日本のコーヒー業界を90年間リードしてきたUCCのプライド
UCCグループでカプセル式一杯抽出コーヒーシステム事業を担う、SOLOフレッシュコーヒーシステムの代表取締役社長・柳原優樹氏は、冒頭の挨拶に立ち、ドリップポッド DP3(以下、DP3)の開発に掛ける思いについて次のように語った。
「コーヒーは農産品のため、収穫時には品質にばらつきが出ます。UCCでは買付の段階で品質を厳しくチェックし、正しく焙煎し、粉砕して製品化することで、高品質なコーヒーを提供しています。しかし、家庭での抽出にはアドバイスしかできません。このお客様任せのラストワンマイルで味が落ちてしまうのを避けたい。その思いで開発しました」(柳原氏)
柳原氏の言う、顧客任せで味が落ちる部分とは、ハンドドリップの際にお湯をゆっくり淹れてじっくり蒸らすべきところをジャバジャバと注いだり、カップ分の量の豆でマグカップいっぱいに淹れたりといったことを指す。
このラストワンマイルをいかに保証するか、柳原氏はDP3の完成度の高さに自信を示しながら、「90年の歴史を誇るUCCの情熱とプライドを感じて欲しい」と述べた。
続いて、ジャパンブリューワーズカップ2015準優勝の経歴などを持つ、UCCコーヒーアカデミー専任講師の村田美穂さんが、美味しいコーヒーを淹れるポイントを整理しながら、プロのハンドドリップ・テクニックを披露した。
美味しいコーヒーを淹れるには、大きく「コーヒー豆の品質」「抽出技術」の2つが関わる。このうち抽出技術は、「鮮度」「計量」「蒸らし」「抽出速度」「ドリッパーの形状」などが重要になる。
たとえば、蒸らしは粉全体にお湯を掛けることで豆の中のガスを抜く。ガスが残ったまま淹れると、美味しさが十分に引き出されないため蒸らしは重要な工程だ。そして、新鮮な豆ほどガスが出るのでドリッパーの中でドームのように膨らむ。
また、お湯を注ぐ時も粉目に対して直角にゆっくり注ぐと良い。ドリッパーは円錐形状のほうがクリアに抽出できる。
ドリップポッドはこうしたプロの抽出テクニックが設計思想になっている。
抽出モードを3種類から選べる
最新のDP3では、この設計思想を推し進め、抽出時に蒸らし時間をより長く、注湯速度を下げて細く注ぐことで、香り高い濃いめのコーヒーが淹れられる「ストロングモード」や、アイスコーヒーに丁度よく淹れる「アイスモード」を新搭載した。
通常、コーヒーの抽出に時間を掛けて濃く淹れると雑味が出るが、数ml/秒単位の調整により、雑味を最小限に抑えるよう工夫を凝らしている。
DP3の開発に当たっては、従来モデル「DP2」のユーザーからの声を大いに参考にしたという。コンシューマー営業部の小牧美沙担当課長は、「ミルクを入れるときには濃くしたいので湯量を少なめに調整したい」「氷をたっぷりいれたタンブラーに2杯分抽出して、アイスコーヒーにしている」といった、ユーザーの声がヒントになったと述べ、抽出モードの追加だけでなく、湯量を70~200mlで調整する機能も新たに搭載したとする。
また、小牧課長はカプセルの開発にもこだわりを持っていると強調する。
「豆は国内の焙煎工場で焙煎して粉砕し、すぐにカプセルに密封することで風味を落とさぬようになっています。豆の量は最高の仕上がりから逆算して調整。ぎっしり詰めずにスペースに余裕を残しているのは、蒸らしで膨らむ分を考慮してのものであり、注湯はカプセルの真上から垂直にゆっくり注がれます。カプセルの形状はペーパードリッパーを再現し、カプセル全体からコーヒーが抽出されるので、淹れ終わるとフィルター全体がコーヒー色になります」(小牧課長)
DP3では、カプセルが合計14種類(コーヒー10種、紅茶2種、お茶2種)のラインアップとなり、抽出モードや湯量の調整と掛け合わせ、50通り以上の飲み方が可能になった。
短時間で抽出・静音・お手入れも手軽
体験会の会場では、参加したメディアが実際にDP3でコーヒーを淹れられるようになっており、筆者も操作を試してきた。
難しい操作は一切なく、カプセルとカップをセットして電源を投入。抽出モードや湯量などを選んでスタート」ボタンを押せばあとは待つだけだ。
その待つ時間も驚くほど短かった。従来モデルではスタンバイに30秒ほどの時間を掛けていたが、電気ケトルと同じインスタントヒーターの仕組みを採用することで、この30秒の時間を短縮したという。実際、ほんの十数秒待つ間に抽出が始まり、慌てて撮影したほどだ。
抽出音はかなり静かで、たとえ夜中にリビングで使っても、あまりうるさいと感じることもないだろう。
抽出が終われば、ポッドホルダーごとカプセルを取り出し、カプセルを捨てれば良い。お手入れは、ポッドホルダーは使用の度に水洗いしてよく拭き取って元の位置に戻す。ドリップトレーと水のタンクも数日おきに水洗いすれば良く、大変お手軽だ。
このほか、専用フィルターが付属し、既存の粉コーヒーを規定量入れて使うことで、カプセルと同じように楽しめるようになっている。
来店動機になるカプセルの展示は清潔感に注意
DP3はボタンを押したらすぐに出来上がるので、飲みたいと思ったときに都度1杯だけ淹れる仕様となっている。このため、保温機能は備えていない。しばらくすると自動で電源が切れるのは使い勝手の良い部分だ。
コーヒーの味も苦味や酸味までしっかり美味しさが堪能でき、UCCの威信をかけた仕上がりという表現も大袈裟ではないと感じた。何より、朝の忙しい時間でも、この手軽さで淹れられると「コーヒーを淹れるのが面倒くさい」という気には決してならない。
従来モデルのDP2では、本体カラーはブラック、レッド、ホワイトのパキッとした色合いだったが、DP3では暮らしになじみやすいユニセックスデザインを採用し、ホワイト、ブラウン、アッシュローズ、ペールミントの4色で展開する。キービジュアルにするのはペールミントで、同社では一番台数の出るのもこの色になると予想している。
販売店にとって、カプセル式のコーヒーメーカーの強みは、消耗品のカプセルが継続的に必要になるため、ユーザーの来店動機になることだ。ユーザーから見るとカプセルは本体を購入した店頭で取り扱っていて欲しい商材であり、売り場も同じ場所、できれば棚まで同じであることが望ましい。展示の際はカプセルを手に取りやすい場所に配置するのはもちろん、「ここにあるものを口に入れる」ことを意識した清潔感のある演出に留意したい。
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コーヒーはUCC上島珈琲
・ドリップポッド DP3