Vo.1 変わりゆく中国家電流通 顧客視点の売り場強化へ


「常にチャレンジ精神を持ち、人々の生活がより豊かになるように、お客様に喜んでいただけるような流通企業でいたい」。これは中国の家電量販店で急成長を遂げている順電(SUNDAN)の代表取締役である費国強氏の言葉です。

中国の家電量販店といえば、メーカーが売り場づくりや販売に大きく関わっているという印象があります。しかし、徐々に新たな動きが現れています。中国の今をレポートします。

世界一の電気街、中国の「華強北路」

日本一の電気街は秋葉原ですが、世界一の電気街は中国・深圳(シンセン)の「華強北路」だといわれていることはご存知でしょうか。

中国の家電量販店といえば、蘇寧(SUNING)や国美(GOME)のイメージが強いのではないかと思います。しかし、それらとは別格ともいえる「順電」(SUNDAN)がその電気街の中に存在することは、日本ではあまり知られていません。

中国を代表する家電量販店、「順電」(SUNDAN)

順電の始まりは、1992年。順徳家電と称し、従業員10名でスタートしました。そこから、やがて北京や上海にも出店。2014年には中国版ナスダックである新三板に上場し、中国全土で43店舗(2016年12月24日現在)を展開するまでに至りました。

2016年第3四半期の決算によると、売り上げは20.89億元(約347億円)で前年同期比10.9%増。純利益は1264.50万元(約2億円)で前年の同期と比べ550.0%アップとなっています。

ネット通販の急伸長により、中国の家電量販店は苦戦を強いられているのが実情です。「レッドオーシャン」といわれる近年の家電業界において、どのようにすれば厳しい競争の中から勝ち抜くことができるのか、各社は試行錯誤を繰り返しています。

中でも順電の創始者である費国強氏は、既存の家電量販企業とは違うことに精力的に挑戦している一人です。もちろん、先駆者ゆえに、時には批判の対象となったり、時には疑われたり、理解されない時期もありました。しかし、どんな困難に遭おうとも、そのポリシーを変えず、チャレンジをやめることは決してありませんでした。

では、順電の成長の裏にはどのような取り組みがあったのか――。順電の店舗を例に挙げて、その取り組みを紹介します。

高級商材を取り入れた販売商品へのこだわり

高級感のある店づくりにおいて、商品は重要な要素です。最新の家電製品はもちろん、他の家電量販店に置かれていない高級工芸品なども幅広く揃えているのも順電の特徴の一つです。

近年、中国では生活水準の向上や消費理念の変化により、「かわいいもの」や「生活を豊かにしてくれそうなもの」への出費をいとわないといった層が急激に増えてきています。


安ければよいという考え方から、品質にこだわり、多少高くても良いものを使いたいという意識が徐々に高まっています。数年前に日本で起こった「中国人の爆買い」はまさにその現れといってよいでしょう。

そのような意識の高い顧客層をターゲットに、順電はハイプライスゾーンを充実させてきました。
具体的にいうと、メーカーと組んで開発したPB商品を販売したり、ネットで売れているブランドを取り入れたり、輸入事業部を立ち上げて海外から良いものや目新しいものを仕入れるといった戦略によって、「ハイプライスゾーン」を強化していったのです。

販売技術を強化語学に秀でた販売員を採用

高額商品を販売するには高いレベルの販売技術が必要になります。

2008年の夏、順電は北京でもっともおしゃれな街——三里屯VillageにあるAppleの中国初の体験型店舗Apple Storeのすぐ隣に北京1号店をオープンしました。

三里屯店の販売員の約7割が短大卒か大卒で、その多くは英語が堪能です。都市部で外国人客が多いこの店では、販売員が英語で説明している姿をとてもよく見かけます。

通常、中国の家電量販店では各メーカーから店に派遣されてきたプロモーターが販売を担います。
しかし、順電では日本と同じように、自社社員が販売を行っているのです。これは自社のオペレーションを徹底でき、CSアップにつながるといったメリットは非常に大きいですが、その一方で、人件費や教育費といったコストは膨らみます。

中国では人件費が年々上昇してきており、今後は利益とコストの関係が大きな課題となってくる面も予想されます。

体験型重視の売り場が販売意欲を掻き立てる

費社長は、かつて次のように語っていました。
「店作りは常にお客様の目線に立って考えています。例えば、メーカーの什器やPOPを撤廃することによる統一感のある売り場づくり、国美や蘇寧にはない体験型の売り場づくりを目指しています」

実は、中国の量販店のほとんどが、メーカーごとのブースで、メーカーごとに商品を展示しています。
このため、目的の商品を購入する際、他メーカーと比較して選ぶには、あちこちのブースを歩き回らなければならず、かなりの労力を要します。

メーカー提供の什器やPOPは多くの商品から、お客様が自分に合う製品を選ぶのに非常に役立ちます。

しかし、メーカーのブースごとに商品の見せ方が変わることで、店内が繁雑になり、お客様は価格やスペックの比較がしづらくなるといった弊害もあります。

順電では従来からの売り場づくりを見直し、メーカーブースではない商品ごとの展示を行うことで、お客様にとって買い物をしやすい環境づくりを志向しています。

さらに費社長が重視するもう一つのキーワードが「体験型」。
ここにも注目すべきポイントがたくさんあります。

特に1階にある調理用品の売り場では、調理家電を使って料理を作れるコーナーがあります。
お客様が実際に調理をすることで、売り場中にその匂いが漂い、多くのお客様の注意を引くことができるのです。

また、そこに隣接したジュースバーでも、売り場で販売されているジューサーやコーヒーメーカーを体験することができます。販売員は、その場でお客様の感想を聞き、商品について会話をします。会話によって、お客様は自然と購買意欲が湧くのです。

「お客様を逃がす理由」。アメリカの調査会社によって驚きの事実が明らかに

アメリカの調査会社ACNielsenは、かつて「お客様を逃す理由」についての調査データを発表しました。

それによると、
「お客様を逃す理由の78%は、売る側がお客様のニーズを把握しておらず、お客様に満足してもらえる商品やサービスを提供できなかったことにある。意外なことに、他店の方が安かった、友達の影響を受けて別の店を選んだなどの回答はわずか18%しかなかった」
といいます。

つまり、「お客様が購入しなかった理由は、他店との比較ではなく、自店に問題あり」ということです。

順電の強みとこれから

中国全土には、順電のような地元密着型で数十年経営を続ける家電量販店が他にもいくつかあります。それらは規模が小さいため、戦略や政策などを変える場合、意思決定スピードが非常に早いことが強みです。

順電もそのメリットを生かし、変わりつつある国内事情や消費者の意識にどれだけこまめに対応できるかに注力しています。順電の志向するお客様のニーズに合った売り場づくり一つとっても中国の流通は変化してきているのです。