富士通の電子ペーパー「QUADERNO」の軽さはやっぱり衝撃的


富士通クライアントコンピューティング(以下、FCCL)の電子ペーパー「QUADERNO(クアデルノ)」をご存知だろうか。ローンチからはすでに一年以上が経過しているが、利便性の高さの割に今ひとつ認知が進んでいないように見受ける。今回短期間ながら試用する機会を得たのでレビューをお届けしたい。

紙とデジタルの便利さをいいとこ取り

QUADERNOは、メモを手書きで取りたい人、ノートや手帳にペンで記録する習慣のある人に向いた電子手帳だ。アナログな紙のノートや手帳は、サッと取り出して書けるのが魅力だが、使っていくうちに冊数が増え、古いものを残しておくのは場所も取るし、過去の記録を探す検索性もあまり良くない。

QUADERNOは紙にペンで手書きする感覚を独自の技術によりデジタルで再現している。書き味の良さは抜群だ。パネルは16階調グレースケールで、文字や図がしっかり視認できる。これなら、デジタルのメリットを享受したいがキーボード入力が苦手という人にも向いている。

手書きならではの、サッと書く、記号やイラストをまじえて書く、線を引いて結ぶ、追記したり打ち消し線を引いたりが簡単だ

本体には16GBのメモリーを搭載し、約1MBのPDFを約1万ファイル分保存できる。紙のノートに換算すると、ざっくり1万ページ程度だと思って差し支えないだろう。場所を取らないだけでなく、ずっと持ち歩いていられるのも大きな魅力だ。

一方、ノートパソコンやタブレットと比べると、圧倒的に軽量で、バッテリーが長持ちだ。バッテリー駆動時間は約5.5時間のフル充電で最長約3週間の利用が可能となっている。ノートパソコンの5~20倍ともなると、もはや比較するのも何か違う気がしてくる。

第一印象は軽い!

QUADERNOを手に持って最初に感じるのはとにかく「軽い!」だ。

電子ペーパーは同じサイズのノートパソコンやタブレットに比べると格段に軽い。頭では分かっているのだが、普段ノートパソコンを持ち歩いていることもあり、実際に手に持ったときに「軽い!」という感想がまず口を突いて出てしまった。「これはモックか?」と思わず疑いたくなるくらい軽いのだ。

QUADERNOの製品名は、イタリア語で「ノート」を意味する。そこから連想するのは、ノートパソコンではなく大学ノートだ。A4サイズとA5サイズの2製品がラインアップされているところも、大学ノートを想起させる。A4サイズの画面は13.3型、A5サイズの画面は10.3型になっている。なお、今回はA4サイズを試用した。

ガシッとホールドしているが、実はとても軽くて片手どころか、指で摘んで持っていても苦はない
A4サイズのペン込みの重さは、実測値で363.0g

ダウンロードでテンプレートを増やせる

画面には無地のノートのほか、方眼紙、ToDoリスト、ミーティングシート、大学ノート(罫線)、五線譜、原稿用紙、日記、スケジュール帳など、複数のパターンを表示可能だ。それぞれ、テンプレートをFCCLのウェブサイトからダウンロードして使う。

スケジュール帳はカレンダー表示から1日ごとのメモ画面にタップで切り替えられる。備忘録として思いついたことを何でも書き込んだり、あらかじめ先々のスケジュールを書き込んでおいたりできて使い勝手が良い。

容易な修正、コピー&ペースト、画面表示の拡大縮小、検索、パソコンやスマホとの連携などは、紙のノートでは決して味わえない便利さだ。ペンの太さや消しゴムの大きさは設定から変更できる。

ペンの色を青や赤に変更すると、画面上はグレーで表示されるが、書き出したPDFをパソコンやスマホで読み込んだ時に青や赤で表示される
マーク検索は、☆や*のマークが書いてあるページを検索できる機能だ

QUADERNOのもうひとつ便利なところとしては、パソコンでは一般的な「保存の操作」の概念がなく、書き込みは書いたそばから自動的に保存されていく点が挙げられる。保存形式はPDFで、パソコンやスマートフォンとそのままやり取りできる。もちろん、パソコンで用意したPDFをQUADERNOで表示することも可能だ。

店舗のどこに置かれているか探しづらい

QUADERNOは、店頭ではタブレットではなく電子文具のコーナーに置かれていることが多い。ソニーのデジタルペーパー「DPT-CP1」や、キングジムの「ポメラ」などが近くに展示されがちだ。筆記用具としての電子文具というくくりで考えれば、このカテゴライズは間違ってはいない。特にDPT-CP1は仕様もよく似ている。

ただ、家電量販店の電子文具コーナーは、ラベルプリンターや翻訳機などと並んで置かれ、パソコンコーナーやタブレットコーナーとは売り場が離れている店舗も少なくない。あるいは法人コーナーに、シュレッダーや小型プロジェクターなどと一緒くたに置かれるケースもあり、そうなってくると、個人で商品を探している人には見つけづらい。

QUADERNOを探す人はどちらかと言うと、先にタブレットコーナーに足を向けるのではないだろうか。店舗のレイアウトやバイヤーの都合もあるとはいえ、電子ペーパーという商品ジャンルを知らない人に気付いてもらう意味でも、タブレットコーナーに近いほうが来店客にはわかりやすいと思う。

QUADERNOのような電子文具は、店のどこで売られているか少し探しづらい

冒頭で述べた通り、QUADERNOは発表から一年以上が経過している。筆者は発表会や展示会などでも製品に触れているが、今回久し振りに触れてやっぱりその軽さに驚いた。手に持っていてまったく疲れず、カバンに仕舞うと入っていることを忘れて歩ける。この衝撃的な軽さは、未だまだ多くのお客に対して新鮮な印象を与えられるに違いない。便利な道具を探すお客はもちろん、変わったもの、新しいもの、見たことがないものを見たいお客にも、改めて手に取って体験してみて欲しいと感じた商品だった。