、「ここだけの体験」。メーカーのショールームとして体験という機能を持たせるのは当然だが、単に製品を試せるというだけのものではない。この「体験」に合わせて、「ここだけのイベント」「ここだけの商品」というテーマも内包させ、実のところは体験よりも「ONKYO BASE」に来店させることを喚起しているのだ。

ONKYO BASE
ONKYO BASE

お客が「ここだけ」で体験できる各種の取り組み

同社では、「ONKYO BASE」で行っている代表的な活動として、①新製品の先行体験会、②限定商品の販売、③音楽コンテンツやレーベル、アーティストとのコラボレーション、④イベント展開、⑤他業種とのコラボレーション、を挙げる。

①新製品の先行体験会では、オンキヨーとパイオニアの新製品の先行展示や試聴、体験とともに、正式に発売されていない製品についても「ONKYO BASE」を体験の場として活用。ここで得られたVOCや問い合わせを次の展開につなげるための場にもなっている。

クラウドファンディングで販売した桐製のヘッドホンも「ONKYO BASE」で展示
クラウドファンディングで販売した桐製のヘッドホンも「ONKYO BASE」で展示
住宅用サウンドシステムの体験会(左)とネックスピーカーの先行展示例(右)
住宅用サウンドシステムの体験会(左)とネックスピーカーの先行展示例(右)

②限定商品の販売では、お客の耳型に合わせたカスタムIEM(In Ear Monitor)が一般客のみならず、音楽関係者やミュージシャンにも支持されているという。さらにキャラクターとのコラボモデルは秋葉原という立地もあり、オーディオファン以外の新たな客層の獲得にも貢献しているようだ。

3Dプリンターを活用したカスタムIEMも「ONKYO BASE」で展示した
3Dプリンターを活用したカスタムIEMも「ONKYO BASE」で展示した

ハードとソフトを合わせて音楽ファンに提案

③音楽コンテンツやレーベル、アーティストとのコラボレーションの活動としては、アーティストの特設ストアの開設やアーティストが望む音像での試聴体験、グッズや作品の販売などを行っている。音楽というソフトと、その音楽を再生するハードを一体化してお客に提案することで、お客にとっては新しい体験を得ることができる。

ザ・ローリング・ストーンズの特設ストア(左)とザ・ビートルズの特設ストア(右)も期間限定で開設
ザ・ローリング・ストーンズの特設ストア(左)とザ・ビートルズの特設ストア(右)も期間限定で開設

④イベントについては不定期で実施。ライブや上映会という形式もあるが、昨年開催されたラグビーW杯では、同社のAVアンプやスピーカーを使ったパブリックビューイングを実施。高品質のオーディオ製品による臨場感と迫力の魅力をスポーツファンに体感を通して伝えた。また、「パイオニア光ディスク歴史展」では、1980年代に登場したレーザーディスクからUHDプレーヤーまでを展示し、多くの来店客を集めたという。

パイオニアの歴代のプレーヤーを展示
パイオニアの歴代のプレーヤーを展示

「ONKYO BASE」がメーカーのダイレクトストアとちょっと異なっているのが、⑤他業種とのコラボレーションである。イヤホンやヘッドホンとファッションとの組み合わせ提案や、ホンダが開発したオーディオを接続するためのポータブル蓄電池とパイオニアのフラグシップモデルのヘッドホンの組み合わせによる試聴体験などがそうだ。

ホンダのノイズを低減したオーディオ機器用蓄電池(左)とパイオニアのフラグシップヘッドホン(右)を組み合わせた試聴体験を実施
ホンダのノイズを低減したオーディオ機器用蓄電池(左)とパイオニアのフラグシップヘッドホン(右)を組み合わせた試聴体験を実施

マーケティング理論に沿った「ONKYO BASE」の活動

ダイレクトストアは、メーカーが自社製品を来店客に体験してもらうことで顧客獲得を目指すものだ。しかし、より多くのお客に来店してもらうための仕掛けを考え、実行しているメーカーは少ないのではないだろうか。そのメーカーや製品カテゴリーに関心を持っているお客をストアに誘引できても、それ以外のお客にどのようにリーチするか。そこがポイントであり、多くのメーカーのダイレクトストアが、まだ踏み込んでいない部分と見受けられる。

「ONKYO BASE」の活動を見ると、オーディオファン以外の層をどのようにして集客し、どうやってオーディオに関心を持ってもらうかという点に注力していることが分かる。さまざまなコラボレーションやリレーション、イベント展開によってオーディオにあまり関心のない層にも来店動機を与える。来店客に店内の体験で関心を持たせ、購入の動機付けを行う。購入意欲によっては、その場で製品を購入することもできる。認知・感情・行動というマーケティング理論に沿ったストーリーが「ONKYO BASE」で実現されているからこそ、前述のような実績向上につながっているといえよう。

楽天イーグルスや新世紀エヴァンゲリオンなどとのコラボモデルは、従来のオーディオファン以外にもアピールできる効果があった
楽天イーグルスや新世紀エヴァンゲリオンなどとのコラボモデルは、従来のオーディオファン以外にもアピールできる効果があった
楽天イーグルスや新世紀エヴァンゲリオンなどとのコラボモデルは、従来のオーディオファン以外にもアピールできる効果があった
楽天イーグルスや新世紀エヴァンゲリオンなどとのコラボモデルは、従来のオーディオファン以外にもアピールできる効果があった

異なるカテゴリーのお客に対してファン化を推進

試聴体験だけであれば、それこそ家電量販店の店頭でも可能だ。しかし、「ONKYO BASE」の場合は、体験もさることながら、『ここだけ』の持つ重要性が他のダイレクトストアとは全く異なっている。『ここだけ』だから、購入客数が前年の2倍以上にもなっているのだ。

同社では今後もさまざまな体験や提案を強化し、オンキヨーブランドをオーディオファン、映像ファン以外にも伝えていくという。自社製品のファンづくりは、すべてのメーカーの共通課題だ。ただ、多くのメーカーはカテゴリーを超えたファン層の獲得よりも、あくまで製品と同じカテゴリーでのファン層獲得に終始しているように見える。これに対してオンキヨーでは「ONKYO BASE」を通じて、オーディオファンではない層に対してのアプローチを試み、しっかりと実績を上げている。「ONKYO BASE」での取り組みは、多くのメーカーにとっても参考となるべき事例ではないだろうか。

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