コロナ禍での感染対策で加湿器の需要が急増 給水タンクの大容量タイプでは品切れ、品薄が続出


新型コロナウイルスの感染拡大により巣ごもり需要やテレワーク需要が顕在化。調理家電やPC、PC周辺機器の需要が伸長する中、感染対策として室内の空気や加湿が注目されている。従来、加湿ニーズが高まるのは乾燥シーズンの12~3月くらいだったが、今年は全く異なる状況となっている。

加湿器の出荷台数は4~10月で前年の1.5倍に拡大

日本電機工業会(JEMA)の自主統計によると、2019年度の単体の加湿器の出荷台数は76万台で、出荷金額は約75.5億円。これが2020年4~10月の時点で出荷台数は前年同期比154.0%の31.8万台で、出荷金額は同137.9%の約29.4億円となっている。4~10月は加湿器の需要期ではない期間にも関わらず、出荷実績は前年よりも大きく伸長した。

JEMAの民生用電気機器 国内出荷実績から加湿器の出荷台数・金額の前年同月比推移

上記は加湿器の月別出荷実績の前年同月比を時系列でグラフ化したものだ。一見して4月と7月の前年同月比が突出していることが分かる。実際の出荷台数は4月が13,000台で、7月は4,000台に過ぎないが、新型コロナウイルスの影も形もなかった前年と比べると、異常値ともいえる伸長率になっている。

JEMAの自主統計は、あくまでJEMAの会員企業による集計である。ここに含まれていないメーカーとウイルス対策としての加湿に注目が集まっていることを勘案すると市場全体での伸長率はJEMAの数値を大きく上回るのではないかと推測される。

在宅時間の伸びが加湿器の需要を底上げ

ビックカメラでは「11月上旬の期間のみで前年と比較すると、加湿器の販売金額は約2.7倍に伸びています」という。品切れや品薄の機種も多く、「発注しても入荷未定となっている機種もあります」とのことで、供給を上回る需要の急増が販売機会ロスを生み出しているようだ。

ビックカメラのECサイトでも取り寄せとなる商品が多数ある

最近のニーズとしては、テレワークで在宅時間が長くなったために給水タンクが大容量タイプを求める層と、リビング以外の部屋で作業をすることでタンク容量が小さいものでよしとする層の2極化がみられるという。「感染対策として加湿がクローズアップされていることから取り寄せではなく、すぐに欲しいというお客様が多く見られます」。

在宅時間が伸び、加湿量が多いタイプと個室使用を想定した小型タイプの両者の需要が増加

一般的に加湿器が必要となる時期は12月~翌年3月くらいまでで、メーカー各社はこの時期にピークを合わせた生産体制を整えている。需要が前倒しされ、しかも加湿器は海外生産が多く、需要急増に生産体制が対応できないために品切れとなってしまうというのが現在の状況だ。

ケーズの加湿器売上高は前年の2.6倍に伸長

ケーズホールディングスの4月~11月における加湿器の販売金額は前年同期比で2.6倍に伸長。「品切れで展示が歯抜け状態になっている店舗もあります」という。加湿機能付き空気清浄機も同様の伸長率で、単体の加湿器とは売価帯が大きく異なるため、「加湿というカテゴリーでは、加湿機能付き空気清浄機の販売金額構成比が9割程度を占めています」。

加湿機能付き空気清浄機は在庫がなく取り寄せとなっても入荷予定は年明けの2月以降というケースもある

ウイルス対策で家庭での需要が急増していることに加え、「特に大容量タンクのモデルは事業所などからの引き合いも多くなっています」とのことで、加湿器の需要急増は一般の家庭だけでなく、法人でのニーズが高まっている点も大きいようだ。これからさらに気温、湿度とも下がる時期を迎える。メーカーにはスピーディーな商品調達が求められるところだ。