日本コカ・コーラがクラウドファンディングでコーヒーメーカー市場に挑戦
&Dripは「喫茶店のオーナーが一杯ずつ丁寧にハンドドリップするコーヒーを自宅のリビングで手軽に楽しめる」をコンセプトに、日本コカ・コーラがこだわり抜いた一杯が誰でも簡単に作れるコーヒーメーカーだ。
美味しいコーヒーを飲もうとした場合、コーヒー豆の種類や淹れ方はもちろん、豆の鮮度が重要な要素になる。コーヒー豆は生豆の状態では、劣化がそれほど進まないが、焙煎すると酸化しやすくなり、すぐに劣化してしまう。コーヒーを美味しく飲みたかったら、焙煎から1~2週間のうちの飲み切ってしまうのが理想とされる。
家庭で喫茶店のような美味しいコーヒーを飲むのが難しいのは、まさにこの点にある。せっかく美味しい豆を買ってきても、毎日何杯も飲む家庭でないと美味しい内に消費し切れない。日本コカ・コーラは既存のコーヒーメーカーとの差別化点をここに見出した。
日本コカ・コーラが提唱するドリップイノベーション
&Dripの面白いところは、個々のカプセルに挽いたコーヒー豆、フィルター、ドリッパーのすべてを詰め込んでいることだ。カプセルには豆の酸化濃度を1%以下に保つバリア素材を採用し、豆の酸化を防ぎ、焙煎したての香りと鮮度を保つ。
カプセルの底はフィルターになっている。フィルターを覆っているシールを剥がして本体にセットし、ボタンを押すだけで、上部から注がれたお湯がカプセル内を通ってカップにドリップされていく。カプセルの横には螺旋状の溝が彫られており、ハンドドリップでお湯を注ぐときに円を描くのと同じように、お湯はこの螺旋に沿ってカプセル内を通過するわけだ。
シンプルな操作でありながら、豆に最適な湯量と抽出温度、注ぎ方、圧力に調整し、豆の旨味を最大限に引き出す設計になっており、これなら、コーヒーをしょっちゅう飲む人でなくても、無駄なく美味しいコーヒーが飲める。1杯あたり約60秒で抽出するので、淹れるのに時間を掛けすぎて香りが飛んでしまうこともない。日本コカ・コーラではこのドリップの仕方を「ドリップイノベーション」と名付けている。
リビングでも個室でもマッチするデザイン
&Dripの水タンクは600mlで、ミネラルウォーターのペットボトルを装着することも可能だ。この場合、水タンクを定期的に洗浄する必要がなくなり、より手軽に利用できるようになる。
カップ置き場はコーヒーが飛び散りにくい構造で、前方に開いた円形のスペースにカップ受けを置いて、その上にカップを置く。なお、カップやコーヒーサーバーは付属せず、利用者が自分の好みのものを用意することになる。
お手入れはタッチパネルの「洗浄」ボタンから行う。標準では5回抽出すると洗浄ボタンが点灯してお手入れを促し、ボタンをタッチすると抽出ユニットがお湯で洗われる。
本体サイズは、W180×D210×H285mmで重量が3.6kg。本体カラーはホワイトとダークレッドの2色を用意する。本体の佇まいは、ポップなブックシェルフ型のAVスピーカーを思わせ、リビングでも個室でも違和感なく設置できる。このデザインは、佐藤オオキ氏が率いるデザインオフィス「nendo」と共に設計したという。
カプセルは、レギュラーブラックとカフェラテの2種類を用意しており、レギュラーブラックの豆はタンザニアとキリマンジェロのブレンド、カフェラテの豆はブラジルとコロンビアのブレンドとなっている。
他のカプセルも展開を企画しているが、具体的な内容はMakuakeでのクラウドファンディングの支援者にヒアリングして決めていく考えだ。
Makuakeでの支援は、10月3日にスタートしたが、12日が経過した10月15日時点で、プロジェクトは既に目標額の100万円を大きく上回る4,330,858円を集めている。プロジェクト終了まで残り15日。どこまで伸びるか期待されている。
プロジェクト終了後の展開は未定
日本コカ・コーラでは、プロジェクト終了後の展開について、色々と構想はあるもののほとんどは未定だと述べる。流通に関しても家電量販店で取り扱うことになるかどうか、商談はこれからとのこと。また、海外展開に関しても現在は白紙だそうだ。
同社はドリンクメーカーとしては世界屈指の流通網を持っており、国内だけの展開でも店頭販売なしで十分に目標は達成できると考える可能性もある。ただ、タッチポイントとしての量販店頭の存在は無視できないはずであり、店頭で販売するかどうかは量を追う考えがどこまであるかによりそうだ。
缶コーヒーブランドの「GEORGIA」を使わず、「&Drip」という新しいブランドを立ち上げていることもあり、実験であると同時に、深い戦略に基づいているとも受け取れる。カプセルはリピーターを呼ぶ消耗品であり、量販サイドとしては通販サイトで取り扱うだけでも価値がありそうだ。近い将来、日本コカ・コーラの家電が量販店の売り場に並ぶのか、同社の戦略とプロジェクトの行方に注目したい。