本社の新規上場を機にアンカー・ジャパンがロゴを刷新 プロジェクターブランド「NEBULA」を第4の事業ブランドとして独立
Anker Innovationsが中国で新規上場し、約420億円の資金を調達
Ankerグループの日本法人であるアンカー・ジャパン(以下、アンカー)は2013年に設立された。モバイルバッテリーや急速充電器などをEC市場に続々と投入し、その優れたコストパフォーマンスにより、Amazonで販売シェア1位を獲得するなど、飛躍的な成長を遂げている。
2018年からは自社のダイレクトショップを立ち上げるとともに、直営店のAnker StoreやSC内のAnker Store Select、家電量販店のAnkerコーナーなど、リアル店舗での展開も拡大中だ。
Ankerグループの本社であるAnker Innovationsは8月24日、中国・深圳証券取引所の新興企業向け市場に新規上場を果たした。今回の上場では新たに4,100万株の新株を発行し、約420億円の資金調達を行った。調達した資金は製品の研究開発や施設の増強・運用に投じられる予定である。
この本社の新規上場に伴い、アンカーは日本市場でのさらなる飛躍を目指してコーポレートロゴを一新した。
製品カテゴリーによって4つのブランドを展開
現在、アンカーでは製品によって異なる4つの事業ブランドを展開している。同社の代表的なAnkerブランドが取り扱う製品は、モバイルバッテリーやUSB急速充電器、ケーブル・ポータブル電源、USBハブなど。
オーディオテクノロジーとバッテリー技術を融合したSoundcoreは、Bluetoothスピーカーや完全ワイヤレスイヤホンなどのオーディオ製品のブランドだ。
従来のカテゴリーであるガジェット系から生活家電のカテゴリーに踏み込み、家庭での快適な暮らしをサポートする製品群ということで、2016年からeufy(ユーフィ)ブランドでの生活家電製品も発売している。
2018年にアメリカのクラウドファンディングで1億円以上の資金を調達して話題となったモバイルプロジェクターのブランドがNEBULAだ。
この4つの事業のうち、従来NEBULAはサブブランドとしての位置づけだったが、これを一事業ブランドとして独立させて展開していくことを決定した。この背景としては2019年6月に発売したモバイルプロジェクターの「Nebula Capsule Ⅱ」が延べ2万台を販売し、国内のAVアワードで2冠を受賞したことと、今秋に本格発売を控えた「Nebula Cosmos」の展開などがあるという。
2019年のグローバル売上高は前年比3割増の1,050億円
アンカーでは、先述した中国新興企業向け市場での上場に合わせてオンライン記者発表会を開催した。同社の代表取締役社長である井戸義経氏は「Ankerグループは創業から10期目に入り、中国の長沙と深圳の2都市での本社機能をはじめ、世界6拠点、約2,000人の社員を抱えるグロ-バルカンパニーへと成長しています。創業より10年で急速な成長を成し遂げた要因は製品とそれを生み出す事業モデルに革新を起こし続けたことです」と延べた。
Ankerグループの製品群はスマホを充電という形で直接サポートする形に始まり、スピーカーやイヤホンなどのスマホの機能を拡張するもの、ロボット掃除機やスマートプロジェクターなどのスマホと連携して豊かな生活を実現するものに広がっている。
製品群の拡張により、創業当初は売上高の100%が充電関連製品だったが、2019年には充電関連製品が約57%になり、ロボット掃除機やプロジェクターなどのスマート関連製品が約23%、オーディオ関連製品が約19%になった。
「Ankerグループが次々と新しい製品を生み出す根底にあるのが、『Empowering Smarter Lives』。すなわち、『ハードウェアの力で人々のスマートな生活を後押しする』というコーポレートミッションです」と井戸氏は話す。このミッションを具現化することで、2019年のグローバルでの売上高は約1,050億円、2018年比で約30%の伸長を実現した。
新型コロナウイルスが世界的に猛威を奮っている2020年の上半期においてもグローバルでの売上高は約543億円、前年同期比25%の増収になっているという。
今回の新規上場で取得した資金は継続的な成長のため、積極的に投資するとのことで、このうち約64%、約268億円が日本での展開加速を含む戦略的投資に活用されるとのことだ。
グルーバルに占める日本の売上構成比は約15%で第2の市場
井戸氏に続き、8月24日付けで取締役COOに就任した猿渡歩氏が登壇。アンカーの現状と今後の展開について説明を行った。
猿渡氏は「日本法人であるアンカーの2019年売上高は約135億円で、2013年の創業時からの成長率は約1,400%。グローバル平均を大きく上回っています。アンカーはAnkerグループの売上高の約15%を占め、アメリカに次ぐ大きな市場となっています」と解説した。
日本においてもコロナ禍は大きな影を落としているが、猿渡氏によると「上半期は約82億円の売上で、昨年を上回っています」という。この成長は扱いカテゴリーの増加を含む製品戦略と、チャネル戦略によるものだ。
限られた製品を効率的に販売するため、アンカーはオンラインからビジネスをスタート。創業の2013年~2014年の売上高はほぼECプラットフォームでの販売だった。オンラインによるビジネスモデルを確立し、製品に対するユーザーの信頼も獲得した2015年から販路をオフラインにも拡大。その結果、「オンラインでの売上規模は6年で10倍、オフラインはそれ以上の高い成長率を実現しています」(猿渡氏)。
戦略のブラッシュアップとブランド強化も推進
これからのアンカーの製品戦略については、製品数の拡大だけではなく、各製品を磨いていくフェーズへと進化させる。「単に最新を追求していくのではなく、お客様の声から得た気づきを製品にフィードバックするという視点で積極的なイノベーションに投資したいと考えています」と猿渡氏は話す。
チャネル戦略においては、オンラインとオフラインを問わず、既存チャネルで売上拡大を図っていく。特にオフラインにおいては体験強化と取扱製品の拡充に合わせて、直営店やAnkerコーナーへの積極的な投資を続けていく考えだ。「全都道府県に出店するくらいまで今後もオフラインに注力していきます」と猿渡氏は語った。
そして、新たに着手するのが「ブランド戦略」の強化。これまでアンカーではセールス直結プロモーションに重点を置いてきたが、製品や販路の拡充により、今後は製品それぞれのブランドの認知に努める。
同社ではオンラインによるD2Cを軸足に置いてきたが、これは顧客ダイレクトで中間マージンを省くということではなく、ブランドストーリーを直接消費者に伝えやすい点を重視してきたため。各ブランドの個性や思想などを今以上に消費者に認知してもらう活動に取り組んでいく方針だ。先述のNEBULAブランドもこの方向性に沿ったものである。
今回のコーポレートロゴの一新とともにアンカーは次のフェーズでさらなる成長を図るべく、製品や販路、ブランド力においても進化させようとしている。だが、家電量販店に来店する一般の消費者にとってアンカーの認知度は決して高くない。同社ではさらなるタッチポイントの強化を図っており、この意向は来店客にとって新たな製品の発見の場でもある店頭に相乗効果をもたらすことが期待される。ユーザーの満足度や支持によって急成長してきたアンカーの製品群を、もっと店頭で活用してみてはいかがだろうか。
Anker Japan公式サイト