ジャパネットたかたの買い替え提案は需要の掘り起こしが期待できる


家電業界の大きな課題は商品の販売台数が伸びないことである。

メーカーの出荷台数をみても、ほとんどの商品は前年比で出荷台数を落としている。この数年、多くのメーカーは、出荷台数の減少に対して商品の価格を上げることで売上をカバーしてきた。

数量減少の傾向は家電量販企業も同じであり、付加価値商品の提案を強化して販売単価で売上をカバーしている。

白物家電製品の出荷数量前年比 2024年1~6月累計 出典:JEMA
白物家電製品の出荷数量前年比 2024年1~6月累計 出典:JEMA

上のグラフは2024年の白物家電の出荷数量前年比であるが、2024年に入り白物家電、季節家電に限って見れば25商品の中で出荷数量が前年を超えたのは7商品となっている。

台数が前年を割る要因は、家電の価格高騰による顧客の買い控えや、地方の家電量販店であれば、人口減、世帯減などである。

日本の家電業界は、商品の販売数量が伸びない業界になってきている。テレビやBDレコーダーといった商品は数量が伸びないどころか、単価も上がらず、ここ数年は売上を落としている。

しかし、家電メーカーや家電量販企業にとって、2024年に入って付加価値商品で販売単価を上げていくことは難しくなっており、販売数量を伸ばすことに取り組まざるを得なくなっている。

数量減の課題に対して、ジャパネットたかたが、「下取りによる買い替え提案」というアプローチを行っている。ジャパネットたかたのやり方は効果があるのであろうか。実は、顧客は家電製品を購入する時には以下の3つの理由がある。

1. 商品が壊れたから
2. 商品が壊れていなくても新しい商品が欲しくなったから
3. 新規で必要になったから

現在、物価上昇の影響もあり、家電製品が壊れるまで購入しない世帯が増え、冷蔵庫や洗濯機、テレビといった大型家電製品の買い替え期間は長くなっていると家電製品回収業者からの報告がある。

家電製品の台数減の理由の一つは家計が厳しく家電製品を壊れるまで買わないという世帯の増加である。しかし、一方、壊れなくても買い替える世帯があるのも事実である。商品が壊れていなくても、良い家電製品があれば買い替えてくれる世帯である。

総務省が行っている家計調査を分析して、1世帯の家計収入と購入台数(100世帯当たりの購入台数)を調べてみた。

2019~2023年5年間の家計所得別の掃除機の購入頻度 (総務省家計調査を分析したもの)
2019~2023年5年間の家計所得別の掃除機の購入頻度 (総務省家計調査を分析したもの)

1世帯の家計収入が増加する毎に、購入頻度は上昇していく。
低所得の世帯では、100世帯で5台程度の購入に対して高所得世帯では、多い年だと20台程度の購入がある。

低所得世帯は10~20年に1回程度の買い替えに対して、高所得世帯では5年に1回程度の買い替えになっている。

今回は掃除機の購入頻度を出しているが、他の商品でも世帯収入が上がると購入頻度が上昇する傾向がはっきり出ている。

年収が低い世帯では、購入頻度が低い。これは、家計収入が少なく、食料品等の支出を優先させるので、家電製品は壊れるまで買わないという傾向であることが考えられる。

一方、高所得世帯になると、購入頻度が上がってくる。家電製品は所得の低い世帯でも、所得の高い世帯でも、耐久年数に大きな違いはないと考えられるので、購入頻度は同じはずだが、高所得世帯の購入頻度が高くなっている。ということは、高所得世帯は壊れなくても買い替えをしていることがわかる。

もちろん、高所得世帯の住宅は広く、家電製品を多く購入しているといったことも考えられるが、それにしても低所得世帯と高所得世帯の差が大きい。

所得に余裕がある層は、家電製品が壊れなくても、買い替えに明確に理由があれば購入に動くと考えられる。その明確な買い替え理由とは、

・より省エネに
・より使いやすく
・より便利に

といったことであり、さらには「下取り特典」があれば、買い替えの理由につながる。
ジャパネットたかたの提案のポイントは3つある。

一つは、「壊れていなくても買い替え」提案を行い需要喚起することである。
壊れてから購入するのではなく、より省エネや使いやすさを享受するための買い替えである。

二つ目は、買い替え推進のために「下取り」を行うことである。
家電製品は壊れていないと、新しい商品を購入するには「もったいない」という気持ちがある。しかし、使用している家電製品を下取りしてもらうことで「もったいない」から「下取りでお得」ということに代わる。顧客の中には、「壊れていない家電製品を買い替えることによる無駄遣い的な罪悪感」をもっている人もいるが、下取りによってこの罪悪感を無くすこともできる。

三つめは、買い替えを行う客層は比較的所得が高い層であり、ジャパネットたかたは高所得者層を顧客にすることができる。

非常にうまいマーケティングである。数量の伸びない時代は、家電製品が壊れるのを待っているより、積極的な買い替え促進を行わないと売上は伸びなくなっている。