急速に需要の膨らむリモートワークを売り場でフォロー


出勤せずに自宅で業務するリモートワーク(テレワーク)のニーズが急速に高まっている。昨年来の働き方改革でも推奨されてきたが、喫緊のものとなった理由は、もちろん新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延だ。店頭でリモートワーク向けの商品が探しやすくなっているか、早急に見直してほしい。

国が自宅作業を要請している

政府や自治体では、人々に週末の外出を控えるだけでなく、平日の出社もできるだけ控えるよう要請している。都市部では緊急事態宣言で半強制的に人の移動を停止させなければ、感染の連鎖が断ち切れなくなる可能性が危惧されている状況だ。

そうした背景もあって、対人の必要性の低い事務職ほど、リモートワーク化に積極的に動きつつある。

新型コロナの影響で、都市部では人の移動が制限されつつある
新型コロナの影響で、都市部では人の移動が制限されつつある

リモートワークの推進は、一般消費者が国民の一人として協力できる自助努力の1つと言える。そして、リモートワークを実際に導入しようとなったとき、普段から準備ができていない人は、機材を揃えるところから始めることになる。ハードウェアに強い人なら通販でも必要な製品を揃えられるが、そうでない人は家電量販店しか頼れるところはない。

とはいえ、法人売り場がない店舗では、リモートワークコーナーをすぐに準備しろと言われても現実には難しい。郊外の店舗であれば、リモートワークのニーズそのものが都市部ほど高くないという事情もあるだろう。

しかし、郊外だからニーズがまったくないこともないはずだ。せめて、パソコン売り場や周辺機器売り場などが、リモートワーク環境を構築したい人にとって分かりやすい展示になっているか、最低限の案内が出ているか、探している人が売り場にたどり着きやすくなっているか、早急に見直しておきたい。

リモートワークに必須なのはパソコンと回線

リモートワーク環境をイチから構築する人の場合、最初に用意するのはパソコン本体になる。業務内容や先々の使いかまで見据えた場合、どんなPCが良いかは千差万別であり、リモートワークだから必ずこうという部分は少ない。

ただ、仕事が主目的となるため、Officeがプリインストールされているかどうかは、ひと目で分かったほうが親切だ。セキュリティソフトの重要性も増す。買い忘れのないよう注意喚起しよう。

もちろん、Officeだけ探しに来る人もいる。一昔前のパッケージ販売をイメージして探しに来る人は、Office 2016以降のライセンスカード販売は売り場で探せない可能性もある。分かりやすく誘導してほしい。

OfficeがプリインストールされていないPCには、そのことを表記したほうが親切
OfficeがプリインストールされていないPCには、そのことを表記したほうが親切

パソコンだけは持っているという場合、次に絶対に必要になるのがネットワーク回線だ。プロバイダへの加入を勧めることになるかもしれない。リモートワークは一時的という人や屋外でも使いたい人には、据え置きのルーターではなく、モバイルWiFiルーターを勧めても良いだろう。導入時の工事が不要ですぐに使い始められるので、自宅でしか使わない場合でも無駄が少ない。

据え置きのルーターが必要な場合は、家族でインターネットを利用する人数や、動画視聴やゲームまでやりたいか確かめて、スループットの高いWiFiルーターほどストレスなく使用できることを伝えたい。ITに詳しくない人は、ルーターの価格の差が何に起因するのか分からないケースがほとんどだ。

ITに詳しくない人には、ルーター売り場における製品選びはかなり難しい
ITに詳しくない人には、ルーター売り場における製品選びはかなり難しい

リモートワーク向けの周辺機器は売り場でだいたい分かりにくい

パソコンの周辺機器は様々な種類があるため、人によっては大変探しづらい。何がどこにあるか視覚的に分かりやすい案内表示が望まれる。

たとえばリモートワークでは、外部とのコミュニケーションのためにグループウェアを使ったり、Zoomなどのビデオ会議システムに参加したりといったことも求められがちだ。ビデオ会議では、Webカメラとマイク、スピーカーが必要になる。

ノートPCの場合、最初からWebカメラを搭載していることも多いが、デスクトップPCやWebカメラ非搭載のノートPCを使っている場合は改めて用意する必要がある。だが、PC用のマイクやスピーカー、Webカメラがどこにあるか、迷わずたどり着けるようになっている店舗はそう多くないのではなかろうか。

特にスピーカーやイヤホンは漫然と探すと音楽用も選択肢に入ってきて、そこで選んだものは、リモートワークに用いるものとしてはオーバースペックになりがちだ。

マイクやスピーカーは、ヘッドセットを用意すると室内で出す音(声)を小さく抑えられる点も紹介したい。ヘッドセットをゲーミングコーナーに置いていて、パソコン本体や周辺機器と分けて展示している店舗は注意してほしい。

ヘッドセットはユーザーの頭の大きさで使いやすさが変わる。実機が展示できるのが理想だ
ヘッドセットはユーザーの頭の大きさで使いやすさが変わる。実機が展示できるのが理想だ

自宅で長時間のPC作業になる場合、マウスやキーボード、あるいはディスプレイなども、自分の使いやすいものを揃えたいと考える人も少なくない。

特にディスプレイは業務内容によっては、サイズの大きなものや解像度の高いものが必要になる場合もある。写真や動画などを扱うなら色彩の再現性が高いグレア。文書の見やすさや、目の疲れにくさ重視ならノングレアがオススメになる。

これらの商品は、先述のヘッドセット同様、店舗によってはゲーミングコーナーに置いていることもある。ゲーミング用だからゲームにしか使えないということはない。むしろ、ゲーミング用のほうが高性能で使いやすい高単価な製品が多い。選択肢がいろいろあることを店頭できちんと伝えよう。

マウスやキーボード、ディスプレイは、ゲーミングコーナーに展示しているという店舗も多い
マウスやキーボード、ディスプレイは、ゲーミングコーナーに展示しているという店舗も多い

環境によっては必要になりがちなのが、変換ケーブルや変換アダプタだ。HDMIにしろUSBにしろ、バージョンによって端子の形状が異なる。端子のオスメスなども注意しなくてはならない。

デジカメやスマートフォンから画像を取り込む場合も、ケーブルで直接取り込むか、SDメモリーカードやmicroSDカードで取り込むかで、必要なケーブルやアダプタが変ってくる。

ユーザーが自分で確かめやすいようバージョン表記や、余裕があれば端子の形なども店頭で分かるようにして、お客が間違えて購入することのないようできるだけ配慮したい。

このほか、プリンター、外付けハードディスクドライブ、外付け光学ドライブ、NASなどのデバイスや、電源タップ、ACアダプタ(充電ケーブル)、モバイルバッテリー、プリンターインク、プリンター用紙といったものは、実際にリモートワークを始めてみてから必要性を感じることが多い。

これらの製品も店頭に探しに来たお客が、迷わず売り場に行けるよう、そしてできるだけ迷わず製品を選べるよう工夫してほしい。