パナソニックが濃度100倍の新しいナノイーXを発表、加湿空気清浄機に搭載


街を歩く人のほとんどがマスクを着用している光景が一般化し、家庭や公共施設、交通機関などでの空気を気にする人もかなり増えた。そんな中、パナソニックは「ナノイー」の発生濃度を飛躍的に高めた新しいナノイーXを発表し、空気清浄機市場で存在感をさらに高めようとしている。

初代と比べ100倍ものOHラジカル量を放出!

パナソニックは8月2日、生成するOHラジカル量を劇的に向上した新しい「ナノイーX」と、それを搭載する加湿空気清浄機「F-VXU90」の発表会をオンラインで開催した。

近年、新型コロナウイルスの影響で、巣ごもりや在宅ワークといった生活様式に変化が出てきた。パナソニックの調べによると、空気の質に対するニーズも拡大し、家の中は特に空気の良し悪しが気になっており、車内や病院、公共交通機関などの公共空間、移動空間の空気を気にする人が増えているという。

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家庭内だけでなく公共空間や移動空間でも、清潔な空気を求める人が増えている

パナソニックではこのようなニーズを背景に、ナノイーやナノイーXの発生装置を搭載する製品群の強化を図っていく。

現在、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの白物家電や、浴室換気乾燥機、温水洗浄便座などの住宅設備向け34製品に、空気の質を改善するナノイーやナノイーXの発生装置を搭載している。自動車は海外メーカーも含めて8社96車種、電車は全国の鉄道会社11社の路線で搭載されているという。

ナノイーデバイス搭載製品の生産台数は現在約850万台で、イオン発生装置搭載製品の市場におけるナノイーデバイス搭載製品の年間出荷台数はトップシェアとのことである。今後は公共施設や商業施設などへの導入も進め、さらに欧州や中国、ASEANなどの海外展開も強化していくことで、2025年度には年間1500万台に倍増したい考えだ。

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パナソニックはナノイーデバイスの生産台数を2025年度までにほぼ倍の数値まで引き上げる計画だ

今回新たに発表となった新しいナノイーXは、2009年に登場した初代ナノイーの100倍となる48兆個/秒のペースでOHラジカルを生成する。パナソニックは2016年にOHラジカル量がナノイーの10倍の4兆8000億個/秒で生成するナノイーXをリリースし、2019年にはOHラジカル量が20倍の「高濃度のナノイーX」に進化。18年目にして100倍の量を実現したことになる。

ナノイーではOHラジカルをコロナ放電で生成していたが、2016年のナノイーXではマルチリーダ放電を採用し、生成量を10倍にした。2021年の新しいナノイーXでは山形大学の東山名誉教授と共同開発でラウンドリーダ放電を取り入れることで、放電方法をさらに進化させて100倍にしたという。

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パナソニックではナノイー生成の放電技術の進化を、点での生成から線での生成になり、今回は面での生成になったと説明する

新しいナノイーXでは3つの効果が大きく向上

新しいナノイーXでは、空気中のナノイー濃度が劇的に増したことにより、「花粉・アレル物質に対する抑制速度」「脱臭の速度」「カビを抑制する速度」の3つが大きく向上したと説明している。

スギ花粉を99%以上抑制するまでの時間を計測したテストでは、従来のナノイーXが約24時間かかっていたところ、8分の1の約3時間で達成。加齢臭などの世代臭の脱臭時間を計測するテストでは、臭気強度差1以上で臭気強度2.5以下の臭いを、従来のナノイーXが約120分かかっていたところ、8分の1の約15分に短縮。さらに所定時間ナノイーが充満した空間でカビ菌を抑制するテストでは、ナノイーが8時間で抑制するところ、新しいナノイーXは4分の1の約2時間だったという。

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スギ花粉の抑制試験では、ナノイーXの8分の1の時間で抑制に成功
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加齢臭の脱臭試験においても、ナノイーXの8分の1の時間で脱臭した
カビ菌の抑制試験では、ナノイーの4分の1の時間で抑制

特にスギ花粉の分解については、花粉のアレル物質が外殻に付着しているクリジェー1(Cryj1)と、内部の細胞質に含まれているクリジェー2(Cryj2)の2種類があり、新しいナノイーXでは外殻を破壊して内部のクリジェー2までしっかり分解するとのことだ。

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新しいナノイーXは花粉の芯が含むアレル物質まで分解する

パナソニックでは新しいナノイーXの登場に伴い、グレードに応じた表示を採用する。従来は「ナノイー」「ナノイーX」「高濃度ナノイーX」と表記してきたが、今後はそれぞれ「ナノイー」「nanoeX 4.8兆」「nanoeX 9.6兆」とし、新たに「nanoeX 48兆」を加えて、4グレードとなる。

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新しいグレード表示と、1秒間に発生するOHラジカルの量をまとめた表

nanoeX 48兆を搭載する最初の家電は加湿空気清浄機

パナソニックによれば、国内空気清浄機市場は空気の質への意識の高まりから、毎年200万台超の安定需要が見込まれる。2020年度は新型コロナの流行の影響で前年比177%となる358.6万台と大きく伸びた。

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空気清浄機市場の総需要推移

パナソニックが調べた空気清浄機の購入目的は花粉対策、ハウスダスト対策、浮遊ウイルス対策が上位3位を占め、購入時の重視ポイントでは、イオン発生機能や花粉の除去性能が上位に挙げられた。

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空気清浄機の購入目的と購入時の重視ポイント

新しいナノイーX「nanoeX 48兆」を搭載する新製品として、パナソニックが最初に投入するのは、市場ニーズに最もマッチする加湿空気清浄機だ。

ラインアップ中、搭載するのは適用床面積が40畳(66㎡)までの最上位モデル「F-VXU90」のみ。ナノイーの効果が過去最強であることは、最上位のプレミアムモデルに相応しい訴求ポイントの1つといえよう。

発売は9月21日で、市場想定価格は107,000円前後。本体カラーは木目調(-TM)とホワイト(-W)の2色展開だ。

F-VXU90-TM(左)と-W(右)。空間への収まりを考えて直線を基調としたデザインになっている。

なお、同時期発売の適用床面積31畳までの「F-VXU70」は「nanoeX 9.6兆」グレードで、25畳までの「F-VXU55」と18畳までの「F-VXU40」、および27畳までの空気清浄機「F-PXU60」は「ナノイー」グレードとなっている。

F-VXU90では、「パナソニックだけの花粉撃退テクノロジー」を製品のコンセプトに掲げ、新搭載の「nanoeX 48兆」と、従来モデル「F-VXT90」からの継続機能である「3Dフロー花粉撃退気流」を商品の目玉機能とする。

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F-VXU90の特長

3Dフロー花粉撃退気流は、花粉が浮遊しやすい床上30cmのゾーンの空気を重点的に清浄する機能。3方向に吹き出す立体的な気流が部屋全体を効率よく循環し、本体下部の吸込口から重たい花粉をしっかり吸引する。

2枚のルーバーで実現する3Dフロールーバーにより、室内の空気を3方向から立体的に集めて、空気中の不純物を取り除く

従来モデルから好評のスマートフォンアプリ「ミルエア」対応も継続採用となる。ミルエアはAndroid OS 6.0以上、iOS 11.1.0以上に対応するスマホ専用アプリで、パナソニックのエアコン「エオリア」と連携。暖房時に自動的に連動して加湿運転をし、室内の乾燥を防ぐ。

部屋の空気の状態や稼動ログのグラフ表示、お手入れ時期のお知らせ、運転の開始や停止などの遠隔操作が可能なほか、自分だけの運転モードである「わたし流運転」を設定して、理想の空気環境が作れる。

ミルエアを使用するとスマートフォン上から、各種のステータス表示や遠隔操作が行える

F-VXU90のハードウェアスペックは「nanoeX 48兆」対応以外、従来モデルであるF-VXT90と基本的には同じだ。そのため、販売員が新たに覚えることは、「nanoeX 48兆」の特長のみと言っても過言ではない。

店頭では過去最強の高濃度なナノイーを室内に素早く充満できることで、花粉やアレル物質が迅速に取り除けるようになったと素直にアピールするのが良いだろう。

ただし、今回から導入されたナノイーのグレード表記は、必ずしも分かりやすいとは言い難い。一般の消費者にとって「兆」という単位は決して身近なものではなく、4800億個と48兆個を数の違いで訴えてもピンと来る人はそんなに多くないはずだ。

上質な空気環境が得られるという魅力を伝えるために、テスト結果のグラフをPOPにして掲示したり、販売員のトークに織り交ぜたりすることになるわけだが、売り場ではこの大きすぎる非日常的な数字は、あまり前面に出す必要はないのではないかと思う。「最上位グレードなら、室内の花粉を3時間でほぼすべて取り除ける」のほうがイメージしやすい。

売り場ではF-VXU90はシリーズ最高性能で、もっとも空気の質を高められる製品として上手にアピールしてほしい。

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F-VXU90の設置イメージ
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F-VXU90の主な仕様