延長保証をマーケティングとブランディングに活かす テックマークジャパンが提唱する延長保証制度の有効活用
日本の延長制度は使用実態に基づいて設定
テックマークジャパンは、前身となる英国のテックマーク・サービセズ・リミテッドの日本支店として1994年に営業をスタート。翌年には家電と情報通信機器の延長修理保証制度を開発して運営を開始した。2008年に現在のテックマークジャパンとして日本法人を設立し、各種の製品や特定用途向けに延長保証制度のビジネスを展開している。
同社代表取締役社長の将積保博氏は生命保険会社からメディカル関連事業ベンチャーを経て、2007年から同社の代表取締役に就任した。将積氏は就任当時を振り返って「延長保証は、海外ではプッシュ型のセールスとして販売されており、ビジネスとして確立されていました。しかし、当時の日本で延長保証ビジネスは現在のスタートアップと変わらないような状況でした」と回顧する。
延長保証はメーカー保証期間終了後に適用される。長期間使用すれば、それだけ故障のリスクが高くなるのは言うまでもない。そのため、欧米での延長保証期間は5年以内が多いという。家電は製品によって買い替えサイクルが異なり、エアコンや冷蔵庫などの平均使用年数は12年以上である。日本ではこの使用実態を踏まえた消費者視点から欧米と比べて保証期間が長くなっているのが特徴で、家電製品を中心として保証引受件数は右肩上がりで推移している。
他社差別化と顧客接点強化から異業種でも導入が拡大
耐久消費財である家電製品では馴染みがある延長保証制度だが、このところ新たに導入する業種が増えているという。将積氏は、楽器販売店やメガネ販売店が自社で販売する電子ピアノやメガネに延長保証を付与したケースを事例として挙げる。
大手の楽器販売店A社は2017年から電子ピアノの延長保証制度を導入。その目的は、アフターサービスに対するニーズに応えるとともに、販売台数が横ばいの状況を新たな付加価値付与でブレークスルーするというもの。導入側のメリットとしては、延長保証の販売手数料による収益アップとアフターサービス強化による顧客満足度の向上だ。
「電子ピアノは主にお子さんが使うため、飲み物をこぼしたり、ピアノの上に物を落としたりということが考えられます。このようなトラブルに対応するとともに、アフターサービスで他社と差別化できるというのも延長保証導入の背景にあります」(将積氏)
大手のメガネ販売店B社は2019年から自社で販売するメガネに延長保証制度を導入した。その目的は顧客の囲い込みと他社差別化。さらには買い替えの促進もある。保証期間が延長されると、なぜ買い替え促進につながるのか。それは保証期間終了を告知することで、顧客は『保証期間が終わったから、そろそろ買い替えないと…』と考えるようになる。この意識が買い替えのタイミングを早めるというわけだ。
導入側のメリットは、収益源の多様化と自社での修理費用リスク低減など。将積氏は「実は、メガネの延長保証はアメリカで大成功しています。その理由は単に壊れたら保証するということだけでなく、メンテナンスや視力チェックなどのアフターサービスも網羅していますので、店とお客との接触頻度が増え、顧客の固定化につながっているからです」と述べる。
これらは販売店のケースだが、法人向け機器メーカーが自社の取り扱い製品に対して、延長保証制度を導入するケースもある。
法人向け機器メーカーC社は2019年から延長保証制度を導入。その目的は保守契約費による収益アップとメンテナンスによる安心と安全の同時提供、顧客との接点強化だ。導入側のメリットは、収益アップと定期メンテナンスによる故障の防止、そして先述のメガネ店と同じく買い替えの促進である。
このように延長保証制度の導入は業種や製品を問わず広がりを見せている。家電製品の延長保証は非常に早い時期から家電量販企業各社で採用されており、同社の調べによると生活家電やAV家電での加入率は30%を超えているという。しかし、いまだに延長保証は、アフターサービスの一つとして捉えられている傾向がある。これに対して将積氏は「延長保証をマーケティング手法の一つとして捉えると、自社のブランド・ロイヤルティの向上に活かすことができます」と説く。
新規客の拡大よりも既存客の維持が効率改善につながる
マーケティングや経営戦略で用いられる『1:5の法則』、『5:25の法則』というものがある。前者は、“新規客を獲得するコストは、既存客を維持するコストの5倍かかる”。後者は、“顧客離れを5%改善すれば利益が25%改善される”というものだ。
この法則が意味するところは、新規客の獲得に奔走するのではなく、自社・自店の顧客維持に努めるのが経費や経営の面からみると効率的であるということだ。家電量販店では、さまざまなサービスを提供し、顧客の固定化を図っている。ポイント還元による会員化はその最たるもので、アプリでの通知やクーポンの発行などもそうだし、接客応対でのコンサルティングもそうだ。
何度となくこれらのサービス提供を受け、店舗に対する満足度が高くなると、購入を検討する商品があった場合は真っ先にその店舗に行く。商圏内に競合店があってもだ。この状態を店舗のブランド・ロイヤルティが向上したといい、顧客ロイヤルティの向上と言い換えることができる。
長期間の使用でも修理費用の負担低減が可能
購入した家電製品はできるだけ長く使いたいと誰もが考える。特に高額商品なら、その思いは強い。しかし、一方で家電製品は壊れるものとも考えている。だから、安心して長く使いたいというニーズに対して延長保証の加入がオススメなのだ。
メーカー保証は自動的に付与されるが、さらに保証をつける場合はプラスαの出費が必要だ(メーカー保証の終了後、予め商品に延長保証を付与されているパターンもあり)。延長保証は無料のメーカー保証と比べて保証の内容が充実しており、それだけお客のメリットは大きい。保証期間を過ぎて故障した場合は有償の修理となり、その修理にかかる費用はお客が想定する金額を超えるのが実情だ。このようなケースでも延長保証に加入していれば、お客の費用負担は大きく軽減される。
接客ではステップを踏んで延長保証制度を提案
お客が購入を決めた直後に故障や修理の話をするのは、簡単ではない。成約後の高揚感に水を差すことになりかねないからだ。これに対しては接客でのストーリーを工夫することで無理なく修理の話につなげられる。店頭での接客では、購入後の使い方やメンテナンスなどについて、あまり説明していないように見受けられる。そこで、長く使ってもらうためには、と伝えて正しい使い方やメンテナンスの注意点などを説明しよう。
いくら気をつけて使用しても経年劣化や故障を100%防止することはできない。メーカー保証期間が買い替えサイクルに対して非常に短いスパンであることを伝え、それから延長保証の説明に移る。その際に大事なのは、購入した商品をできるだけ長く使ってほしいという気持ちを持って説明することだ。
成約後にいきなり延長保証への加入を勧めるのではなく、長く使ってもらうための注意点などを説明し、それでも故障することはある、だから延長保証、とステップを踏むことによってお客が納得しやすい心理状況を作ることができる。また、接客の際に丁寧な説明をし、購入後のメンテナンスなどについて話すことで店舗への心証は確実によくなる。つまり、ブランド・ロイヤルティがアップするのだ。
保証終了の告知で買い替え意欲を促進
延長保証の設定期間が終了すれば、その時点でお客との契約は切れる。そこで、店舗が行うべきは、お客に対して保証期間の終了を通知すること。この保証期間終了によって顧客は購入後、長期間使用したことを改めて知り、買い替えを意識するようになる。できれば、そこで最新モデルの紹介とともにクーポンの発行や特典なども合わせて提供することで、顧客の買い替えを促進できる。
保証期間は最大でも10年で、終了を通知する10年後まで購入客に対するアプローチができないと考えがちだ。しかし、一般家庭が所有している家電製品全体を想定すると、製品によって購入時期や保証期間はそれぞれ異なり、10年間のうちに保証期間終了を伝える機会は数多くあるのだ。従って、延長保証に加入している商品が多くなればなるほど顧客接点は増え、顧客ロイヤルティのアップも期待できる。
言うは易く行うは難しという面はある。自店の顧客1人1人を管理するためには社内のインフラ整備も必要となる。しかし、人口や世帯構成人員が減少し、高齢化が進む中で新規顧客の拡大には限界がある。であれば、既存客のライフタイムバリューを増大させることが重要。その顧客固定化に延長保証が武器となる。
将積氏は「ニューノーマル下で在宅時間が長くなるため、自宅で使用する家電商品は増加すると思われます。利用頻度が高く、長期間の使用を想定した商品のニーズが特に高くなるということは、それだけ延長保証に対するニーズも高くなると考えられます」という。今後は不特定多数を対象としたマス・マーケティングから特定顧客に対するワントゥワン・マーケティングへのシフトが重視されていくだろう。延長保証をマーケティングのツールとして捉え、顧客ロイヤルティのアップを図ろう。
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