新型コロナウイルスの影響下でも家電量販店は売上増 時短や休業にも関わらず5月売上は前年実績を上回る


新型コロナウイルスの感染拡大により、家電量販店は営業時間の短縮や休業などを強いられた。時短営業と来店客の減少で販売機会は減少。営業環境としては非常に厳しいものがあったのだが、月次情報を開示している家電量販企業の5月売上は、前年同月を上回っているのだ。

ケーズ、コジマの5月売上は前年同月20%増

月次の売上情報を開示している家電量販企業は4社。ケーズホールディングス、エディオン、コジマ、ビックカメラである。4月の売り上げはコジマが前年同月104.5%と伸長したものの、その他の3社は前年割れだった。

5月も月初から非常事態宣言が継続されており、業績は厳しくなると思われていた。しかし、ケーズホールディングスは前年同月比121.9%と前年同月実績を大きく上回った。エディオンも同107.9%と伸長。コジマは同119.5%と2桁伸長で、逆境下にも関わらず2カ月連続の前年同月実績プラスとなっている。

一方、ビックカメラの5月売上は前年同月比71.8%で2月以降、4カ月連続で前年同月実績を下回った。

各社によって差はあるものの、5月の実績は4月よりも上向きで推移している

テレワーク需要でパソコン売り上げが大きく伸長

商品別の売上動向は各社によって区分が異なっているが、全体傾向として見るとパソコンや情報機器は、テレワークやオンライン授業の需要急増を受けて非常に高い伸びを示している。

ケーズホールディングスの5月のパソコン・情報機器売上は前年同月比182.0%で、4月も同173.4%と高い伸びを示した。コジマもパソコン本体のみでは4月が同165.3%、5月が同175.9%と伸長。コジマでもパソコンやタブレットが好調に推移したという。パソコン以外で好調に推移した商品としてプリンター、無線LANルーター、ウイルス対策ソフト、電源タップを挙げている。まさに自宅でオンライン作業を行うために必要な商品群だ。

テレワーク需要でウェブカメラは一時、品切れ状態になっていた

外出自粛による巣ごもり需要では内食が増加したため、連動して調理家電の需要も高まった。ケーズホールディングスの5月の調理家電売上は前年同月比136.7%で、4月も同104.9%と前年同月実績をクリア。コジマでもオーブンレンジやホットプレート、電気調理鍋などが好調だったとのことだ。

巣ごもり需要では飲食店の休業要請もあって内食志向が高まり、調理家電が注目された

白物家電は4月の前年割れから一転、5月は20%増に

洗濯機と冷蔵庫はケーズホールディングスとコジマで同様の販売傾向を示している。4月が前年同月比約10%ダウンで、5月は逆に20%以上のアップ。いわゆる“おうち時間”が長くなったことで、改めて家事を見直した結果、買い替えを早めたのではないかと推測される。

新型コロナウイルスによって、改めて清潔性の重要さに気が付かされた向きは少なくないだろう。衣類や肌着も清潔にしておかないといけない。あくまで推測ではあるが、このような意識が洗濯機の需要を増加させたのではないだろうか。

冷蔵庫の需要増は、やはり内食の増加が大きいと思われる。3密を避けるため、食材の買い出し頻度はなるべく少なくして、まとめ買いをしたい。しかし、使っている冷蔵庫は容量が足りない。そこで、壊れたわけではないが買い替えを早めた、または買い増しをしたと推測される。

食材の買い出しではまとめ買いを志向する層が増え、冷蔵庫の買い替えにつながったと思われる

数年前からアナログ停波とエコポイントからの買い替えが顕在化しているテレビは、在宅時間の増加で需要をさらに押し上げたといえよう。ケーズホールディングスの5月のテレビ売り上げは前年同月比154.8%で、消費税増税前の2019年9月以来の高い伸長率だ。コジマも5月は同162.5%で、ケーズと同様の傾向である。

外出自粛が都市型ターミナル店舗を直撃

緊急事態宣言に伴うさまざまな制限は、人口が集中している大都市圏の経済活動に大きな打撃を与えた。ビックカメラの売上低迷は、大都市圏のターミナル立地という環境要因によるところが大といえよう。

これまで大都市圏のターミナル立地は、大都市圏が抱える人口の多さと移動手段のメインが鉄道であること、地下道や駅直結等での店舗へのアクセスの良さなどから、郊外店と比べて圧倒的な集客力を武器としてきた。

しかし、リモート業務の推進と休校、不要不急の外出自粛等により、ターミナル周辺の人出は激減。平常時のプラス要因が、この数カ月はマイナス要因となってしまった。皮肉なことに外出自粛によって同社のECは前年同月比倍増で推移しているとのことである。

ゴールデンウイーク中は繁華街の人出も大きく減少し、午後6時までの時短営業を余儀なくされた

好調に推移した郊外型店舗だが、課題は継続

いわゆる都市型店舗は郊外型店舗よりも新型コロナウイルスの影響が大きかったと推測できるが、だからといって郊外型店舗の課題が解消されたわけではない。郊外型店舗の顧客は店舗周辺の在住者で、商圏や顧客はほぼ固定されている。

大型商品は買い替えがメインとすると、5月の好調さは新型コロナウイルスの影響で買い替えが早められたためとみることができる。需要を押し上げたのではなく、前倒しである。であれば、その反動が予想される。さらに家電は全体的に買い替えサイクルが長くなっている傾向がある。

となると、当然のことだが前年実績を上回るためには顧客単価を上げると同時に自店の顧客を増やしていくことが必須だ。これは郊外型店舗というよりは家電量販店に共通の課題である。しかし、特に商圏や顧客がほぼ固定されている郊外型店舗にとって、この継続的な課題に取り組むことが不可欠だ。顧客拡大が求められる郊外型店舗にとっては、今以上の店舗の発信力や提案力を高めていくことが重要だ。