テレビの省エネラベルが改正され、5段階から41段階の多段階評価に


高付加価値商品の販売は家電流通にとって非常に重要な課題である。ひとことで高付加価値といってもカテゴリーによって付加価値となる機能や特長は異なる。だが、全般的に共通しているのは高い省エネ性能。その省エネ性能を分かりやすく可視化したのが省エネラベルだ。このほど経済産業省ではテレビの省エネラベルの表示を改正し、公布した。新しくなる省エネラベルでは現行の5段階評価から41段階に移行し、対象区分も現在の64区分から4区分に大きく変わっている。

小売事業者表示制度改正でテレビの統一省エネラベルが変わる

8月31日、経済産業省は、小売事業者表示制度の改正に関する経済産業大臣告示を公布した。これによってテレビの省エネラベルは改正され、小売業者は2023年3月末までに現行のラベルから改正後のラベルに変えることが求められることになる。

今回の省エネラベルの改正は突然決まったわけではない。ラベル改正の前にトップランナー方式による省エネの目標基準値(=年間消費電力量・kWh/年)や基準算定式、基準達成目標年度、測定方法などの改定や変更を経て、その結果が省エネラベルの改正に反映されたのである。

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省エネ目標基準値の設定は上記の各段階を経て決定された。経済産業省の資料より

現行の省エネ目標基準値は10年以上前の製品がベース

まず、現行の目標基準値等をおさらいしよう。テレビの省エネ目標基準値は2008年度を基準年度として決定され、達成目標年度は2012年度。トップランナー制度での区分は画面サイズと画素数、動画表示速度、付加機能の4つの要素を組み合わせて64区分に分かれている。

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現行の省エネ基準は2008年度に出荷されていた製品をもとに策定されている。経済産業省の資料より

現行の達成目標年度からすでに10年近くが経過している。さらに区分要素の画面サイズは19V型未満と19V~32V型未満、32V型以上の3つで、現在の市場に流通している画面サイズとは全くそぐわない分け方になっている。画素数もフルHD未満と以上で、当然のことながら4Kや8Kは想定されていない。

このようなことから新たにテレビの区分も含めて省エネ目標基準値や達成目標年度を見直すこととなったのだ。ちなみにエアコンの達成目標年度は2010年度で、現在見直しが進められており、テレビと同様に改正される予定となっている。

2019年から目標基準値等の見直し審議がスタート

経済産業省で行われた見直しの経緯は次のとおりだ。2019年から有識者によるテレビジョン受信機判断基準ワーキンググループが審議を開始し、2021年1月に区分や目標基準値、達成目標年度などを審議。2月に報告書としてとりまとめ、5月14日に省令および告示として公布・施行。

一方、小売事業者表示制度は、2021年2月および3月に開催された小売事業者表示判断基準ワーキンググループで審議され、3月に報告書としてとりまとめられた。これらの内容を踏まえ、6月24日から7月23日まで省エネラベルを含む小売事業者表示制度の改正に伴うパブリックコメントを募集し、冒頭のとおり、8月31日に省エネラベルの改正も公布となった。

新たな目標基準値の対象は液晶テレビと有機ELテレビの2分類で、10V型以下の製品は対象外。液晶テレビは画素数が2K未満と2K以上4K未満、4K以上の3区分に分けられ、有機ELテレビは4K未満がないことから一本化され、合計4区分となった。

現行の64区分から大きな変化だが、審議を開始した2019年の時点で64区分のうち、該当する製品は14区分しかなく、実状に沿っていなかったと経済産業省の担当者は振り返っていう。

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対象となっているのは液晶テレビ3区分と有機ELテレビ1区分の合計4区分。液晶は画素数で分かれているが、8Kは液晶テレビの4K以上に含まれている。経済産業省の資料より

画面サイズは区分ではなく目標基準値の算出式に組み込む

テレビは大画面化が進んでいるが、数多くの32V型モデルも販売されている。区分分けの要素の一つである画面サイズは、省エネの目標基準値に反映されていないのだろうかとの疑問を持ったとしても不思議ではない。実際には、目標基準値の算定式に画面面積(=画面サイズ)が反映されているのだ。

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液晶テレビは20V型未満から80V型超まであり、大画面になるほど消費電力量も増える

例を挙げてみよう。トップランナー制度における液晶4K以上の区分の目標基準値を算定する式は、0.00728×画面面積(cm2)+62.99。40V型の画面面積を4,411cm2とすると、目標基準値は95kWh/年となる。50V型では113kWh/年、60v型は135kWh/年となり、画面サイズは目標基準値に反映されているのだ。

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目標基準値の算出式。有機ELテレビで40V型未満のサイズの目標基準値は75kWh/年に固定されている。経済産業省の資料より

現行区分の要素に付加機能がある。これはダブルデジタルチューナーと録画用DVD、ハードディスク、ブルーレイが一体型として搭載された機能のこと。この付加機能も現状に合わせて9つの要素に変更され、目標基準の達成判定の特例として反映されている。

省エネ基準値の達成目標年度は5年先の2026年度となった。この目標年度については現在のテレビの開発期間が約3年周期で、目標年度までに少なくともモデルチェンジの機会が1回は得られることを考慮して決められたという。

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テレビの商品開発期間を3年とすると、今年の早々から開発期間に入った製品の販売は2004年となることから5年先の目標年度が設定された

ここまでは、メーカーサイドの製品開発に関係する事案で、直接、流通サイドの対応が必要となるものではない。関係してくるのは、小売事業者表示制度で努力義務として表示が求められている統一省エネラベルやミニラベルである。

テレビの多段階評価は冷蔵庫と同じ41段階評価に

現行の省エネラベルは多段階評価(★の数)、省エネ性マーク、目標年度、省エネ基準達成率、年間消費電力量、1年間使用した場合の目安電気料金を省エネ情報として表示している。改正後、省エネ基準達成率と年間消費電力量、目安電気料金は改正された測定方法に沿って新たに算出される。目標年度は2026年度となり、省エネ性マークの色分けは現行と同じだ。

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現行のテレビの統一省エネラベルと省エネ基準達成率による5段階評価。経済産業省・省エネ性能カタログより

大きく変わるのは、現行で5つの★によって表示されている多段階評価だ。改正される省エネラベルでは、この5段階評価が41段階評価に変更となり、昨年改正された冷蔵庫と同様のスタイルになる。★の数は現行と同じ5つで表示されるが、1.0から5.0まで0.1刻みの評価点を記載し、これに合致する形で★が塗りつぶされる仕様となる。

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改正後は5.0を最大値とした41段階評価に移行。★の細かな塗りつぶしは難しく、パッと見の印象を重視し、評価の小数点以下とはイコールではない。経済産業省の資料より

新ラベルへの入れ替え期限は2023年3月末日

省エネラベルが改正されたといっても、新しい様式に替えるには時間がかかる。メーカーサイドでもすぐに全商品対応できるわけではない。そのため、施行は本年10月1日だが、新しい省エネラベルに切り替えるまでの猶予期間が設けられている。その期限は2023年3月末日。同年の4月1日からは新しい省エネラベルしか使用できなくなる。

テレビはエアコンや冷蔵庫と比べて、決して消費電力量が大きい製品ではない。また、生活家電や季節家電と異なり、省エネが購入の選定基準となるケースもほとんどないだろう。だが、日本はもともと資源の乏しい国だ。さらにCO2の排出に起因する地球温暖化という問題もある。省エネの推進は商品カテゴリーに関係なく、横断的に必要となっているのだ。

技術の進歩によってテレビの表示性能は10年前と比較できないほど高くなっている。同等クラスのテレビに映し出された映像の違いを識別できる消費者は少ないのではないだろうか。だからこそ、今は省エネ性能が購入の決め手にはなっていないが、これから先も決め手にならない保証はない。

生活家電や季節家電では当たり前の省エネ訴求がテレビでも活用できるかもしれない。今回の省エネラベル改正を機に、これまでは見過ごしがちであったテレビの省エネについても改めて考えてみよう。