新型チェキ「instax SQUARE SQ10」 発売初日に得た「ヒットの予感」


「instax SQUARE SQ10」発売初日の反応

5月19日、富士フイルムからチェキの新製品、ハイブリッドインスタントカメラ「instax SQUARE SQ10」(以下、SQ10)が発売された。SQ10はデジタルイメージセンサーの搭載、縦横比1対1のスクエアフォーマットの採用などチェキ史上初めての取り組みが満載。チェキの新カテゴリであるSQ10は、デジカメの市場をも変えるかもしれない期待の新星だ。

instax SQUARE SQ10

発売初日の16時ごろ、都市型の家電量販店を二店舗訪れ、販売動向とお客の反応を聞いた。

二店舗とも発売前に既に複数の予約があり、さらに初日の16時ごろまでに4~6台売れたという。昨今は3~5万円台のカメラで予約が入ることはめったにないが、チェキは二店舗とも複数の予約があった。

購入者層は、「従来のチェキのように若い方々が中心かと思っていましたが、ふたを開けてみたら、想定の年代よりも高い20代後半から50代と幅広い年齢層のお客さまが購入されています」(都市型A店の販売員)。

両店舗とも、若者の購入者は少なく、社会人がほとんど。アパレル関係などの仕事で使う人やファミリー層、50代くらいの写真愛好家が購入したという。ファミリー世帯のお客は、「近々家族で旅行に行くので、旅のお供としてSQ10を購入した。その場でプリントができるので、旅が盛り上がりそう」と話したという。

家電量販店の売り場イメージ(ビックカメラ 広島駅前店オープン時)。柱を有効活用した展示にカラフルなチェキがよく映える

富士フイルムは、SQ10のターゲット層を「感度が高く、表現欲求の高い ミレニアル世代を中心とした幅広い層の方々」としている。

メインターゲットとして掲げているミレニアル世代とは、一般的に1980年代から2000年代初頭に生まれた世代のこと。特に1980年代半ば以降に生まれた人たちは、インターネットやデジタルデバイスを当たり前のように使いこなす「デジタルネイティブ世代」とも呼ばれている。

SQ10は店頭想定価格31,800円前後(税込み)と従来のチェキに比べて高価格。販売員に話を聞いたのが都市型店だけとはいえ、この価格帯のカメラで初日にここまでの反応があることは珍しいとのこと。いち早く購入したイノベーター、アーリーアダプター層がインフルエンサーとなり、情報の拡散をすることによってさらに購入者が増えることが予想できる。

都市型B店の販売員は、「チェキの初号機や2号機は、発売日に店の開店前から購入待ちのお客さまがいらっしゃったほどの人気となりました。今はデジカメやスマホの普及でそこまでにはなりませんでしたが、市場が縮小しているなかでの初日からの好調な売れ行きに、かつてのチェキの人気を思い出しました。購入されたお客様の熱のこもった反応からも、ヒットの予感がします」と笑顔で語った。

チェキの初号機から現在までのラインアップ

「instax SQUARE SQ10」の魅力とは

富士フイルムのチェキは1998年に初めて発売され、ヒット商品となった。その後、デジカメの普及により人気は下火になったが、2012年以降、韓国や中国で人気に火が付いたことに端を発し、国内だけでなく世界規模で急速に売り上げを伸ばした。出荷台数は1998年の発売以来累計で2,500万台を突破。2016年度の販売台数は前年比3割増の660万台。2017年度は750万台を目標としている。

チェキの販売台数は2012年以降右肩上がり

製品ラインナップは2012年以降の5年で拡大。ターゲットを細かく設定したさまざまな機種を発売している。

充実している現行のチェキのラインナップ

では、そんなチェキの新カテゴリとして発売されたSQ10の魅力は、画像の編集加工などのデジタルならではの撮影の楽しみと、プリントというアナログなところまで、ハードからソフトまで全て含めた「写真の楽しみ」をこれ一台に集約しているところだ。

従来のチェキとSQ10の違いは、①デジタルイメージセンサーとデジタル画像処理技術の搭載、②LCDモニター搭載、③縦横比1対1のスクエアフォーマットの採用、④microSDカード対応だ。

①デジタルイメージセンサーとデジタル画像処理技術、②LCDモニター搭載で、従来のチェキはファインダーを覗いてシャッターを切っていたが、SQ10はスマホのようにモニターを見ながら撮影する。自動露出補正、人物検出、オートフォーカスなどができるうえ、10㎝までの近距離の撮影も可能だ。

さらに露出やフィルター、ビネット(周辺光量)の調整が撮影前でも撮影後でも撮影者の好きなタイミングでできる。突然訪れたシャッターチャンスでは、まずは撮影をして、あとから落ち着いて編集をしたり、撮影時に一枚一枚丁寧に調整を変えながら最高の作品を作り上げる楽しみもある。

本体背面のモニターを見ながら撮影する。フィルターなどの加工は、モニターの下部にあるボタン操作で直感的に行うことができる。

10種のフィルター機能、19段階のビネット調整機能、19段階の明るさ調整機能を組み合わせると、実に3,000通りの表現が可能だ。さらには2重露光や光の軌跡を写し取ったりできるバルブ機能も搭載されている。プリントしたあとの飾り方や活用法まで含めると、チェキSQ10の楽しみ方は、十人十色。無限大とも言える。

フィルター機能は10種類
画像の縁まわりの光量を調整できるビネット調整機能は19段階

スマホ、デジカメとの関係性

③チェキ初となる縦横比1対1(62mm×62mm)のスクエアフォーマットを採用。従来(62mm×46mm)よりも画面サイズが大きくなったことで、表現の幅も広がる。

スクエアフォーマットは、写真共有サイトのInstagramで採用されたフォーマットとしてお馴染みの画像サイズ。④撮影した画像はmicroSDカードに保存することができるので、スマホに移行することができる。チェキならではのその場の雰囲気まで写し取ったような独特の画像にフィルターなどをで独自の編集を加えた「作品」をSNSに上げられる。

フィルター、ビネット、明るさを組み合わせることで、一つの被写体で多彩な表現ができる。こだわりの作品をSNSにUPし、他者からの反応も楽しめそうだ

④microSDカードに保存できることで、その場ではプリントせずにあとからじっくり厳選した写真だけをプリントしたり、PCなどに保存することも可能だ。フィルムにプリントをしないでも撮影できるため、スマホのように気軽に、メモを取るように撮影することもできる。シャッターを切る頻度が増えそうだ。

また、従来のチェキに比べて利便性が高くなるのが、電池式から充電式になった点だ。マイクロUSBで給電が可能で、スマホを充電する流れでチェキも充電ができる。

このようにSQ10で露出の調整をしたりフィルターをかけたりして、写真を作品として作ることを日常的にこなしていくうちに、さらなる写真表現を求めてデジカメに興味を持つ人も増えるのではないだろうか。SQ10は、プリントすることの楽しさも体験できる。プリントした写真の飾り方や保存の仕方など、撮影だけにとどまらない「写真の楽しみ」を一台で完結できるSQ10の存在が、デジカメへの興味や購入につながる可能性もあるだろう。SQ10の今後の売れ行きと話題性に要注目だ。

※スライド画像等は、富士フイルム instax “チェキ”新製品発表会にて撮影