注目集める有機ELテレビ
有機ELテレビの参入メーカーが増え、店頭では有機ELテレビを集合展示し、コーナーを作る店舗が増加している。売価帯が高額のため、飛ぶように売れているというわけではないが、媒体や店頭での注目度は高い。店頭によっては有機ELテレビの展示部分だけ照明を落とし、黒の締り具合を体感してもらう展示に努めているところもある。
有機ELテレビ元年とひとことで言うが、実際のところ、LGエレクトロニクス・ジャパン(以下、LG)は2015年から有機ELテレビを市場投入していた。しかし、2年間の有機EL陣営はLG1社だったため、関心を持つ層はあったが、有機ELテレビのコーナー展開もままならならず、その存在も知る人ぞ知るというものであったことは否めないだろう。
同社のマーケティングチーム・金敬花部長は、「当社はグループ全体で有機ELの市場を作っていこうという思いがあります。有機ELテレビは新しい製品なので、2015年の発売当時から、有機ELとは何なのか、そのメリットはどのようなものなのかを量販店の方々に知っていただこうと努めてきました」と話す。
参入メーカーが増えるということは、それだけプレーヤーが増え、ブルーオーシャンがレッドオーシャンにも変わることを意味する。しかし、金部長はそのように考えていない。
「有機ELテレビを発売するメーカーが増えるということは、それだけ市場が拡大するということにもつながります。メーカー同士のお客の奪い合いではなく、メーカーが増えたことにより、より多くの消費者に有機ELテレビを知ってもらえる機会が増え、新たな市場が大きくなることを期待しています」と述べる。
17年モデルは3シリーズ5モデル
LGは17年モデルとして春に3シリーズ4モデルを発売し、6月にはハイエンドのW7Pシリーズで他社に先駆け、現在の有機ELパネルで最大となる77インチモデルも発売した。他社のラインアップが少ない中、確実にラインアップを拡充している。
同社がハイエンドと位置づけているW7Pは壁掛け推奨という新しいコンセプトで、「究極の画質、音質、デザインを追求したモデル」(金部長)だ。壁掛けをすると、壁の一部があたかもディスプレイになったかのような薄さで、これまで壁掛けのネックでもあったケーブル類も目立たないような設計がされ、美観という点でも高いデザイン性となっている。
画質については、前モデルと比較してピーク輝度が約25%向上し、コントラストの美しい映像を映し出し、ドルビービジョンやHDR10にも対応。また、ディスプレイとスピーカーを分離し、スピーカー部はドルビーアトモス対応。上方向の音に特化したハイとスピーカーを備えた新開発のムービングスピーカーにより、水平方向だけでなく、垂直方向に音が移動するドルビーアトモスのサウンドを楽しめる。
ドルビーアトモスについては対応ソフトが増加しており、さらにNETFLIXなどでも次々と対応コンテンツの配信がスタートしている。家電量販店の中にはドルビーアトモスの体感コーナーを設けている店舗にあり、注目を集めている。
とはいえ、まだ対応コンテンツが多いとはいえない。しかし、金部長は「テレビをお買いになった方は、10年くらい使用します。今はまだコンテンツが少ないかもしれませんが、これから増えてきたときにも当社のテレビで楽しめます」と話す。
このW7Pと16年モデルのG6Pをハイエンドモデルと位置づけ、プレミアムモデルのE7P、スタンダードモデルのC7Pというラインアップを揃えている。では、このラインアップをどのように説明するか。金部長は、「まずはハイエンドモデルの説明をしていただきたい」という。
ラインアップのハイエンドから説明
お客に対して、まずは有機ELテレビのハイエンドモデルの画質や音質などを視聴してもらい、有機ELテレビの良さを知ってもらう。当然、有機ELテレビは高額商品のため、お客の予算オーバーということもある。「有機ELテレビの良さを確認してもらい、そこからお客の予算に合わせて他のモデルを説明してもらうのが良いと考えています」(金部長)。
ブランドにこだわりを持つ消費者が日本には多く、LGにとってそこが一つの障壁となっている。確かにグローバル展開でのLGのポジションに対して、日本での認知度や支持は低いといえよう。だからこそ、LGでは購入後のアフターサービやカスタマーサービスに注力をしているという。
メールでの問い合わせについては24時間以内に返信し、電話対応も元日を除く364日つながる。コールセンターの窓口も製品ごとに分かれているのではなく、一つの窓口ですべての製品に対応し、応答率はほぼ100%近いとのことだ。
また、購入者が製品登録をすれば、1カ月後に不具合の有無や不明な点等についてサービスコールを行っており、保証書を紛失してもLGサイドでデータを保存しているので安心という具合だ。
金部長によると、LGの本国ではサービスの良し悪しによって購入メーカーが選ばれる面もあるため、国内メーカー以上にサービス体制やサービス対応には注力しているという。
今後、拡大する有機ELテレビ市場をさらに盛り上げていきたいというLG。お客の選択肢という点でも充実したラインアップのメリットを店頭での販売に活かそう。