ダイニチが加湿器の新製品を発表 手入れがラクなトレイカバー搭載ラインアップを拡充
例年は冬場がピークで、その他の時期は需要が減少する加湿器市場。新型コロナウイルスの感染拡大で室内の空気に関心を持つ層が増加し、年間需要への流れも見えてきた。意外と手入れが面倒な加湿器だが、ダイニチは2019年からカンタン取替えトレイカバーで手入れの煩わしさを解消。新製品では大型のシリーズに搭載されているトレイカバーを下のクラスにも搭載。さらなる需要拡大を図る。
ダイニチの加湿器は前年比150%と伸長
ダイニチ工業は7月28日、新製品発表会をオンラインで開催した。冒頭の挨拶で同社の吉井久夫代表取締役社長は「主力の石油ファンヒーターは昨年が例年並みの寒さで前年比120%と伸長し、加湿器は新型コロナウイルスの感染拡大で前年比150%と伸びました。しかし、昨年市場が拡大した反動から今年度の需要は1割減の前年比90%程度と見ています。新型コロナウイルスの感染拡大で室内の空気に関心を持つ層が増え、加湿器がエアコンや暖房機と同じ位置づけになることを期待しています」と述べた。
同社では加湿器の購入理由についてユーザーアンケートを実施した。その結果、従来の主目的は乾燥対策だったが、ウイルス対策として購入する層が増加したことが分かった。
加湿器がウイルス対策に効果的な理由としては、次の3つがある。①ウイルスは低温、低湿度の環境下で活性化するので加湿器の使用により湿度を上げることができる。②乾燥することで喉の粘膜のバリア機能が低下し、体内にウイルスが侵入しやすくなるが、加湿器の使用で喉のバリア機能低下を抑制できる。③乾燥した状態ではウイルスなどの微粒子が飛びやすくなるが、加湿器で湿度を上げることで飛びやすさを抑えることができる。
新型コロナウイルスに関しては各種の媒体で毎日、さまざまな情報が発信されている。身近な感染防止策として加湿器が注目され、それが需要増という結果につながったわけだ。
スタイリッシュデザインのRXTシリーズにトレイカバーを搭載
ダイニチが8月2日に発売する新製品は、スタイリッシュなデザインと静音性に定評のあるRXシリーズにカンタン取替えトレイカバーを搭載したRXTシリーズ。
ラインアップはタンク容量が5.0Lで木造和室8.5畳・プレハブ洋室14畳までのHD-RXT521、6.3Lのタンク容量で木造和室12畳・プレハブ洋室19畳までのRXT721、6.3Lのタンク容量はRXT721と同じだが、木造和室14.5畳・プレハブ洋室24畳までのRXT921の3モデルだ。
手入れの不満をトレイカバーで解消
加湿器は室内の湿度を快適に保つ製品だが、アンケート調査で使用しない理由の上位に挙げられたのは、『お手入れに時間がかかる』。つまり、手入れが面倒なため、加湿器を使わないということのようだ。
一方、カンタン取替えトレイカバー搭載のLXシリーズのユーザーにアンケートを行ったところ、購入の決め手は『加湿能力』が3割以上だったが、『トレイカバーがあるから』『お手入れが楽そう』と回答したユーザーも同じくらいの割合だった。
また、LXユーザーにトレイやトレイカバーを手入れするときの気持ちを聞いたところ、『楽』と回答したユーザーは52%で、『やや楽』が34%。合計86%のユーザーが手入れを楽と回答した。それだけでなく、同社には狭い部屋や小さいタイプのモデルにもトレイカバーを採用してほしいというユーザーからの要望が寄せられているとのことだ。
このような状況を受けて同社では、大型よりも下のクラスにもカンタン取替えトレイカバーを搭載することを決めた。
言うは易く行うは難し。大型モデルから小型モデルへの技術転用には内部構造の変更というハードルがあり、特に困難を極めたのが、フロートと呼ばれる水位を検知する機構。フロートは発泡スチロールでできていて、小さくすることで本来の浮力に影響が出てしまう。試行錯誤の末、開発には半年という期間を要したが、最終的にはフロートを従来から40%サイズダウンできたという。
従来のRXシリーズにも搭載されていた、設定から1時間は最小運転音で入眠を妨げない「おやすみ快適」や設定湿度に達するまでに加湿量を約15%アップして運転する「ターボ運転」、水中に抗菌成分が溶け出してタンク内の雑菌の繁殖を抑制する「Ag+抗菌アタッチメントEX」などは、RXTシリーズでも継続搭載している。
LXシリーズはスマートリモコン対応で遠隔操作が可能に
高い加湿力とカンタン取替えトレイカバー搭載で、2020年度の出荷実績が前年比約3倍と大きく伸長したLXシリーズもリニューアルした新製品を8月2日に発売する。
新製品では新たにスマートリモコン対応機能を搭載。市販のスマートリモコンを利用することで、スマートフォンから運転のオン/オフや各種の設定などが行える。
スマートリモコン対応機能を採用した理由として同社が挙げているのが「時間」。加湿運転をスタートさせてもすぐに部屋が設定湿度になるわけではない。適湿になるまでにはある程度の時間を要する。そこで、時間を短縮することはできないが、離れた場所から操作することで待つ時間を短くすることはできる。
例えば外出時や他の部屋で作業をしているときに加湿運転をスタートしておけば、部屋に戻るまでに加湿が進んでいる。エアコンのスマホ連動と同じ効果といってもよいだろう。
従来のLXシリーズに搭載されていた「カンタン取替えトレイカバー」や「タンクWとって」、「Ag+抗菌アタッチメントEX」、「「おやすみ快適」は継続搭載している。
ラインアップは2モデル。タンク容量は2モデルとも7.0Lで、木造和室16畳・プレハブ洋室27畳までのHD-LX1021と木造和室20畳・プレハブ洋室33畳までのLX1221である。
ダイニチ工業の加湿器は気化式と温風気化式を組み合わせたハイブリッド式。部屋の湿度によって運転方式を切り替え、送風量をきめ細かくコントロールするエコモーターによって省エネを実現している。製品の特長に加えて、このハイブリッド式という点もアピールしたい。
コロナ禍で変わる消費者の意識に注目しよう
昨年から今年にかけて加湿器の需要が急増したため、店頭では品薄や品切れという状況になった。天候次第ということもあるが、仮に同社の吉井社長が語ったように需要が前年10%減としても一昨年比では伸長が想定される。
加湿器は季節や天候によって需要が左右される面がある。しかし、コロナ禍で消費者の意識や生活は大きく変わってきた。販売サイドはこの消費者の意識の変化をしっかり捉え、さらに加湿器市場が拡大するような取り組みを実践することに期待したい。