家電量販店の9月売上高は前年同月比60~70%台で推移 前年9月の消費税増税前の駆け込み需要が前同比に影響


コロナ禍でも他の小売業と比べて売上が比較的順調に推移してきた家電量販店。しかし、2020年9月の売上は前年同月比で大きくダウンした。これは比較対象月である2019年9月が消費税増税施行の直前の月に当たり、駆け込み需要がピークだったことによるものだ。

ケーズの9月売上高は前年同月比65.1%とダウン

ケーズホールディングス(以下、ケーズ)の月次速報による2020年9月の売上高は前年同月比65.1%。商品別で見るとテレビは同62.3%、パソコン・情報機器も同65.6%と前年同月実績を大きく下回った。白物家電の冷蔵庫は同55.2%で、洗濯機も同58.2%と6掛けに届かない実績となった。また、巣ごもり需要で販売が急増したクリーナーと調理家電もそれぞれ同66.5%、64.8%とブレーキがかかった。

2019年11月以降、前年プラスで推移してきたテレビは前年9月の売上高が前年同月比208.1%だったため、前同比は大きくダウン

各社ともケーズと同様に9月の売上は大きく落ち込んだが、この要因は周知のとおり、前年9月が消費税増税による駆け込み需要のピーク月だったためだ。

前年を振り返ると、10月から施行された消費税増税による駆け込み需要は8月から顕在化し、9月下旬にピークを迎えた。ケーズの2019年9月売上高は前年同月比160.5%と大きく伸長。この異常値ともいえる2019年9月売上との比較なので、当然のごとく各社とも実績ダウンは想定内だ。

ケーズの2019年9月の商品別売上高の前年同月比。駆け込み需要のピーク月で各商品とも前年実績が大きく伸長した

あくまで月次速報ベースだが、この9月売上を含むケーズの第2四半期売上高は前年同期比91.8%で前年実績に届かなかったが、4~9月の上期では同104.5%と前年実績をクリアしている。

エディオンの上期売上高は95.4%で前年を下回る

エディオンの9月売上高は前年同月比66.8%とケーズより若干上回ったが、第2四半期では前年同期比89.2%、上期では95.4%と前年実績を下回っている。下期で、この上期のマイナスをどれだけ取り戻せるかが課題といえよう。

POSデータによる月次速報でのケーズとエディオンの上期売上高の前年同期比。上期トータルではケーズが前年実績をクリアしているが、エディオンは前年割れとなっている

パソコンが好調だったコジマも9月売上高は前年同月比70%台に

コジマの2020年9月売上高は前年同月比70.9%。テレビは同76.2%と落ち込み、パソコンも同69.7%。白物家電の冷蔵庫は同58.4%、洗濯機も同64.0%だった。

2019年9月売上高は前年同月比159.4%と伸長しているので、2018年9月売上高を100として捉えた場合、2020年9月売上高の対2018年9月売上高は2桁増の113.0%で、中期的なスパンでの売上高は拡大しているといえるだろう。

4月以降、前年同月比で平均140%を超える伸長となっていたパソコンも9月は同60%台にダウン

低迷が続くビックカメラの9月売上高は前年同月比61.1%

ビックカメラの2020年9月売上高は前年同月比61.1%で、2020年1月以来前年同月割れは8カ月続いている。消費税増税による駆け込み需要の反動減が収まってきたところに新型コロナウイルスの感染拡大が発生し、都市型店舗を展開する同社にとっては大きなダメージとなっていることが分かる。

2019年8月下旬にオープンしたビックカメラたまプラーザ店では増税前ということもあり、まとめ買いのお客も多く来店した

情報通信機器の売上高は前年同月比68.4%と60%台であるが、音響映像や家庭電化、その他については50%台と低迷している。

POSデータによる月次速報では各社とも前年の消費税増税前の駆け込み需要が影響し、9月は大きく前年マイナスとなった

前年の2019年10月~11月は消費税の増税による駆け込み需要の反動減が影響し、売上は前年割れで推移し、12月は気温が比較的高かったため、エアコンの販売も低調だった。昨年のこのような状況が分母であるため、これからの伸長は期待できそうだ。ただし、コロナ禍でこの先の景況感が予測できず、冬の賞与を引き下げる企業が多いと予想されるため、年末商戦にどのような影響があるかは不透明だ。

各家電量販企業ともECは好調に推移しているようだが、工事や設置を伴うエアコンや冷蔵庫、洗濯機などの大型商品はやはりリアル店舗での購入が圧倒的に多い。これらの商品の成約率をいかに高め、さらに巣ごもり需要で活発化してきた調理家電やテレワーク需要のパソコンやタブレット、PC関連商品の販売にしっかりと注力して下期の売上を拡大したい。