これから家電に求められるのはこれ!?パナソニックの弱いロボット「NICOBO」が満たすニーズとは


パナソニックが、新しいロボット「NICOBO(ニコボ)」をMakuakeのプロジェクトとして2月16日からスタートした。プロジェクトの達成状況を見て今後の一般販売の仕方を検討するとしていたが、開始早々に目標額は達成し、完売状態となっている。後日家電量販店で取り扱うかどうかは不明なものの、新しいコンセプトの家電として紹介したい。

人に自分の有能感や達成感を与えるロボット

NICOBOはユーザーとコミュニケーションが取れ、人を癒やしてくれる小型ロボットだ。膝の上に載るくらいの球形で、衣類のようなファブリック素材で覆われており、目と鼻と小さな尻尾を持つ。「コロナ禍で一人暮らしをしている人や、家族とのコミュニケーションが難しい人、シニア層など」を主なターゲットユーザーとしている。

NICOBOは手も足もなく、尻尾の短いおたまじゃくしのようなデザインをしている

NICOBOはユーザーの行動に反応して、撫でるとしっぽを振ったり、話しかけるうちに言葉を覚えたりするが、コミュニケーションは敢えてたどたどしくなるように設定されている。開発を主導したパナソニックの増田主幹によると、これはコミュニケーション能力として幼児をイメージしているからだと言う。

パナソニック アプライアンス社 スマートライフネットワーク事業部 主幹の増田陽一郎氏

言葉を覚えると言っても、しゃべる言葉は片言で舌足らずな印象を強調するモコ語であり、意味の分からない言い回しだったり、寝言をしたり、オナラをしたりと、気ままなしぐさでユーザーの邪魔にならない程度に存在感を主張する。正確な言葉のやり取りは重視しておらず、NICOBOの感情表現をどのように受け止め、解釈するかはユーザーに委ねられる。

NICOBOは移動手段を持たず、何かをお知らせするといった便利な機能も一切搭載していない。幼児どころか乳児ぐらいの能力ではないかとも感じるが、NICOBOに掲げられたコンセプトは「弱いロボット」だ。ロボットに強いや弱いという概念が必要なのかは置いておくとして、「強いロボット」や「賢いロボット」、あるいは「便利なロボット」をすぐにイメージできる日本人ならではの感性かもしれない。

共同開発者であり、「弱いロボット」の提唱者でもある豊橋技術科学大学の岡田教授は「何もできないことによって、頼りないけれど可愛いものを放っておけない人の優しさや思いやりを引き出す」と述べる。そばに置くことで、ユーザーに自律的で前向きな行動を促し、ユーザーは自分の有能感や達成感が得られると言う。

「弱いロボット」を提唱する豊橋技術科学大学(ICD-LAB)教授の岡田美智男氏

これまで家電製品は利便性を追求し、高性能であることや高速処理であることなどを良しとされてきたが、増田主幹や岡田教授は、今後その価値観に「どれだけ心の豊かさに繋がるか」が加わるようになると考えており、NICOBOはその先鞭をつける製品になるとする。

Makuakeのプロジェクトを1日で達成

NICOBOは本体にカメラや各種センサーを備え、人の顔を認識するほか、強い光や音のする方向が把握でき、撫でられたり、抱っこされたりしたときの感知も可能だ。本体は直径21~23cm、重量は1.2~1.3kg。バッテリーを搭載し、一回の充電で2~3時間駆動する。充電は充電台で行い、充電中でも動作する。足もタイヤもないので、充電台を置く場所が定位置となるか、充電台ごと移動させるか、複数の充電台を用意するなどして使うことになるだろう。

NICOBOはユーザーに触れられていることを認識して反応する

Wi-Fiを利用してスマートフォンから設定する必要があり、Wi-Fi環境とスマートフォンは必須となる。部屋で静かに音楽を聴いている時やテレワークでオンライン会議している時は喋らせないようにするといった設定が可能かどうかなど、スマートフォン上でどのような設定が用意されるのかは今のところ不明だ。また、本体を覆うファブリック素材を取り外して交換したり、洗濯したりできるかも分からない。

Makuakeのプロジェクトは、2月16日から3月18日までの予定で実施されたが、開始した初日に目標を達成しており、完売となっている。目標金額は1,000万円。市場性の有無の検証を目的に設定した金額としていた。

Makuakeの応援購入ページ(https://www.makuake.com/project/nicobo/)。スタート直後から多くのサポーターが集まり、現在は受付を終了している

リターン開始は2022年3月を予定している。支援金額は、早割10%オフで35,800円、早割5%オフで37,800円、Makuake価格は39,800円となっており、月額利用料である980円の6カ月分を含む。一般販売される場合の参考価格となるだろう。

なお、3月31日まで東京・二子玉川の蔦屋家電で実施中の「リライフスタジオ フタコ(RELIFE STUDIO FUTAKO)」に、プロトタイプのNICOBOを参考展示する。

パナソニックではプロジェクトを達成した今後は、市場性を検証して事業化し、一年間掛けて改良しながら目標台数である320台を生産する。その後、BtoCだけでなく、BtoBも含めて展開を考えていくとのことだ。家電量販店で取り扱うことになるかどうかは分からないが、将来「心を豊かにする」ことが家電に求められるニーズの1つの要素となるのであれば、NICOBOは家電と見做していかなければならないし、その認知を一般の消費者に広げるためにも、量販店は重要なメディアとして位置づけられるに違いない。

「弱いロボット」というコンセプトは、情報の早いMakuakeのユーザーの間ではかなり好意的に受け入れられた形だが、市場に投入されたときに消費者からどのような受け止め方をされるのかはまだ分からない。パナソニックが今回のプロジェクトをどう検証し、今後の展開に繋げていくのか注目したい。