三菱電機が注意喚起 除菌スプレーがエアコンの故障原因になる!?


三菱電機霧ヶ峰PR事務局は、除菌スプレーをエアコンの稼働中に使用したり、エアコンに直接吹きかけることで、エアコンの故障の原因になる恐れがあると注意喚起した。新型コロナの流行で消費者が除菌に敏感になっているだけに、店頭でも注意を呼び掛けたい。

除菌スプレーが原因となる故障とは?

除菌スプレーがエアコンの故障原因になるのは、除菌スプレーに含まれる成分によっては、重要な金属部品が化学的作用によって劣化や損傷、腐食させることがあるためだ。それによって引き起こされるトラブルについて、三菱電機では次の3つを挙げる。

1.電子基板が故障して運転できなくなることがある
2.室温を検出する等のセンサー部が故障して、正常な運転ができなくなることがある
3.熱交換器に「アリの巣状腐食」が起こり、「冷えない」「暖まらない」などの症状が起きることがある(異なる腐食形態も存在する)

特に手強いのが「アリの巣状腐食」で、三菱電機の調査によれば、ここ数年でアリの巣状腐食が原因と疑われる熱交換器の交換発生件数が増加傾向にあり、2015年度比で55%も増えているという。

「アリの巣状腐食」が原因と疑われる熱交換器の交換発生件数の推移(三菱電機調べ)

エアコンの効きが悪くなる「アリの巣状腐食」

「アリの巣状腐食」は、熱交換器の冷媒配管が腐食する現象で、腐食した熱交換器の冷媒配管の断面が、アリの巣の断面図と似ていることからこう呼ばれている。

配管に微細な穴ができることで熱を運ぶ冷媒ガスが漏れ、「冷えない」「暖まらない」などの症状が起きる。冷暖房の効きが悪くなれば設定温度になるまでに時間が掛かり、そのぶん電気代が余計に掛かる。修理するにも熱交換器は主要部品のため費用も高額になり、場合によっては買い替えたほうが安くつくことになって、それだけ製品寿命が短くなる。

熱交換器に発生するアリの巣状腐食
正常な冷媒配管と「アリの巣状腐食」で貫通してしまった冷媒配管の拡大図

三菱電機では「アリの巣状腐食」を予防するためには、「エアコンに除菌スプレーを直接吹きかけない」「なるべくエアコンの運転中に除菌スプレーを使用しない」の2点を掲げる。

特にエアコン内部に目掛けて直接吹き掛けると、除菌スプレーに含まれているギ酸や酢酸などの高濃度の成分が冷媒配管に付着してリスクが高まるという。また、運転中の除菌スプレーの噴霧は、直接吹き掛けるより低濃度とはいえ、吸い込んだ成分が熱交換器に付着するリスクは残る。このため、除菌スプレーを室内に噴霧する場合は、エアコンを停止しての使用を推奨している。

なお、除菌スプレーの成分以外にも、化粧品や香水、殺虫剤などの成分も、「アリの巣状腐食」の原因になる。

エアコンの運転中の室内で除菌スプレーを噴霧しない

「アリの巣状腐食」のチェックと、吹き掛けてしまった場合の対処方法

「アリの巣状腐食」は冷媒配管に腐食を促す成分が付着してすぐに発生するものではなく、付着してから症状が発生するまでだいたい3~7年ほど掛かる。接客中にお客に伝える場合は、除菌スプレーを噴霧したらすぐに壊れるものと誤解させないよう気を付けてほしい。

時間が掛かるとはいえ、放置すると怖い「アリの巣状腐食」。いま使っているエアコンで発生していないか確かめる方法や、うっかり吹き掛けてしまった場合の対処方法もある。

「アリの巣状腐食」による冷媒ガス漏れが発生していないかチェックするには、エアコンの効き具合を点検すると良い。

点検する際は、4つの手順を取る。

最初にフィルターをお手入れする。次に「ピークカット」の設定をオフにする。ピークカットは最大電流を約25%抑えた運転を行う機能で、点検が終われば設定を戻して良い。続いて風速を「自動」または「強」に設定する。最後に、設定温度を暖房なら上限、冷房なら下限まで設定して効き具合を確認する。ちゃんと温かい風や冷たい風が出ていれば正常だ。

エアコンの「アリの巣状腐食」がないかチェックする方法

もしエアコンに直接除菌スプレーを掛けてしまった場合は、冷房シーズンに窓を開けて1時間程度冷房運転してみると良い。熱交換器に付着した成分が結露水に溶け込んで洗い流せる。

屋外が80%以上の高湿度のときにこの作業を行うと、室内機に付いた露がしたたり落ちて、家財や床などを濡らすことがあるため、湿度の低い晴れた日に行うか、室内機の下にビニールシートなどを設置して防水対策を施すこと。

なお、消費者が自分で室内機の洗浄をしないよう、注意も呼び掛けたい。誤った洗浄剤を使用や、誤った洗浄方法は、樹脂部分の破損や水漏れの原因になるほか、洗浄剤が電機部品やモーターに掛かると、故障や発煙・発火の原因にもなる。

自己点検してエアコンの効きが悪そうな場合は、購入した店舗かメーカーの修理窓口に相談するよう誘導してほしい。

三菱電機の調査によれば、コロナ禍を背景に室内での除菌スプレーを散布する機会が増えた人は80.3%にのぼる。エアコンを稼働させた状態で除菌スプレーを噴霧した経験のある人は64.5%、直接吹き掛けたことがある人は17.5%という。

室内の衛生環境を維持するのは非常に重要だが、医薬品に用法・用量の注意があるように、除菌スプレーにもエアコンを稼働する部屋では使用上の注意がある。エアコン売り場での接客トークのネタの1つとして織り込んでみてはいかがだろうか。