家電量販店の11月売上高は引き続き好調に推移 ウイルス対策から加湿器、加湿機能付き空気清浄機が大きく伸長


POSデータによる売上高の前年同月比を月次速報として発表している家電量販企業4社の11月度速報値がまとまった。各社とも10月の速報値より伸長率はダウンしたが、十分に好調さを持続しているといえるレベルだ。3月期決算の企業では、第3四半期も残すところ3週間を切った。新型コロナウイルスの感染者が増加し、これから先の来店客の減少が想定される中、より成約率アップに注力したい。

ケーズの11月売上高は前年の1.3倍で20年4~11月は前年2桁増

ケーズホールディングスの月次速報による11月の売上高は前年同月比134.6%。10月の同146.7%には及ばなかったが、非常に高いレベルで好調さをキープしていることが分かる。10~11月の第3四半期累計では前年同期比139.9%で前年の1.4倍、4~11月の前年同期比では110.8%と2桁増で推移している。

商品別で見ると、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、クリーナーの売上高がいずれも前年同月比150%台となっている。調理家電は同130%台で、理美容・健康家電とエアコンもほぼ同130%に近い状況だ。

パソコン・情報機器は同114.5%。伸長率は10月の同155.7%から縮小した。しかし、これは2019年の10月が前年割れだったのに対し、2019年11月は前年同月比115.8%と伸長したことが要因といえよう。

ケーズホールディングスのパソコン・情報機器売上高は上期で前年同期比125.3%、年度累計でも同126.5%と伸長

エディオンの11月売上高は前年同月比119.6%。10月の同127.4%から伸長率はダウンしたが、これはケーズホールディングスと同様の理由だ。一昨年からの伸長率としてみると10月は103.3%、11月は108.1%と伸びていることが分かる。

コジマのパソコンは好調に推移し、前年同月比128.3%

コジマの11月売上高は前年同月比135.0%。同社の決算期は8月のため、9~11月は第1四半期に当たり、前年同期比は106.5%となっている。商品別ではスマートフォンの新商品が相次いで発売されたことと、前年の11月売上高が大きく落ち込んでいた反動から携帯電話は同171.0%と伸長した。

コジマの11月の携帯電話売上高は前年同月比1.7倍に拡大。前年11月の同63.7%の反動だが、一昨年比でも108.9%と売上規模は拡大している

テレビは前年同月比142.9%。アナログ停波からの買い替えと巣ごもり需要という2つの需要で、大画面テレビが伸びた。パソコンは同128.3%で、2019年11月も107.5%と伸長しており、テレワーク需要が継続していることもあって好調さを維持している。

ビックカメラの11月売上高は前年同月比104.4%。2019年11月は同95.0%で、2018年11月売上高に対する2020年11月の伸長率は99.2%となり、売上規模は縮小。このところ同社の売上高は、この傾向が続いている。9~11月の第1四半期は前年同期比88.1%と厳しい状況で、月次と同様に四半期でも一昨年比で95.3%となっている。

品目別では音響映像商品が前年同月比94.0%で、第1四半期は前年同期比81.5%。テレビは好調に推移しているが、デジタルカメラやオーディオが低調だった。家庭電化商品は前年同月比106.3%で、冷蔵庫や洗濯機、エアコンが好調だったが、調理家電や理美容が低調だったという。他社は調理家電が好調に推移しており、ターミナル立地ゆえのコロナ禍の影響が表れているといえよう。

デジタルカメラは市場全体が縮小基調で、ビックカメラは2011年1月11日に池袋東口カメラ館を閉店すると発表した

情報通信機器商品は前年同月比147.5%で、第1四半期でも前年同期比109.3%と前年を上回った。この情報通信機器は前年の第1四半期が109.1%で、他の品目とは異なり、一昨年からの推移をみても売上規模は拡大していることが分かる。

10月に続き、全社とも前年実績はクリアしたが、やや格差が開いた感がある

加湿器の購入理由はウイルス・インフルエンザ対策

本サイトでも記事をアップ(12月4日)したが、コロナウイルス対策という観点で室内の加湿に注目が集まり、加湿器と加湿機能付き空気清浄機の売り上げが前年よりも大きく伸びている。

ダイニチ工業が実施した『加湿器を購入した理由』のユーザーアンケートによると、2019年度までの購入理由1位は「乾燥でのどが痛む」だった。しかし、11月30日時点の回答で1位になったのは「ウイルス・インフルエンザ対策」だった。

ウイルス対策として加湿器を使用することは消費者にも広く認知されている

加湿器は店頭で在庫切れになっている製品も数多くみられる。ダイニチ工業では「加湿器は年間の需要に合わせて生産をしています。しかし、供給を上回る需要が急増しており、9月から増産体制に入っています。当社は国内生産のため、お客様のニーズにしっかり応えようとラインの人員も大幅に増やして生産に注力しているところです」という。

コロナ禍でお客のニーズがどのように変化するかを予測し、先回りで対応していくことが今、販売サイドには求められている。