大塚家具の7店舗が家具と家電のトータル提案でリニューアル、新宿店はこうなった!


大塚家具が6月19日、家具と家電を同時に提案する、新しいスタイルの展示を取り入れた店舗を、全国で7店舗に同時リニューアルオープンした。ここでは写真中心で家電量販店とは一味違う店舗の様子を紹介したい。

あくまで家具を探しに来た人に向けた店舗

家電と家具のコラボ店舗としては、大塚家具の親会社であるヤマダ電機が「家電住まいる館」をすでに全国展開している。大塚家具では家電住まいる館のノウハウも活かしつつ、あくまで家具の展示を中心に据えながら家電の展示を取り入れている。家具と家電をワンストップで選べるという共通のコンセプトでありながら、家電住まいる館とは逆方向からアプローチが試みられていて興味深い。

あくまで家具の展示がメインだが、テレビなどの実物の家電が併せて配置されたことで、よりリアルにイメージできるようになった

今回は大塚家具がリニューアルした7店舗のうち、新宿店のショールームを取材した。店舗は新宿駅南口と中央東口からそれぞれ徒歩5分程度の甲州街道沿いに立地する。新宿マルイ本館や、ビックロなどがほど近い。

新宿店は地上8階、地下1階建てで、1階の出入り口は甲州街道沿いと、反対側の中央東口に出る路地側の2つがある。フロア中央に上りと下りのエスカレーターが一用意され、その周りをぐるりと主導線で囲む、素直で分かりやすいレイアウトだ。

甲州街道沿いの入り口付近には、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、空気清浄機など大型の生活家電が展示されており、従来の家具専門店のショールームと大きく変わったポイントになっている。

洗濯機売り場。見せ方をシンプルにすることで安っぽさを感じさせない工夫が凝らされている
オーブンレンジや炊飯器は、展示台の下部に在庫を置く家電量販店そのままの展示スタイル
新宿駅中央東口方面の入り口付近には、理美容家電などの小物と照明を置く。照明は従来から手掛けていたこともあり、ヤマダ電機とは仕入れが異なる

接客のスタイルに変化

大塚家具では、一組のお客に一人のスタッフが専任となって付き、一緒に店内を周りながらお客のニーズを引き出して、商品を説明し、クロージングまで担当するのが、基本的な接客スタイルだ。スタッフは店内のすべての商品を説明できるように勉強し、馴染みのお客が作れるようにお客との関係づくりも重視する。家電量販店ではコンシェルジェと呼ばれるスタイルが標準という訳だ。

家具と家電のコラボ展示という業態に変わるにあたり、大きく変わったことの1つが、この接客スタイルになっている。さすがに家具と家電のすべてを一人のスタッフが隈なく説明できるようになるには時間が必要であり、特に家電は家具に比べるとマニアックな知識を持つお客も少なくないため、コンシェルジュスタイルを基本とするのは難しい。

このため、来店客には1階のインフォメーションでスタッフに用向きを伝えたあと、基本的には店内を自由に回遊して、気になった場所で付近のスタッフに声を掛けて接客を受けてもらう形にしている。家電量販店と同じスタイルだ。

新宿店のスタッフは、大塚家具のプロパーのスタッフが約77%、ヤマダ電機から出向のスタッフが約23%で、互いが専門知識をフォローし合えるように配置している。

フロア構成に合わせ家電を無理なく配置

フロアは2階にクロージングコーナーが設けられており、まずは家具を見に来たお客が最初に向かうであろう3階から見学した。

3階はシンプル&ナチュラルや、ヴィンテージのリビング・ダイニング用家具などを扱う。エスカレーターを降りると、一気に家具専門店らしくなる。

リビングやダイニングでくつろぐときにソファで観るテレビが置かれているが、テレビの数は厳選し、目立ちすぎないように配慮している。

家具の足やテーブル面など露出する木目の色を揃えると、家具で使われている布地や革、ラグ、カーテンなどで複数の色を組み合わせたときにお洒落に見える

4階もリビング・ダイニング用の家具を置くが、こちらはよりスタイリッシュでモダンな家具が多い。

スタッフは家具と一緒に家電の説明もできるよう訓練しているが、家電の深い知識を求められると、ヤマダ電機から出向中のスタッフにフォローに入ってもらう

また、4階ではキッチン家具も展示する。キッチンテーブルやキッチン収納などと共に、本物のオーブンレンジや炊飯器、ジューサーミキサー、コーヒーメーカーなどを置く。

以前は大型の家電は作り物でイメージできるようにしていたが、本物を置くようになってリアリティが大きく増したとのこと
ミキサーやケトルなどのキッチン用小物家電ももちろん本物を展示。手書きPOPも、どことなく家電量販店と雰囲気が違う!?

今後の期待が高まる家具と家電のコラボ展示

5階はリビング・ダイニングのジャパニーズ、トラディショナル、曲木家具のほか、アンティーク家具や学習デスクとなる。ここでは「SOHOギャラリー」が目を引いた。小規模オフィスだけでなく、自宅でテレワークするのにも向いた、デザインと機能性に優れたデスクやワークチェアが並ぶ。

こうした展示内容を変えられるギャラリーは、今後家電と家具のコラボ提案にも活かされていくに違いない。

SOHOギャラリーの一角。座り心地の良さそうなデスクチェアが並ぶ

6階はラグジュアリーブランドコーナーとなっており、売り場は1つひとつの家具がゆとりをもって展示されている。

ラグジュアリーブランドコーナーでは、置かれているテレビももちろんハイエンド。手前右の見切れているグレーのソファは200万円以上のプライスカードが付いていた

7階はベッドや寝具、クローゼットなどの衣類収納や、箪笥を始めとする和家具のフロアだ。

寝室向けに空気清浄機や扇風機、ファッショナブルなベッドサイドスピーカーや照明、さらに布団クリーナーなども提案している。こうしたコラボ展示は今後ますます洗練されていくだろう。

高級ベッドがずらりと並ぶ。寝具を選ぶ時は実際にマットの上で横になってみることを勧めているそうだ
布団や小物と一緒に展示することで、来店客に自分がこれから使うことになる新しい寝室をイメージさせる

8階はイベントホールとなっており、今回は見学を割愛した。

家具を一通り見たお客は、2階のクロージングフロアへ降りる。2階はカーペットやカーテン、インテリアアクセサリーの売り場が、クロージングコーナーと隣接する作りになっている。家具は大きな物から選んでいき、カーペットやカーテンは家具に合うものを後から選ぶのがコツとなるため、フロアもその流れに沿って構成している訳だ。

インテリアアクセサリーは、一見するとついで買いを提案しているだけのようにも見えるが、1つひとつ作りのしっかりした長く使える商品を展示しており、顧客満足度が高くなるように配慮している。

カーペット売り場ではロボット掃除機をスマートスピーカー経由で音声操作できる実演コーナーも設けられていた
インテリアアクセサリーのサイドテーブル。Z字にすることでテーブルの足がソファの下に入り、ソファに座ったときに肘を付いたり、飲み物や食べ物を置いたりしやすい。PCを置いて作業もできるという

最後に地下1階を見学した。地下1階は新たに家電専用の売り場とし、商品の陳列もより圧縮され、テレビやレコーダーなどのAV家電、パソコン、プリンター、デジカメ、クリーナー、健康家電、トースターやミキサーなどの調理小物家電、電源タップなどの小物から、ゲームソフトや、電子ピアノまで所狭しと並ぶ。

家具を探しに来て、家電も欲しくなったお客に家電の選択肢を提案するためのスペースで、ややストックヤード的な雰囲気もある。

地下1階は家電コーナーで、完全に家具より家電を意識したレイアウト
個人的にこの店舗で初めて知った家電製品もあった。韓国メーカー製の美顔マスクで、1階の理美容家電コーナーで見掛けた。アイアンマンのマスクのようでかなり印象的だった

家具と家電のコラボ展示には発展途上の楽しさもある

店舗を訪れる前に気になっていたのは、求める家具のグレードとバランスの取れた家電がちゃんと提案されているかどうかだった。これに関しては、家具も家電もラグジュアリーなものからカジュアルなものまで幅広く取り揃え、バランスに配慮して展示していると感じた。

家電の存在感はさりげなく、POPやのぼりなどもほとんどないが、家具を探しに来た人に、家電とのバランスを体験させたり、最新家電の気付きを与えたりする場としてきちんと機能している。

一方、店舗を見学してみて気になったのは、店舗に入ったばかりの1階に冷蔵庫や洗濯機、空気清浄機などの家電がズラリと並ぶ光景だ。これは家具を買いに来たお客には違和感を抱かせるのではなかろうか。とはいえ、しばらくは家電とのコラボを強調するニュアンスが打ち出せ、他の家具店との差別化として機能するかもしれないと感じた。

家具店の入り口をくぐって最初に空気清浄機やエアコンが目に飛び込んでくるのは、お客によっては妙な気分がするのではあるまいか。ただ、こうした違和感は発展途上ならではの面白さとも言えなくもない

別記事でも紹介しているが、ヤマダ電機の三嶋恒夫社長が、大塚家具の会長職に就任する。大塚久美子社長は留任。会長職は大塚社長の父親である創業者の大塚勝久氏が退任してから空席となっていた。また、これに合わせてヤマダ電機の幹部4名を大塚家具の取締役として迎える。

今後両社のシナジーは益々拡大が図られる。どのような店舗になっていくのか、どのような業態になっていくのか、今後の展開が楽しみだ。