洗濯機の進化の中で取り残されてきた「部分洗い問題」
アクアは全自動洗濯機の新シリーズ「Prette」5機種を9月16日に発売すると発表。8月28日に開催された発表会で登壇したアクアジャパン執行役員の吉田庸樹氏は「今回のコロナ禍はメーカーにとってイノベーションの加速のきっかけであるとともに、技術力やクリエイティビティが試される場ではないかと実感しています。アクアの主要商品である洗濯機も例外ではなく、イノベーションの余地は大いにあると感じています」と挨拶を述べた。
洗剤メーカーは洗浄力や仕上がりの進化を目指して、さまざまな新製品を開発している。洗濯機メーカーにおいても洗濯のスピードや省エネ、洗い方などで改良を重ねてきた。しかし、「エリやソデなどの部分汚れに対しては手洗いやもみ洗い、ブラシこすりなどによる原始的な対応方法を強いられているのが現状で、これが部分洗い問題となっています」と吉田氏は指摘する。
Pretteは、この部分洗い問題に対する解決策を機能として提示。さらに洗濯機の最新トレンドともいえる洗剤自動投入機能も搭載した。
超音波で皮脂汚れなどを落とす「らくらくSONIC」
同社で一般消費者が洗濯機を選ぶ際の重視ポイントを調べたところ、『エリ・ソデの皮脂汚れ』『食べこぼしなどの部分汚れ』は、重視度が高いものの、実使用における満足度は低かった。また、部分汚れを落とすための予洗いについては約8割が実施していた。この部分洗いで大変なこととしては『手間がかかって面倒』『なかなか落ちない』『時間がかかる』などが挙げられた。
アクアがエリやソデなどの部分汚れを解決する方法として採用したのが超音波洗浄方式「らくらくSONIC」。超音波振動で発生させた小さな気泡が弾ける力で、汚れを浮かせて落とす。
吉田氏に続いて登壇したアクアジャパン ランドリー企画グループ ディレクターの小山秀樹氏は「部分汚れ問題をすべて解決し、しつこいワイシャツのエリ・ソデ汚れも約30秒の短い時間でキレイに落とす。これが、らくらくSONICの特長です」と述べた。
らくらくSONICの原理は、シャープの超音波ウォッシャーと同じだ。しかし、超音波振動を利用した予洗いという点は同じだが、らくらくSONICは洗濯機と一体化されている点がシャープとは異なる。一体化によるメリットは、らくらくSONICの特長の一つとして挙げられている『カンタン』で具現化されているのだ。
簡単で、手を汚すことなく部分汚れを落とす予洗いが可能
らくらくSONICを利用する際は本体から機構部を引き出し、同機能の運転ボタンを押す。すると液体洗剤自動投入機能で使われる液体洗剤タンクからの洗剤と水道水が混合されてトレイに出てくる。洗剤液がトレイを満たすと超音波ホーンが稼働し、音と振動を発する。超音波ホーンに汚れた部分を軽く当てて左右になぞることで、汚れを落とす。使用された洗剤液はトレイが収納されると自動で排出される仕組みである。
つまり、洗面台を使ったり、槽内で水を溜めたりすることなく、部分洗いができるというわけだ。しかも手が汚れる心配もない。
音と振動で超音波振動が実感できる
体験で超音波ホーンの下に汚れ物を当てると、毎秒約4万回という振動がホーンに当てた生地を通して伝わってくる。汚れの代わりとしてファンデーションを塗布した生地を左右に動かすと、ファンデーションの色がどんどん薄くなっていく。実使用で行うことは、この左右に動かすことだけ。確かに手間がかからず、手も汚れなかった。
ちなみに超音波ホーンとトレイとの間は約6mm。この厚さ以下のものであれば、らくらくSONICの超音波による部分洗いができる。音波ホーンの幅は28mmとワイドなため、約30秒という短い時間で部分洗いが行える。
らくらくSONICの稼働時間は1回で約3分。部分汚れを落とすという目的では十分な稼働時間だ。仮に3分で終わらなかった場合は、再度ボタンを押して稼働させればよい。
らくらくSONICで衣類の黄ばみと布痛みも抑制
らくらくSONICの2つ目の特長が『キレイ』。超音波洗浄では皮脂や油分を含む調味料などの汚れに効果を発揮し、「衣替えなどでしばらくしまっていた衣類は、汗や皮脂が酸化して黄ばみとなってしまうことがあります。らくらくSONICを日頃から使用していただくことで目に見えない皮脂も落とし、長期保管による黄ばみを防ぐ効果もあります」(小山氏)。
3つ目の特長は、『衣類を傷めない』。予洗いは通常、もみ洗いやブラシこすりなどを行う。汚れを落とそうと力を入れれば入れるほど、布傷みは進む。らくらくSONICは超音波ホーンに衣類を当てて左右に動かすだけなので、衣類を傷めない。
超音波ホーンは先述のとおり、毎秒4万回も振動するため、高温になるという特性がある。高温の状態で長時間使用すると耐久性に問題が発生するため、カラ運転を行わないことが必要。そこで、水に浸かっていないと動作しない設計とした。さらに万が一、カラ運転を行った場合でも超音波ホーンの内部のサーモセンサーが温度を検知し、運転を停止する。
また、超音波ホーンは約20kgの耐荷重設計で、そのの耐久性は洗濯機の想定耐久時間の2倍以上を確保し、洗濯機よりも長持ちするとのことである。
液体洗剤・柔軟剤自動投入機能をシリーズ全モデルに搭載
Pretteでは最近の洗濯機のトレンドである洗剤の自動投入機能も搭載した。液体洗剤の自動投入口を本体左側、柔軟剤の投入口は右側に配置し、タンクにはそれぞれの詰め替えパウチ1本分が入る容量となっている。この洗剤と柔軟剤が流れる経路には洗濯の度に水が流れるため、清潔に保たれるという。
その他、新開発の給水経路により洗剤液をしっかり泡立たせるとともに衣類に素早く浸透させる『パワフル泡浸透』や、タテとヨコの立体水流で衣類を撹拌して頑固な汚れを落とす『3Dパワフル洗浄』も搭載。通常の洗濯においても高い洗浄力を発揮する。
ラインアップは洗濯容量が8kg、9kg、10kg、12kg、14kgの5タイプで、14kgは業界最大容量。共働き世帯や子育て世帯をメインターゲットと想定し、大容量によるまとめ洗いとらくらくSONICでの予洗いの簡素化により、家事負担を軽減する。
洗剤・柔軟剤の自動投入機能は洗濯機の新しいトレンドとして各社で搭載しているが、その搭載機種のほとんどが洗濯乾燥機だ。全自動洗濯機での搭載機種は日立の12kgタイプとアイリスオーヤマの10kgのみである。アクアは8~12kgの5機種を揃えたことで、洗剤・柔軟剤の自動投入機能に魅力を感じているお客に対して大きなアピールとなるだろう。また、本体一体型の超音波洗浄はアクアのみで、他社差別化としては大きなポイントといえよう。
トレンド機能と独自機能の搭載でお客の選択肢が広がる
今回の新製品はハイアールとの共同開発によるもので、搭載機能やラインアップ展開も含めてアクアの“本気”が伝わる製品となっている。売り場では洗濯乾燥機をメインとして扱っているが、出荷台数でみると現在でも3割に満たない。7割以上が全自洗である。
この全自洗においてPretteシリーズは間違いなく単価アップにつながる商材だ。課題はアクアの認知度だが、同社が三洋の冷蔵庫・洗濯機事業を継承していることと、実はコインランドリーの業務用洗濯機でのアクアのシェアが約70%であることを伝えたい。
また、接客の際はらくらくSONICを引き出して使い方を示し、先述の『カンタン・キレイ・衣類を傷めない』という3つの特長を説明しよう。実際に洗剤液を満たしたデモができなくても、衣類や布地を持って左右に動かすだけという手間なしの部分は理解してもらえるはずだ。家事負担の軽減と汚れ落としという洗濯機本来の機能を兼ね備えたアクアのPretteシリーズで、洗濯機の販売実績アップを図ろう。